新たな参加者
そんなことを考えていた俺とは対照的に明るく亜里沙が話しかけてくる。
「さてとっ!本題に戻すけど・・・その条件をのめば懐中時計は私のものだし、別世界で闘う事になるんだよね?」
先に言っておこう。俺はこの時先ほどのような事をじっくり考えこんでいた。
なので何も考えずただ事実を述べる
「ああ・・・そうだな。」
「で、この戦闘で失うものはないんだよね??」
「そうだな・・・自主的に闘うとすれば自由時間はないかもしれないがな。」
「なるほどー」
そう相槌を打つと亜里沙は自分の画面を出し、
『ピッ・・・』
「ん?」
気がつくと承諾をし、すでに契約し終わっていた。
「よしっと・・・完了したよー」
彼女の笑顔が輝いてる。
この寒空の下ではそれだけで心が温まるとか他の生徒たちが噂しているのを聞いたが
なるほど、確かにあたたか・・・・!?
その時俺はどれだけ動揺したのだろう。
よく覚えてはいないが亜里沙が俺の顔を見て爆笑していたから相当なものだったはずだ。
俺がこの高校に入って初めて出した大きな感情はそう・・・驚愕だ。
ここから散々どれだけ大変な事を決断したのか説教みたいな事をした。
それでも亜里沙は、だって楽しそうだし・・・君の言ってる事が事実であるなら私だってお手伝いしたいもの。
などと笑ってきかなかった。
この少女は危ない。なんか放っておいてはいけないと本能的に察知したのであろうか。
俺は自分でもあとで驚くような提案をしたのであった。
「仕方ない・・・大した事は出来ないが慣れるまで面倒みるよ。」
まあ俺なんかにみてもらいたいわけがないか・・・と少し安心していたところ
亜里沙が食いついた。
「本当に!?」
文字通り子供のように目を輝かせているが、黒髪が風になびき大人らしい雰囲気からどうにか高校生にみえる。
といった具合に子供みたいな反応だった。
まさか承諾されるなんて思ってもいなかった俺は、とんでもない提案をしたのかと初めて正気に戻り
同時に少し後悔したのであった。
「まあ、言ってしまったものは仕方がない。君は・・・今日の放課後あいてるか?」
「君じゃなくて亜里沙っていう名前だよ!え?うん・・・あいてるけど?」
突然放課後の予定を聞かれ少し訝しげな表情を見せる。
「いや・・・どうせ戦闘はほぼ毎日あるんだ。少しでも早くあっちに慣れていた方がいいだろ」
「あっ・・・ああ、なるほどっ・・・!」
なぜ亜里沙がこんなに慌てたのかはわからないが、とりあえず大丈夫そうだ。
「じゃあまた放課後に。」
「えっ!?」
落ち葉が舞うような季節にさすがに制服だけはちょっとキツい。
それにお腹がすいた。
そう言い残して立ち去った。
「うーん・・・せっかくなんだから一緒に戻ればいいのに」
一人だけ残された亜里沙はボソッと呟き、教室に戻ることにした。
一つ忘れているとすれば自分がどんな状況で教室から出てきてここで話をしたのかだ。
「亜里沙っ!!」
教室に戻った亜里沙に待っていたのはいつも自分と一緒に過ごす女子たちだ
「ちょっ!亜里沙あんた大丈夫!?」
「あの地味男になにされたの!?」
彼女たちは一気に亜里沙を取り囲むと多くの質問をぶつけてきた。
亜里沙自身は何をされたとかではないので混乱していた。
だが状況を理解すると彼女等を落ち着かせ、何もされてないと伝える。
「私と隼人君はただ話をしてただけだよ。だから大丈夫。みんなありがと」
そう笑顔で伝えると取り巻きの女子たちは更に動揺した。
「亜里沙・・・あんた今地味男を・・隼人君って?」
「うん?呼んだよ?なかなか面白いし頼りがいのあるような人だったよー。こんなんだったらもっと早くに友達になれればよかったなぁ」
亜里沙がそんな言葉を発するとクラスのざわめきが大きくなった。
そんなざわめきと周りの女子たちの声の中に気になる言葉が聞こえた
「これじゃあ桐野隼人も終わりだな。」
「北村達にさっき連れてかれた時点で終わってるけどな。まあ自業自得だ」
そんな会話が近くの男子から聞こえた
それを聞いた亜里沙は一気に態度を変える
「ちょっと・・・それどういう事か教えてくれないかな?」
普段の彼女からは見られないような冷たさだ。
下手したら相手に何も言わせないということができそうである
「は・・・はい。」
声をかけられた男子二人はあこがれの優等生が話しかけてきた事に驚き、そしてその冷たさに驚きなかなか本題に入れなかったのだが、亜里沙の「早く教えて」という急かす声にこたえた。
彼等の話によると、桐野隼人は教室に戻ると同時に北村達4人にどこかに連れて行かれたということだ。
北村達というのはこの有名な進学校においてただ数人だけの異端者、いわゆる問題児だ。
そして亜里沙に熱心に好意を持ち続けるグループの中心人物であると言っても良いだろう。
「北村くん達が・・・・。どこに行ったか心あたりはないかな?」
そう尋ねる亜里沙の顔には先ほどの冷たさはなく、ただただ困ったという表情が浮かんでいた。
そんなやり取りをみていたクラスメートは、一斉にざわついていたがやがてその中から一人の男子が呟く。
「あいつらなら・・・西校舎の倉庫裏・・・だと思うけど」
その言葉を聞くとほぼ同時に亜里沙は駆け出す。
昼休み終了まで15分。
「亜里沙!?」
周りの声などろくに聞こえていないように感じる
ともかく亜里沙の中には間に合え!という気持ちしかなかった
「隼人くん!!」
倉庫裏。駆け込んだ先にみえたものは・・・男子生徒の倒れている姿。
見なれた制服姿が倒れていた。
思わず足を止める
「あ・・・お前・・・屑柄亜里沙・・どうしてここに」
そう。見なれた北村達の倒れた姿が。
「は??」
亜里沙はそこで何が起こったのか、瞬時に判断できなかった。
この進学校だからこそかもしれないが、北村達はこのあたりでは喧嘩であればトップ争いをするくらいらしい
その4人組が・・・倒れている?
おかしい。
誰がやったのだろうか・・・・?
誰かが自分が来る前に来て目の前の少年を助けたというのであろうか
「・・・え、・・ずのえっ!屑柄!!」
「はっはい!」
隼人がずっと呼んでいたらしい。
亜里沙は考え込んでぼーっとしていたため、思わず声が高くなってしまった。
だがそんな様子を見て笑う事もせず本気で心配をしてくる隼人
「お前・・・大丈夫?」
「何が?」
「何が・・・って、呼んでも返事もしないで・・・・」
「あ、ごめん・・・。」
そんな亜里沙の様子を見て隼人はため息をつく。
そして、手にもっていた長い棒のようなものを捨てた。
「ん・・・なにそれ?」
「ああ・・・あれ?ただの木の棒じゃないかな」
さらりと答えられても困るのだが、とりあえず今までのいきさつを聞くことにした。
まず隼人が教室に帰ると北村達はすぐにここに連れ出したらしい。
理由は亜里沙関係である事は言うまでもないが
そうして隼人につっかかり、隼人が木の棒1本で返り討ちにした
簡単に説明された事実はこんなところである。
「君が・・・この4人を?」
「そうだね、まあそんなところだな」
あのいつも大人しく目立つ事が嫌いで一人が好きで・・・そんな隼人がこの4人を・・・。
そしてただの棒きれ一つで行動不能にまでさせた
そんなことが本当にできるのだろうか?
だが亜里沙の目の前の光景がそれを現実だと物語っている。
「えっと・・・剣道とかやってるっけ?」
少しぎこちない雰囲気で亜里沙がたずねる
「いやー?やってないし、もともと運動とかそんな好きでもないからな」
「そ、そっか・・・」
隼人はさらりと答えたうえにその質問をしてきた意図すら気にしない様子だ
タイミングを見計らったかのようにチャイムがなる
「あ・・・鳴った。行こうか」
「えっ・・・あぁうん。あっ!というか・・・この人たちどうする・・・?」
亜里沙の焦りとは裏腹に隼人はゆったりと、いかにもどうでもよいという風にゆっくり時間をかけて振り向く。
彼のどこか浮世離れしている雰囲気はきっとこんな動作からも来ているのだなと亜里沙は感じる
「ああ、このままでもいいんじゃない?どうせこの人たちの行為に教師も困っていたんだし。それに今回はどう考えても正当防衛だろ。」
さらりと冷静に呟く隼人に少々驚くが、5時間目が始まってしまう為、わかったとだけ言い教室に戻った
ただ、隼人は自分が職員室に行き事の経緯を話してくるからと言い残し、去ってしまったが
そして亜里沙はクラスメートに説明するという行為に苦しまされたわけである
教室に戻ると授業はお構いなしに質問攻め。授業といっても急きょ自習となったのだ
ただ、隼人に余計なことを言うなと言われているため、北村達にからまれている隼人を亜里沙が見つけ、そのまま教師を呼びに走ったということで説明した。
無論、クラスの人間が隼人の隠れた能力を知っているわけがないのでそれですんなり通ってしまった
「亜里沙大変だったねー・・・あんな奴の為に自分の事なんか省みず走って行くなんて、さすがだよねー」
「ほんとほんとー。わざわざ桐野なんかの為になんて・・・」
「もし亜里沙の身に何かあったらって思ったら桐野をどうしてやろうかと思ったよー」
ちがいないと笑いが起こる
亜里沙はこんな友人たちがあまり好きではなかった。もちろん良いところもたくさんある
だが自分に対する本物の好意があるのかは謎だ。いや皆無なのかもしれない
もちろん嫌われているわけではないのかもしれないが、素直な好意だけなのではないのは確かだ
「あはは、それはないよーでもありがとね」
いつも通りにそんな会話をしていると、教師と隼人が戻ってきた
途端にクラスは静かになり、教師の即席な偽りの説明が行われ授業が再開された
それ以降北村達について隼人について触れる人間はおらず、隼人は処分などなくこの一件は解決した。
放課後。
「隼人君!一緒にかえろーっ」
その一言に周囲の人間はもちろん、隼人本人が驚く事になった
本日一番の笑顔で、クラスで空気の位置に居る人間に帰りを誘う人間がいる事に驚くだけではなく、この場合は誘った人間が問題なのだ。
隼人を誘った人間それは・・・・もちろん亜里沙である。
「は・・・・・?いや、なんで?」
もちろん隼人は思考が一瞬フリーズすることとなった。
まあこれは言うまでもない事だが、いつものように亜里沙を寄り道に誘おうとした女子は顔を見合わせ、憧れの眼差しを向ける男子は呆然とする羽目になった
そんな周りの様子などまるで見えてもいないかのように亜里沙はにこりと笑い言葉を続ける
「え?だってどうせあとで会うんだよね?だったら一緒に帰って、もっとお話聞かせてよ!」
時間が止まったかのように静まり返っていたクラスの人間がざわつき始める。
そこで隼人は亜里沙にもっている懐中時計を握るように小声で指示をした
「いいけど・・・なんで?」
小動物のように小首をかしげる亜里沙をスルーし、質問に答えることなくその細い腕をつかんだ。
「転移・・・!」
「えっ、ちょっと・・・!?」
驚く亜里沙と逃げるように言葉を口にした隼人はこちらの世界から消え去った。
展開は早いですw
そして突発的すぎてわかりにくいです・・すいません
次回は向こうの世界での二人についてかければいいと思ってます




