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フライデーが帰ってきたあと、キドラント含む世界の港町は魔女の島との貿易、シルヴァ目的の来訪を禁止された。
そしてギアス領土はアルトリア大陸との戦争を一時中断。魔女の島へ報復すべく戦を仕掛ける──が、クルミとワカバの魔法によって撃退され続け、たった3ヶ月で撤退することとなる。
そしてリリスの死から1年が経過した。
「ふ、ふぁぁぁ!! うわぁぁぁ!!」
「ゔ……今日も早起きだね、ホァン」
「大丈夫だよ〜。ワカバお姉ちゃんたちが居ますからね〜」
「ミルクとおむつ、持ってきますね」
ワカバ、ルージュ、クロは秘密基地でホァンの世話を。
「クルミ兄さん、この野菜を倉庫へ持っていけばいいですか?」
「ああ、頼むよハク」
クルミとハクは農業を。
「なぁなぁ、アッシュ。この大陸はなんてーんだ?」
「そこはギルガメッシュ大陸。東の大陸と呼ばれている。こことは交易はしていないんだな?」
「はい。わたくしの記憶ではギルガメッシュ大陸からの来訪者はいなかったと……」
「ギルガメッシュ大陸の連中って他と違うのか?」
「本によるとそうみたいだ。異種族交配が盛んで、いろんな種族がいると思われる」
「確定情報ではないのですね」
「クソっ! 先生と連絡がつけば……」
「アイツ、何やってんだろ?」
サン、シルヴァ、アッシュは外の世界を知るために本を集めて地図を作っていた。
一方、ソラはというと……
「暇だなぁ〜」
手伝いもせず、ひとりで釣りをしていた。
「なんか新しいこと起きないかなぁ〜」
釣り糸を垂らしながら、そんなことを呟いていると──ピクリ。魚の反応ではなく、ソラが勘付いた。
(魔法で潮の流れを操作してるのに、平気で船で渡っている? 何者だ?)
釣り道具を捨て、魔法の準備をする。
「ちょうどいいや。新しい魔法の実験台になってもらおっと【帯電する濃霧】!」
雷雲のような霧が海を包み込んだ。
「ニシシ。迷え、迷え〜」
しばらくすると霧の中から半透明の青い鳥が、ソラの元にやってきた。
「なんだこれ?」
そして鳥は大きな声で──
「いい加減にしろ!!! ソラ!!!!!」
と、叱ったのだった。
唐突な叱責に尻もちをつく。
「なーんだ。マギだったのか……とほほ」
◇
「まさか、そんなことになってるなんて……」
シルヴァたちはマギにこれまでの顛末を説明した。
「ねぇマギ、蘇りの魔法はないの?」
「あるにはあるけど……不老不死に効くかどうかわからないな」
「あるんだ! 蘇りの魔法!」
数人喜ぶが、アッシュは否定する。
「普通の蘇りじゃダメだ。もっと本質的な魔法じゃないと意味がないんじゃないか?」
「自分の魔法じゃダメでしたもんね……」
「そうだ。器はよくても中身……魂が重要だと思う」
「魂……か…………」
クロが何か思いつきそうになった。
「リリスを殺めた武器は?」
「俺が管理してます。あとで渡しますね」
「わかった。それでみんな、これからどうするんだ?」
「どうする……と言いますと?」
「この島から出ないのか?」
マギの発言に四ツ子が否定する。
「やだ! ママを置いて島の外に出るもんか!」
「どうしてそんなこと言うの!? 信じられない!」
「マギ、あんたの言うことを聞くのはママが生きてたからだ。あんたに従うなんてごめんだね」
「少なくとも、ホァンが大きくなるまで島を出たくないかな……」
「他のみんなも島から出ないのかい?」
シルヴァたちは頷いた。
「そうか……わかった。俺は外の世界で情報を集めてくるよ。リリスを殺した犯人がまだ生きてるだろうしね」
「やっぱり、フライデー将軍ではなさそうですか?」
「あの都市に不死殺しの薬が出回った可能性は低いな」
「不死殺し……」
「とにかくマギ、今日はもう遅いから泊まっていくといいよ」
「ありがとうクルミ。そうするよ」
「……」
マギと会話する1時間前、シルヴァとアッシュは内緒話していた。
(どうしたのですか、アッシュ?)
(疑いたくはないんだけど、先生が犯人かもしれない)
(!? マギ様がですか!?)
(不老不死を殺すのは同等の立場の人間しかありえないんだ。普通の人間は殺すんじゃなくて、研究したいはずだからね)
(ですが、マギ様にお母様を殺す道理はありまして?)
(そこなんだよ。わざわざ死の寸前まで追い込んでとどめを刺さないなんてことするのか? 謎行動すぎる)
(アッシュ、この話は聞かなかったことにします。よろしいですね?)
(あぁ、すまなかった)
フライデー将軍はお母様を殺してはいなかった。それなら兄弟姉妹の誰かが? そんなことはありえない。愛していたのにそんなことは……では自殺? 何のために? 何から逃げるために? 最後の魔法使い、ホァンを放って? お母様はそんなことしない。
「シルヴァ?」
「あ……どうしました、ルージュ?」
いつのまにかルージュと2人きりになっていた。
「最近疲れてない? 大丈夫?」
「大丈夫……と言いたいですね。人間から襲われる脅威は去りましたが、次何かが起こる予感がします」
「予感……か」
「こういうときに未来視が使えればいいのですが、全く見えませんね。わたくし、がっかりです」
「使えなくなってるわけじゃないよね?」
「そんなことはないと思います。魔封じの類いの魔法はかけられてませんし」
「そう……なら、いい未来見ないとね」
「えぇ、全くですわ」
「これが不死殺しの小剣……」
アッシュはマギにリリスが刺された凶器を渡した。
「俺が調べた限り、この凶器から魔法の痕跡はありませんでした」
「でもリリスはこう言ったんだね?『不死殺しの薬』と」
「はい」
アッシュとシルヴァは何度も話の帳尻を合わせたので間違えることはない。
「わかった、調べてみるよ。鑑定」
マギは凶器の分析を始めた。
「…………!」
「何かわかりましたか?」
「そんな馬鹿な……」
「どうしたんですか?」
「この魔法は既に消えたはずなんだ。なんで今頃になって……」
「先生?」
マギは狼狽えて、魔法を中止した。
「ごめん。これ以上調べたくない」
「いったい何の話ですか? 消えたはずの魔法って……」
「人間の可能性を無機物に与える魔法……魂の移植。この世界が混沌に満ちた頃の禁忌の魔法だ」
「それを作った魔法使いって?」
「この世界の最初の賢者、オータムだ」
賢者オータムはこの世界に魔法と魔導具を広めた張本人。のちに世界の終焉を導いた夜の神の眷属とも言われたが、不明。勇者殺し、竜殺しの異名を持つ。魔法使いを武器に変換して人々を争わせるという悪逆非道の行為をしている。
「そのオータムの薬が今になって出回ってると?」
「俺としてはそう考えられるね」
「……」
本当にそうなのだろうか? 仮にそうだったとして、なぜリリスを死の直前まで追い込めただろうか? 謎は深まるばかりだ。
「アッシュ、キミは僕の助手として外の世界へ行かないか?」
「先生、俺はまだ魔法使い見習いです。課題の不老を解くことも終わってませんし……」
「そうか。そうだよな……ごめん、忘れてくれ」
「はい」
結局、何もわからないままこの日は終わってしまった。
4月24日まで休載します




