↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/3

屋上にて。二人の会話

もちろん差出人は不明。

それこそよくある未知のメールだ。

「これってさ新手の迷惑メールもしくはいたずらメール?」

誰もがそう思うだろう。いや、そう思わない方がおかしい

だが違うのだ。それは自分が一番分かっている

「そうだったらいいけどな。そうだな・・・それが迷惑メールやいたずらだとしたら個人名や失くした大切なものまで知ってる人物で誰が送るっていうんだ?それも差出人をわざわざ空欄にしてまで。」

技術が進み、社会はより便利で安全なものを求めるようになった。

詐欺や普通の迷惑メールすら殆どなくなっている現状で、差出人欄を埋めずもしくは不可視にして送るなどというのは、途中の監査会社に引っ掛かる事は間違いない

それを潜り抜けるようにできたとして、たかが自分の友人に遊び目的で送るためにそんな面倒な事をする人間がいるのであろうか

さすがにそこは考えたらしく亜里沙は「ただのいたずら」という可能性は少ないと納得したらしい。

「でも・・・さすがにそれは・・・すぐにはそうなんですか!とはいかないよ」

「まあ、そうだろうな」

これは迷惑メールではなく現実ですよ!とにこやかに(まあ隼人は笑ってなどいないが)告げたうえで、誰が鵜呑みにするだろう

たぶん県内一の進学校と呼ばれるうちの高校に推薦で入った数少ない「間違えて入ってしまった」感じの人間でも信じない

「それで?」

「は?」

思わず素でそう返してしまった

「だーかーらっ!それで結局これはなんなの?ってこと!」

亜里沙は怒っているのかむぅー・・・と呟いてから、少し大きな声でそう言ってきた

ずいっという感覚でこっちに近づきつつ。

隼人は先ほどの冷静な態度を一瞬失い、たじろぐ

ビクッとなったのは亜里沙にも分かった、しかし状況がよくわからない

「?」

「あ、いや!ごめん今から説明する」

しかしそんな亜里沙の心配などそもそも気付いていない様子で何事もなかったかのようにすぐ元に戻り説明に入ってしまった

「とりあえずその別世界とかなんとかってところから説明すると・・・。そのメールを承諾してあるやり方でそれぞれの思い出の品がもれなく別世界・・・ILWのへの扉というか・・・鍵というかそんな物になるんだ」

「ILW?」

「別世界と言われる場所だよ。Imitation Logical Worldと呼ばれている」

「んんー?それは直訳した通りの意味なのかな?」

亜里沙は小首をかしげながらわからないよーと聞いてくる

これが素なのかは知らないが、それは小動物のような様子だった

なるほど道理で評判がいいわけだ

「ねー聞いてるのー?」

危ない、ここでまた亜里沙に怒られるわけにはいかない

「聞いているよ。意味は俺たちにもわからない。その名前がその世界を表しているのかもそもそもそのままの意味なのかも。ついでにいっておくとその世界の全てが謎だ」

目的も発端も創始者も、いやそれこそその世界が何なのかですら。と言葉を付け加える

「闘う意味だってないんだ。別に戦争しているわけでもないし、殺されるわけでもない」

「ふぇ・・・?んー・・というかそもそもその闘いに関してもわからないけど・・・。」

「あぁ悪いな。えっとほら、最初にいっておくとRPGと格ゲーが混じったような世界なんだよ向こうは。それで、そのメールに書いてあるようにそこには闘う義務が生じる。」

「えっと、何と闘うの?」

「あー・・・なんといえばいいか・・・敵だよ」

そうボソッとごまかす隼人をじとーっと見る亜里沙は十数秒たったところで諦め、今はそれで納得してあげるとため息をついた

「そっかー・・・ゲームみたいな世界かー」

「ああ、ただ一つだけ言っておこう。ゲームなんかとは違う」

そんな甘いものではない、とか言い出すの?と亜里沙がくすりと笑う

「そんなアニメなどでよくあるようなセリフじゃないよ、俺が言いたかった事は。」

「じゃあなに?」

それを言おうとしたところを自分が遮ったんじゃないか・・・と隼人は心で不満を言う

「違うのは・・・・終わりがないという事。目的や目標が不明でクリアというような概念がないという事だ」

「んー・・・そっか。正直それがどんな風な事なのかはあまり感じ取れないや」

「君は素直なんだな」

隼人は半分呆れた感情で、もう半分はクスッと笑うような感情でそう呟く

「あ!」

「な、なに!?」

突然亜里沙が大声を出した

「いや・・・今隼人君が笑った顔初めて見たよ!」

「え・・・」

いま・・・俺は心だけではなくちゃんと笑ったのだ・・・!

「その表情素敵だね!」

亜里沙がまぶしいほどの優しい笑顔を向けてくる

「・・・別に、それよりもう少し説明はいらないのか?」

その表情でこっちを見ないでほしい。

まるでそう言ってるかのように目をそむけつつ少し冷めたように言った

「あ、うん!欲しいですっ」

慌てて亜里沙が食いつく

「そうか、じゃあ後はそうだな・・・。そもそも別世界に行くといっても肉体的に移動するわけではないという事かな」

まあそう仮定されているだけではあるけれども。と付け足す

どういう事かよくわかっていない様子の亜里沙にもう少し噛み砕いて・・・とせがまれ仕方なく説明を続ける

「たとえば向こうでけがを負ったとする、で向こうから現実世界に戻ると怪我も疲労もなくなっている・・・と言うより元から無かったといった方が正しいか。」

「な、なるほど」

「あ、もちろん精神的な疲れとかはそのままだけどな。そしてまあ戦闘というものに負けても死ぬことはなくて・・・向こうの世界ではそれが終わるまで硬直するだけだし、戻っても何も影響はない。まあこんな所から、我々は意識のみの移動を行っているという意見が有力になっているというわけだ」

今話せる説明はこのくらいかな・・・と隼人が考え始めると、今まで黙って聞いていた亜里沙が質問をしてきた。


「ちょっと待って。それじゃあILWに行ってる間こっちの身体はどうなるの??そのままじゃないよね・・・?」

神妙な顔で尋ねる亜里沙の様子がおかしくてつい笑ってしまう。

自分が笑われた理由がわからなのであろう亜里沙は少し怒った表情に変えた。

「あぁ・・・えっと現実の身体はたぶん自分にとって一番安全な場所にあるはずだよ。あとついでにいうと自分から向こうに行かない限り戻る時間は転移した時間だ。」

「自分で行くとこっちの世界は時間が進んだままで・・・私が居なかった間は周りには記憶修正が入るといった感じかな?」

おそらくどこかの映画で見たようなパターンを喋っただけなのだろうが、全くもって正解であった。

しかしここまで現実離れした話を聞いてるというのに亜里沙は驚いた様子も見せない。

ここまでくるとこいつは何者なんだと疑ってしまう

「君は・・・本当に俺の話を聞いて信じているんだよな?」

「はあ?当たり前でしょ!?いくら君が私を嫌いだとしても失礼すぎ!」

怒られた。

「い、いや違うよ、嫌いでもないしただ確かめただけだって」

拗ねた様子をみせる目の前の少女に困惑する。

暖かな日差しが差し込む屋上に静かな沈黙と生温かい風が通る。

その沈黙を破ったのは俺ではなく亜里沙だった。

それも・・・くすくすという笑い声で。

「!?」

「ふふっ・・・あははははは!」

突然笑い始めた彼女に俺はついていけず、少しの間呆然と立ち尽くしていた。

やっとの思いで理由を尋ねると亜里沙は笑いを堪え嬉しそうな表情で答えた。

「だって・・・隼人君っていつ見ても無表情でいつもつまらなさそうにしてるから、もっと怖い人かと思ってたんだも 

 ん。でも、ちゃんと笑うし焦ったりするし、別に普通の人なんだなーって思っちゃって。こんな事ならもっと早く話せばよかった。」

確かにあまり表情も出さないし、日常を面白いと思ってもいないのは事実だ。

そうか・・・今また笑ってたのか。珍しい。

「それはやめておいて正解だったな。俺に話しかけても俺がきちんと会話するわけがないし、そもそも君のいまの地位 

 はなかったかもしれないぞ」

「今の地位?」

俺の何気なく呟いた言葉の意味がわからないようで、亜里沙は小首をかしげる。

いや実際はそんなことはなかったのかもしれないが・・・雰囲気がそんな感じだった。

「ああ今の君はクラスの中心的存在でありみんなから好かれる優等生・・・ってところだろ。おまけに学校の人気者で文句なしじゃないか。」

他の人間が言ったのであればただの嫌みに聞こえるのかもしれないのだが、隼人はただ真実を述べているという様子で言葉を紡ぎだしている。

そんな言葉に対する亜里沙の答えはごくごく一般的だ。

「あのね、そういうのは嫌なの。やめてくれないかな?」

ほらそうだろ?

みんなそうなのだ。自分はそんなものじゃないとか、本気で思ってもいないくせに君の方がそうじゃないかとか無理矢理にでも相手をほめ返す。

それで満足している奴らの気持ちが俺にはわからない。

まあ普通は空気を読んでそうしているとかって言うのだろうが、それでも俺には納得がいってない。

だが意外にも亜里沙は俺の顔を見て予想外な言葉を口にした。

「私は別になりたくてそうなったんじゃないし、それが目標だって思ってるわけじゃない。私はこんな自分じゃなくてもっと別なものを目指しているの。何も知らないのにまるで望み通りに行ってるみたいな事言わないで。」

この時俺はこの少女が何を目指し、俺の何気ない一言にそんな反応を示したのかなんて一つも予想できなかった。

彼女の言葉に驚きはあったのだが、この言葉は謙遜や照れからくる軽いものではないことぐらいわかったので

「ああ・・・わかった。悪かったよ」

きちんと受け止めることを選択した。

そう言うと目の前の少女は先ほどの強気な少女の姿など忘れさせるような笑顔になった。

「よかった・・・。私は私。それだけ覚えてくれていればいいよ。」

この少女は自分の思っているような人間ではないのかもしれない。

少しの期待と不安が生まれる。


次回あたりには亜里沙がどうにか結論を出すようです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。