燃え盛る村 【村人たちの視点】
平和な一日が、今日も村に訪れていた。
村人たちは皆、明るい表情を浮かべ、活気に満ちている。
商人たちは店を開き、子どもたちは笑いながら通りを駆け回って遊んでいた。
農民たちは今日の収穫を抱えて畑から戻ってくる。
その顔には笑みが浮かんでいた。今日の収穫は、いつもより出来が良かったからだ。
村長もまた、村の見回りをしていた。
村長は六十代ほどに見える。質素な茶色の服を身にまとい、穏やかな笑みを浮かべながら村の中を歩いていた。
村長は農民たちのもとへ歩み寄る。
「おはようございます」
「今日の収穫はどうですか?」
村人たちは笑顔で村長に挨拶を返した。
すべてが、いつもと変わらぬ平和な光景だった。
……
村の外――
遠くには、大勢の武装した男たちが静かに立っていた。
やがて、その集団のリーダーが前へと進み出る。
彼は巨大な白い虎の背にまたがっていた。
白い虎はゆっくりと歩を進め、その男は静かに村を見つめている。年齢は四十代ほどに見える。
身長は約百八十九センチ。オレンジ色の髪と、濃い髭を生やしていた。
その後ろでは、一人の魔族がリーダーの巨大な剣を肩に担いで歩いている。
その剣はあまりにも巨大で、普通の人間では持ち上げることすらできないほどだった。
二人の斥候が素早くリーダーのもとへ駆け寄る。
二人はその場にひざまずき、頭を深く下げた。
「偉大なるガレス様」
「村の結界が弱まっています」
「今こそ攻め込む絶好の機会です」
斥候たちの報告を聞いたガレスは、命令を下す。
「村を攻撃しろ」
その命令とともに、武装した男たちは一斉に村へ向かって突撃した。
……
村の中――
村長は数人の村人たちと話をしていた。
その時――
「村長!」
二十代ほどに見える巫女が、全速力で村長のもとへ駆け寄ってくる。
巫女は十七歳ほどに見える少女の手を強く握り、村の中を走っていた。
少女は腰まで届く長い黒髪をなびかせ、その毛先は淡いピンク色に染まっている。
真っ直ぐに切り揃えられた前髪が、その整った顔立ちを縁取っていた。
二人は村長の前で立ち止まり、肩で息をしている。
「結界が……!」
「村の結界が破られました!」
「大勢の武装した集団が、この村へ向かってきています!」
村長の表情は青ざめた。
その顔には、はっきりと恐怖が浮かんでいた。
「どうして……?
どうして結界が破られたんだ?」
「神護者様は、村が襲撃を受けていることをご存じなのか?」
巫女は静かに首を横へ振る。
「神護者様に連絡を取ろうとしましたが……」
「ですが、何の応答もありません」
村長の表情はさらに険しくなる。
「村長!」
一人の村人が慌てた様子で駆け寄ってくる。
「村が襲われ――」
ドスッ!
言い終わる前に、一矢がその胸を貫いた。
村人はその場へ倒れ込む。
武装した男たちは、すでに村の目前まで迫っていた。
村長は奥歯を強く噛み締める。
「行きなさい!
神殿へ向かい、神護者様へ祈るんだ」
「一刻も早く、この村を救いに来てくださるよう伝えてくれ」
「それから、目の見えない妹も安全な場所へ連れて行くんだ」
村長の言葉を聞くと、巫女はすぐに神殿へ向かって走り出した。
その時、一人の少女が二人のもとへ駆け寄ってくる。
「アリア! 無事なの!?」
巫女は妹の友人へ視線を向ける。
「お願い……アリアを連れて行って」
「二人とも、安全な場所へ逃げて」
「私は神殿へ行かなきゃ。大事な用があるの」
少女は頷いた。
「分かった」
アリアはゆっくりと手を伸ばし、優しく友達の手を握る。
巫女は妹へ優しく微笑んだ。
「アリア……どうか無事でいて」
その言葉を最後に、巫女は神殿へ向かって走り出す。
アリアとその友達も、互いに手を繋いだまま安全な場所へ向かって走り始めた。
その頃――
武装した男たちが村へなだれ込む。
立ちはだかる者は、容赦なく斬り捨てられていく。
子どもも、女性も、老人も……。
誰一人として見逃されることはなかった。
村中に悲鳴が響き渡り、通りは血で染まっていく。
やがて武装した男たちは村長のもとへたどり着く。
村長のそばにいた村人たちは、容赦なく虐殺された。
武装した男の一人が前へ出ると、その拳を村長の腹へ叩き込む。
「がはっ!」
村長はその場へ崩れ落ちた。
その時――
巨大な白い虎にまたがったガレスが姿を現す。
ガレスは冷たい笑みを浮かべながら、倒れた村長を見下ろした。
「教えろ」
「遺物はどこに隠した?」
村長は何も答えない。
それを見たガレスは、部下の一人へ小さく合図を送った。
ためらうことなく、武装した男は剣をまっすぐ村長の胸へ突き刺した。
村長はその場へ崩れ落ち、静かに息を引き取る。
ガレスは何事もなかったかのように村の中を歩き続ける。
部下たちは出会う者すべてを容赦なく虐殺していく。
いくつもの家に火が放たれ、黒い煙が空へと立ち上っていった。
武装した男たちは、数人の若い少女たちを捕らえ、捕虜として連れて行く。
その近くでは、アリアと友達が身を潜めていた。しかし、不運にも二人も見つかってしまう。
武装した男たちは二人を引きずり出し、ほかの捕らえられた少女たちと一緒にした。
その時、ガレスの右腕であるダリウスが近づいてくる。
「ガレス様からは、すでに許可をいただいている」
「この娘たちは狩りに使っていい」
ダリウスは三人の武装した男たちを連れ、捕らえた少女たちとともに村を後にした。
彼らは森とは反対側へ向かって歩いていく。
捕らえられた少女たちは、手を縄で縛られたまま静かについていく。
少女は全部で九人ほどいた。
泣いている者もいる。
絶望してうつむく者もいた。
アリアは友達の手を握りながら、黙って歩き続ける。
やがて一行は広大な草原へたどり着き、ダリウスは片手を上げた。
「止まれ」
全員が足を止める。
ダリウスの口元に残忍な笑みが浮かんだ。
「解放しろ」
三人の武装した男たちは、少女たちの手を縛っていた縄を解いていく。
ダリウスはゆっくりと剣を抜いた。
「走れ」
「走るのをやめた者から……殺す」
その言葉を聞いた少女たちは、一斉に走り出した。
「アリア! 手を離さないで!」
友達はアリアの手を強く握りしめたまま、全力で走る。
皆、生き延びるために必死で駆けていた。
少女たちがしばらく走ったところで、ダリウスと三人の部下は馬に乗り、その後を追い始める。
ダリウスは剣を抜き、ほかの三人は弓を構えた。
やがて、ダリウスは一人の少女に追いつく。
ザシュッ!
剣が少女の体を切り裂く。
少女はその場に倒れ、そのまま動かなくなった。
同時に、ほかの三人も矢を放ち、三人の少女を射抜く。
そのうちの一本が、アリアの友達の足に突き刺さった。
「きゃああっ!」
彼女は地面へ倒れ込み、その拍子にアリアの手が離れてしまう。
アリアはすぐに彼女のそばへ駆け寄り、その場にひざまずく。
必死に友達を立ち上がらせようとする。
だが、痛みがあまりにも激しく、友達は立ち上がることができなかった。
「アリア……私のことは置いて行って」
アリアの瞳に涙があふれる。
それでもアリアは、友達を置いて行こうとはしなかった。
その時――
ダリウスがアリアの前へたどり着く。
剣を振り上げ、今にもアリアへ斬りかかろうとした。
ドォンッ!!
誰も何が起きたのか理解する間もなく、ダリウスの体は圧倒的な衝撃によって突然爆散した。




