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お母さん、どうしてあたしを産んだの?
あたしはあたしが嫌い。
あたしの魔法が嫌い。
あたしの魔法が嫌いになった理由は……
「クロの魔法って気持ち悪いよね」
魔法なんか大嫌い。
お兄ちゃん、お姉ちゃんたちが嫌い。
でも、アッシュとルージュは好き。一個下の弟のハクも好き。
お母さんも好きだけど、先生のマギはどーでもいい。
今日も今日とて授業をサボって部屋にひきこもる。
「とんとーん。クロさん、いらっしゃいますかー?」
誰にも入って来れないよう、扉に細工をしている。
「いらっしゃいませーん」
あたしは平気で嘘をつく。
「【開け】」
「あっ……」
そして先生も余裕で違法行為をする。
「ふほーしんにゅうですよ! ふほーしんにゅう」
「俺はみんなの先生だから許されるの」
先生はいつもあたしの隣に寄り添ってくるが、アッシュに寄り添ってもらいたいので拒否している。
「勉強が嫌い?」
「みんなと居るのが嫌い! あたしは1人でいたいの!」
「魔法は楽しいよ?」
「楽しくない!!」
あたしは布団を被り、今から逃げる。儀式まであと5年。別に焦る必要はない。
「それなら、こんなものはどうかな?」
と、出されたのは──
「魔道具?」
「うーんとね、どちらかと魔導具だね」
「何が違うの?」
「同じ消耗品だけど、ひとつひとつの魔力量の上限が高いのは魔導具の方だよ。ある人は魔導具を集めて自分だけが使用できる武器庫の魔法を作ったよ」
「へ、へぇ……」
あたしは魔導具に魅了されてしまった。というか、これならあたしの魔法云々関係なく、没頭できそうだった。
「いいよ、先生。あたし魔導具の研究に力入れるから、もう来なくてもいいよ?」
「そう良かった……え? 授業は?」
その日からあたしは魔導具について勉強するのであった。
10ヶ月後
「クルミおにい」
あたしは忙しそうにしているクルミに声をかけた。
「どうした?」
「この島って鉱石とか採れるの?」
「……山の山腹からなら採れるかもしれない。採ってこようか?」
「いいよ。自分で採りに行く」
「それならアッシュも連れてけ。あいつは研究のしすぎだ。外の空気を吸わせてリフレッシュさせろ」
「うん、わかった」
あたしはクルミと別れてアッシュの研究室へ向かう。
途中ソラとサン、ワカバの3人組に出会う。
「あ、クロちゃんだ。なにしてるの〜?」
「ほっとけよ、あんなやつ」
「ちょっと、ソラ……」
あの日以降、ソラとは仲が悪くなった。元々嫌いだから別にどうとも思わないが。
「どうせクロは何も上手くいかない。魔法じゃなくて、道具を作る方を選んだからね」
「……」
「喧嘩はメっ、だよ? じゃあね、クロちゃん」
すれ違いざまにサンに言われる。
「ソラが言ったこと、気にしちゃダメだよ?」
うるっさい。わかってる。
あたしは足早とアッシュの研究室へ向かった。
研究室の扉を叩く。
「アッシュおにい……?」
声をかけても反応がない。
(毎日夜遅くまで研究してるもんね。寝てるか)
アッシュはこの島に来てからほぼ毎日不老についての研究をしている。あたしたちの肉体を進化させるために。25年間研究しているが進歩はない。
シルヴァは「そんなことできるはずない」と怒っていた。寵愛の儀を侮辱しているからだ。
あたしはそうは思わない。むしろ肉体を成長させたり退化させたりするのは面白いのかもしれない。
研究室の扉から離れようとすると扉が開く。
「クロか?」
年々目の下のクマが酷くなっている。
「進捗どう?」
「よくないね……突破口が見えてない」
「先生は手伝ってくれないの?」
「先生に頼まれてやってるんだ。マギ先生も他のことで忙しいみたいだし……」
「そうなんだ……もしよかったら気分転換しない? 山の山腹まで鉱石を探しに」
「……」
アッシュは何かを考えていると「そうか」と言い納得した。
「そうだね。たまには外で体を動かすのも大事だよな」
「やったぁ!」
(しまった! 声に出して喜んでしまった)
あたしはアッシュに恋心を抱いている。それをみんなにバレたくない。
「行かないのか?」
「ごめんごめん、さっさと行こ!」
あたしとアッシュで山へデート……もとい鉱石探しに出かけた。
他愛もない話をしながら山道を歩く。
「そういえばハクを連れて来なくてよかったのか?」
「ハクはルージュと魔法の練習だって。ハクの魔法ってすごいよね! 治癒魔法って神官の素質があるんでしょ!? ハクの将来は有望だなぁ」
「……クロはどうなの?」
「え、何が?」
「クロは自分の魔法の研究をしないの?」
「あ、あたしの魔法なんて、何の役にも立たない精神魔法だよ? 忌み嫌われてるし……」
「それはソラだけだろ?」
「みんな嫌いだよ!! 外の世界も、お母さんもきっと……」
「──リリスはそうは思ってないと思う」
「なんで言い切れるのさ」
あたしは足を止めた。
「うーん……クロの魔法って洗脳することがメインじゃないっていうか、別の流用方法があると思うんだよね」
「なにそれ」
「それはクロが自分の魔力に興味を持って研究したらわかると思うよ」
「あたしだけじゃわかんない! 協力して」
「協力するよ」
「……ッ!」
心がドキッとした。アッシュはそういうことを平然とやってのける。
「さぁ、行こう? 山腹までもう少しだ」
あたしは再び前へと進んだ。
「自分で作った魔導具をプレゼントするのかい?お母さんに」
「!? どうしてわかったの?」
「そりゃ、実の母親にどうして産んだのかって訊いてからギクシャクしてるじゃん」
「うっ…………」
図星だった。
「俺にはどうすれば1番いい結果になるかわからないけど、その考えは良いと思うよ」
「あ、ありがと」
アッシュから照れ顔を隠すように──
「さ、さーて鉱石拾うぞー」
あたしは作業を始めた。
数時間後。
「だいたいこんなもんか?」
「うん。手伝ってくれてありがと、アッシュおにい」
カゴいっぱいにさまざまな鉱石を採った。
「にしても、加工もひとりでやるのか? せめてサンに手伝ってもらっても……」
「やだ! ひとりで作る!!」
あたしは持ち帰った鉱石でいろいろな魔導具を作った────そして2年後……
あたしは寵愛を受けた。
「お母さん、あ、あのね……」
「どうしたの、クロ?」
「こ、これ! プレゼント!!」
あたしはお母さんに小剣をプレゼントした。
「魔導具じゃないか! クロが作ったのかい?」
「そ、そうだけど、先生には関係ないでしょ!」
「そうよマギ。これはクロがわたしのためだけに作ってくれた大切な物、だわよね?」
「そうだよ! お母さん!」
あたしはこの魔導具を渡したことを後に後悔する。




