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アッシュが生まれた場所は北の大陸、アルトリア大陸にある魔法都市『キングダム』だ。

しかしアッシュに魔法の素質はなかった。というのも、元々の魔力量が人より少なく、簡単な魔法でさえ魔力切れを起こしてしまうのだった。

「それでも僕は魔法に関わっていたい」

魔法に魅了されてしまった少年は他者から見下されながらも、魔法の勉強をする。


アッシュ10才、憂鬱の終わりと才能開花の始まり。


粘液爆弾(スライムボム)!」

今日も今日とて相変わらずスライムでいじめを受けている僕。

抵抗なんてしない方が時間の使い方に余裕を持てる。実に効率の悪い無駄な時間。

僕が魔法の勉強をして何が悪いのか?

先生たちも口を揃えて「魔力が重要なのに、基礎の基礎を必死に勉強したところで何も得られんぞ」だって。

本当に僕が間違っているのだろうか?

魔法は魔導書から得る物。読めなければ使えない。新しい魔法を作ろうとしなければ、便利な魔法は生まれない。

誰かが作った魔法を自分の物だと語っていて恥ずかしくないのだろうか?

僕は論文を書いた。魔法の進化の過程を──

みんなはバカにした。

勉強のしすぎで頭がイカれたと。

先生たちは時間を無駄にするなと怒った。

──どうしようもなく救えない奴らと思った。

そんな毎日がとある人物の出会いで変わる。


「今日は賢者様が来る日だって!」

「新しい魔法、見せてくれるってさ!」

「早く集まろうぜ!」

生徒たちが一斉に中庭へ移動している。

僕はというと、破かれたノートをかき集めつつ、くっついたスライムを外していた。

スライムを流しとるのは簡単だが、バラバラになった紙を元通りにするには魔法道具(マジックアイテム)を使わなきゃいけない。

魔法道具は高値で取引されている。学校にもあるが、無料ではない。

僕はその魔法道具の成分表示を見て、どのように作られたのかを研究した──結果、少しの魔力で魔法道具と同等のパフォーマンスができる。

「【元に戻れ】」

破れた紙切れがパズルピースみたいに綺麗に収まっていく。

「その魔法、どうやったの?」

話しかけてきたのは──

「賢者マギ……様!?」

驚いて尻もちついてしまった。

「あはは。驚きすぎじゃない?」

僕から見た賢者マギはすごく疲れている様子だった。

「それに様は余計かな? 賢者って肩書きがあるから……」

「そんな! みんな恐縮しますよ!」

「みんな……みんなね…………」

賢者マギは自分の手のひらを見つめた。

「ねぇ、キミは魔法ってなんだと思う?」

「……魔法は万能であって不自由だと思います」

アッシュの答えに拍子抜けする賢者マギ。

「なるほど……その例えを思う理由は?」

「それは今の……えっと、マギ様を見ていれば、苦悩しているのではないかと……」

賢者マギの目に光が戻る。

「なぁ、キミの名前は?」

「アッシュです。アッシュ=ガランドールと申します」

「歳は?」

「この間、10才を迎えました」

「よろしい、捕まりたまえ」

と、半ば強引にアッシュを抱き寄せると──

「【強制指定(ブックマーク)】」

どこかに飛ばされてしまった。


 ◇


飛ばされた先は孤島だった。

「マギ様!? ここはどこですか!?」

「ここは魔法使いの島だよ……特別なね……」

賢者マギの眼が一瞬ギラついていて、アッシュは体を強張らせた。

「大丈夫だよ、怖くないから……」

ゆっくりと島に降下していく2人。

大地に降り立つと同い年くらいの子供たちが現れる。

「マギだ!」「何しに来たの?」「あそぼーよ、マギ?」

「みんな、リリス……ママはどこにいるんだ?」

「ママはシルヴァと一緒だよ」「ルージュも一緒だったはず」「ママのお家に居るよ」

「わかった。ありがとう」

子供たちに別れを告げ、リリスと呼ばれる家へ向かうことになった。

「マギの子どもかな?」「はじめましてって言わなかったね」「口がきけない子なのかな?」

そんなことを言われたが気にも止めず歩く賢者マギと強引に連れられるアッシュ。

「あの、僕……家に帰れるんでしょうか?」

「それは魔女に出会ってからのお楽しみだ」

「魔女……?」

賢者と魔女の話は読んだことがあった。人類悪を倒した後、賢者は人類の魔法の発展をさせ、魔女は人類の進化を恐れて姿を消したと──

「ここだ」

魔女について物思いにふけていたら着いてしまった。

「リリス、入るぞ」

扉が開かれる。

「随分強引じゃない? マギ」

そこには妖艶な女性が2人の子供を傍らに置いていた。

「シルヴァの未来視で予想はできてただろ?」

「まぁね……それで、その子は?」

「アッシュだ。俺の意思を継いでくれるかもしれない男だ!!」

「なっ……!!?」

唖然とした。

「そうね、正直な話あなたより頭がいいのがよくわかる」

「アッシュの褒め言葉として受け取るよ。この子に寵愛を授けないか?」

「ちょっと待ってください!」

流石に割って入るしかなかった。

「僕はただここに連れてこられただけです。魔力の少ない、魔法使いの出来損ないだ──それが、何故話が進行するんです!?」

「ちゃんとわかってるじゃない」

「え?」

「アッシュ、あなたはこの世界の頂点に立てる魔法使いになれるのよ? 寵愛を受ければね……」

「そうだぞ、アッシュ! キミは魔法学において素晴らしい成果を出すことができるんだ!」

今まで誰にも認められなかった僕が最強の魔術師2人にこう言われている。『キミは魔法使いになれる』と。

「……寵愛って何をどうするんですか?」

「簡単なことさ。キミを不老不死にする」

「不老不死に!?」

「そうでもしないと、貴方は魔法使い見習いのままよ。すぐにでも儀式をするべきだと思うわ」

「本当かい? それならさっそく……」

「不老不死は嫌だ」

「アッシュ?」

僕は否定した。

「僕は人間だ。不老不死なんてものになりたくない」

「お母様! この方、不敬です!」

傍らの1人が声を上げる。

「怒らないのシルヴァ。それに、アッシュの力がとてつもないことはあなたが一番理解しているはずよ?」

「……」

シルヴァと呼ばれた女の子は論破されてしまい、そのまま口を閉ざしてしまった。

もう1人の女の子がアッシュに近づく。

「私、ルージュ。私も元人間だったけど、マギさんに助けられてここに居る」

「それは君が望んだのかい?」

「私は、故郷なんかに帰りたくない……あなたは?」

「僕は……」

僕も帰りたくない。でも……お父さんとお母さんのことはどうする?

「──僕は立派な魔法使いになるよ」

「そう?手始めに何をするのかしら?」

「不老の研究をしたい」

「本当かい!?」

マギがますます眼が輝く。

「あなた、儀式を穢すつもり?」

「違うぞシルヴァ! アッシュは僕たちを助けてくれるんだよ! 成長という肉体の進化をね!!」

僕は魔女と賢者から寵愛を受けた。

老化という当たり前からかけ離れた存在になったが、これを解明するためにしばらくは魔法使い見習いとでも名乗ろうか。

賢者マギの弟子として、師になるために勉学に励む。

俺は算術の魔法使い。自身の魔力を使用せずとも理論させ知っていればなんでも使用可能だ。それが即死魔法だろうが転移魔法だろうが、俺にできないことはあまりにも少なさそうだ。

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