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この島が産まれる150年前、2人の不老不死がいた。
賢者マギと魔女リリス──神殺しを倒して英雄となった何年かあと、魔女リリスは魔法使いの楽園を作ろうとした。
「リリス……これはいったい何だ?」
賢者マギが魔女リリスに問う。
「何って失礼ね。わたしと同じ不老不死の卵たちよ」
リリスが言った卵は、誰がどう見ても異形でウネウネと動いては言葉も発せられない物だった。
「はっきり言おう──生命を冒涜している」
「あら? いつから達者なことを言えるようになったのかしら? わたしの研究に喜んで手伝ってくれたはずなのに……?」
「くっ……」
口ごもる賢者マギ。
「せっかくの原初ですもの。1人じゃ寂しいから4ツ子にしてみたわ!」
楽しそうに話す魔女リリス。
「……赤ん坊になるまで、どのくらいかかるんだ?」
「さぁ? 上手くいったとしても、早くて100年くらいじゃないかしら?」
「なら、外の世界を導いていく余裕はあるのかな」
「あなたも物好きね。魔術協会なんて建てたところで何も変わりはしないわ」
「それは、未来の人間たちに期待かな」
「それなら、この子たちにも祝福してあげなさいな──」
◇
リリスは四ツ子を胎児にするため一度バラし、繋ぎ止める作業を終えると、培養液の中で成熟するのを待った。その間150年。時には魔導書を読み聞かせるなど母親らしいことをしていた。
完成間近となったある日、ギアス大陸から北西に向け、波の穏やかな場所を探した。
「ここでいいわね……」
今から行うのは禁忌の魔法。神を冒涜する場違いな魔法。
「疾走する豊穣。善悪なき惑星。鼓動する太陽。終わりない反芻。創造魔法、魔術戦艦!!」
そう詠唱するとと、ざっと100名が余裕で暮らせそうな島が完成した。
「衣食住の安定させなきゃね」
リリスは創造魔法で家畜や建物を編み出していった。
150年の時をかけて赤ん坊として完成した四ツ子だったが、肝心の不老については未解決だった。しかしリリスは答えを見つけていて、赤ん坊からの12年後に儀式をやることを決めていた。
子供たちにはそれぞれ「サン」「ソラ」「クルミ」「ワカバ」と名付けて大層可愛がった。
そして12年後……
〜貴方にもきて欲しい。大切なことだから〜
「やれやれ、162年ぶりとはいえ──もっとこう……なんかあるだろ。普通」
久しぶりのリリスからの手紙はそっけなかったため、愚痴をこぼす賢者マギ。
「ご丁寧に魔術手記までよこして……わかったよ、行くよ」
それは目的地へ移動する魔法。
「【強制指定】」
賢者マギはバンガードへ移動した。
「ここがバンガードか……」
魔法使いの楽園と謳うには程遠い外観だが、未来ある風貌だと感じられた。
「待っていたわ、マギ」
リリスが四ツ子を連れて会いに来てくれた。
「ママ、この人だーれ?」
赤髪の子がリリスに問う。
「先生だよ。魔法を教える先生」
「やだ! ワカバ、ママに教えてもらうもん!」
どうやら第一印象は悪いみたいだ。
「みんなもそうなの?」
「ママが1番だもん!」
「あらあら、そんなこと言ってると、立派な魔法使いになれませんよ? それに、今日の儀式に必要なのよ? この先生が」
「このってなんだよ。全く……」
マギは魔法を使った。
「【内緒話】」
(儀式とはなんだ?)
(見てわかるでしょ? この子たちは不老ではないの。そのための不老にするためのお祈り。いつまでも幸せでありますようにって)
(なるほどな)
「ママ?」
「さぁ! 儀式を始めるわよ」
賢者と魔女の寵愛の儀が四ツ子に祝福を与えた。




