初めてのクラフト
暗闇だ。
ひどい悪臭が漂い、胃液が俺の足に触れる。
「……?」
俺は巨大なイモムシの腹の中にいる。
正直、まだ生きていることのほうが驚きだった。
その時、不意に周囲が激しく揺れ始める。
俺はバランスを崩して倒れ込む。
そして全身が巨大なイモムシの唾液と胃液にまみれてしまう。
「うっ……。 何が起きてるんだ?」
揺れは止まらない。
巨大なイモムシは全速力で移動している。
いや。
何かを急ぐように、ものすごい勢いでどこかへ向かっているように感じる。まるで何か緊急事態でも起きたかのようだ。
だが今は、それよりもっと重要な問題がある。
どうやってここから脱出すればいい?
「……!」
その時、一つの考えが頭に浮かぶ。
これは実は、俺の作戦を実行する絶好のチャンスだ。
俺はすでに巨大なイモムシの腹の中にいる。
巨大なイモムシの外皮は信じられないほど硬いが、腹の中はずっと柔らかそうに見える。
ここで強力な攻撃を放てば、大ダメージを与えられるはずだ。
問題は、もうほとんど魔力が残っていないことだった。
すると、何かが胃液の中を漂いながら俺のほうへ流れてきて、足にぶつかった。
俺は足元を見る。
モンスターの肉片が、胃液によってゆっくりと溶かされていた。
俺はしばらくそれを見つめる。
もう、選択肢は多くない。
俺はそれを掴み、そのまま食べ始める。
一口。
そして二口、さらに何口も。
「……うっ」
最悪な味だ。
酸っぱく、苦く、それに吐き気を催すような妙な臭いまで混ざっている。
だが、俺には他に選択肢がない。
俺は食べ続ける。
大量のモンスターの肉を食べたことで、巨大なイモムシと戦えるだけの魔力を取り戻した。
そして、俺はこの森でモンスターにまったく遭遇しなかった理由に気づく。
理由は単純だ。
巨大なイモムシが、自分の縄張りに入ったモンスターをすべて殺し、喰らっていたのだ。
だから、この森はあれほど静かだった。
これで、俺は巨大なイモムシと戦う準備が整った。
俺は拳を掲げ、そこへエネルギーを集中させる。
強力なドラゴンパンチを放つ準備はできている。
その間も、巨大なイモムシはどこかへ向かって全速力で走り続けている。
すると、巨大なイモムシは突然立ち止まった。
ドクン!
ドクンッ!!
巨大なイモムシの胃の中が激しく揺れる。
ドクンッ!!!
ようやく俺は巨大なイモムシの腹の中から脱出した。
巨大なイモムシは、体内から三発のドラゴンパンチを受ける。
「クルァァァァァァッ!!」
巨大なイモムシは苦痛の叫び声を上げた。
俺は巨大なイモムシへ視線を向ける。
巨大なイモムシもまた、俺を見つめ返してきた。
だが、攻撃してくることはなく、そのまま俺を無視して同じ方向へ進み続ける。
(今さら逃がすか)
だが、あいつを逃がすつもりはない。
俺は全身へエネルギーを集め始める。
さらに。
もっとだ。
真紅のエネルギーが、稲妻のように俺の体の周囲へ現れ始める。
次の瞬間、俺は全速力で巨大なイモムシへ突進した。
ドォォン!!
足元の地面が砕け散る。一瞬で巨大なイモムシのもとへ到達する。
俺はその体を掴み、そのまま前へ突き進む。
巨大なイモムシは必死にもがく。
だが、俺は決して離さない。
そのまま長い距離を地面の上へ引きずっていく。
木々も、岩も、土も、次々と宙へ舞い上がりながら、俺たちは猛スピードで突き進んだ。
やがて俺は巨大なイモムシを川辺まで引きずっていく。
そして、全力でその体を投げ飛ばした。
巨大なイモムシは凄まじい勢いで地面へ激突した。
ドォォン!!
巨大な土煙が空高く舞い上がる。
俺は地面へ着地し、巨大なイモムシを見つめる。
巨大なイモムシにあるのは、わずかな擦り傷だけだった。
「この戦いも終わりだ」
俺は腕を掲げる。
真紅のエネルギーが手の周囲へ集まり、徐々に形を成していく。
やがて、エネルギーだけでできた弓が俺の手に現れた。
さらに、もう片方の手でエネルギーの矢を作り出す。
同時に、巨大なイモムシも攻撃の準備を始めていた。
巨大なイモムシは口を開き、莫大なエネルギーを集め始める。
巨大な紫色の球体が、巨大なイモムシの前にゆっくりと形成されていく。
(いい戦いだった。これからは俺が、この森のお前の代わりになる。
さらばだ、巨大なイモムシ)
そして、俺は矢を放ち、巨大なイモムシも巨大な球体を放つ。
エネルギーの矢と紫色の球体は、凄まじい速度で互いへ突き進む。
二つの攻撃は正面から激突した。
しばらくの間、どちらも押し負けることはなかった。
だが――
ついに俺の矢がエネルギー球を貫く。
矢はそのまま突き進み、傷ついた巨大なイモムシの腹部へ直撃した。
ドォォォォン!!
巨大な爆発が、その体を飲み込む。
煙と土煙が周囲一帯へ広がっていく。
しばらくして、ようやく煙が晴れた。
巨大なイモムシは死んでいた。
その体は真っ二つに吹き飛んだ。
巨大なイモムシの肉片が、いくつも木の枝に引っかかっている。
その血が地面一帯へと広がっていく。
ついに――
俺はこの化け物を倒した。
俺は安堵の息を長く吐き、その場に腰を下ろす。
「はぁぁ……。
やっと終わった」
そのまま地面へ寝転ぶ。
この戦いで、俺の体力は完全に尽きていた。
クンクン……
妙な臭いが鼻につく。
その臭いは俺の体から漂っていた。
自分の体を見下ろす。
巨大なイモムシの唾液が、まだ全身にべっとりと付着している。そのせいで、腐った食べ物のような臭いがしていた。
俺は川のほうへ視線を向ける。
一秒も無駄にせず、川へ向かって歩き出した。
そして、そのまま川へ飛び込む。
川の水が、巨大なイモムシの唾液を俺の体から洗い流していく。
しばらくの間、冷たい水の中を泳ぎ、その心地よさを楽しんだ。
体をきれいにしたあと、俺は川から上がる。
そして、巨大なイモムシの死体のもとへ向かった。
俺は巨大なイモムシの死体を見つめる。
そのとき、不意に一つの考えが頭に浮かんだ。
「……ふむ」
クラフトシステムを使ったらどうなるんだ?
システムの説明では、必要な素材さえあればアイテムを作れるらしい。
巨大なイモムシの体も、素材として扱われるんじゃないか?
「……試してみるか」
俺は巨大なイモムシの死体へ向かって腕を伸ばし、クラフトシステムを発動する。
すると、巨大なイモムシの体が突然光り始めた。
白い光がその体を完全に包み込み、同時に俺の魔力も消費されていく。
ゆっくりと巨大なイモムシの体は縮み始め、その姿を変えていく。
しばらくすると、白い光が消えた。
そこには、一式の服が地面に置かれていた。
俺はその服を拾い上げる。
これは案外いいかもしれない。
どうせ着る服もないんだ。せめて、この服を着ることにしよう。あとは、サイズが合うことを願うだけだ。
俺はその服を身につける。
服は驚くほど俺の体にぴったりだった。黒い生地は柔らかいのに、信じられないほど丈夫な感触がある。
膝まで届く黒いロングコートには上品な金色の装飾が施され、金色の模様が刻まれた黒い手袋と、黒いブーツがその装いを完成させていた。
「……」
まるで、この服は最初から俺のために作られていたかのようだ。
最後にもう一度服装を確認すると、俺はさらに森を探索することにした。
そして、俺は森の中を歩き始める。探索を続けるうちに時間が過ぎていく。
やがて、俺は森の端へとたどり着いた。
目の前には、広大な草原がどこまでも広がっている。
俺は草原へ足を踏み出した。
崖の上から遠くを見渡す。
そのとき、不意に何かが目に入った。
村だ。
その村から、大量の煙が立ち上っていた。
すると、人々がそれぞれ別々の方向へ向かっているのが見えた。
「……あの人たちは何をしているんだ?」




