救出
あの者たちを見た瞬間、何か嫌な予感がした。
だから、あとをつけることにした。
気づかれないよう十分な距離を保ちながら、静かにあとを追う。
しばらく歩くと、ようやく彼らは足を止めた。
俺も距離を保ったまま立ち止まる。
(あの子たちを助けるべきか?)
あの少女たちは盗賊や犯罪者なのかもしれない……。
武装した男たちは、ただ自分たちの仕事をしているだけという可能性もある。
まだ状況が分からない。
何が起きているのか、まずは見極めるべきだ。身を隠したまま、静かに様子をうかがう。
そして――
俺は目を見開いた。
「……何をしてるんだ!」
少女たちは必死に命からがら逃げている。
武装した男たちは馬で追いかけ、一人、また一人と少女たちを殺していく。
その顔には残忍な笑みが浮かび、まるで楽しんでいるかのようだった。
(……こいつらは間違いなく悪人だ)
俺は素早く辺りを見回し、投げられそうな物を探す。
遠距離攻撃を放つだけのマナが残っていないからだ。
ジャイアントキャタピラーとの戦いで、マナはほとんど使い果たしてしまった。
残っていたわずかなマナも、この服を作るために使ってしまい、今もまだ回復しきっていない。
その時、地面に小さな石が落ちているのを見つけた。
これで十分だ。
俺はその小石を拾い上げる。
ためらうことなく、先頭を走る武装した男へ向かって、全力で投げつけた。
石は凄まじい速度で空を切り裂き、音速を超える。
バァンッ!
武装した男が反応する間もなく、小石がその体へ直撃した。
あまりにも凄まじい衝撃で、その体は爆散する。
鮮血が宙へと飛び散った。
男が乗っていた馬は恐怖にいななき、その場へ倒れ込むが、傷一つ負ってはいなかった。
残る三人の武装した男たちは、その光景に言葉を失う。
「な、何だ……!?」
少女たちも走るのをやめ、信じられないという表情で振り返った。
俺は一瞬の迷いもなく、彼らのもとへ駆け出す。
瞬きをする間もなく、俺はすでに残る三人の武装した男たちの前に立っていた。
俺は視線を向ける。
一人の少女は足に矢を受け、痛みに苦しみながら地面へ倒れていた。
もう一人の少女は、必死にその子を立ち上がらせようとしている。
……間に合った。
あと少し遅ければ、あいつらは二人を殺していただろう。
呆然と立ち尽くす武装した男たちには目もくれず、俺はまっすぐ二人の少女のもとへ向かう。
そして、二人の前でゆっくりとしゃがみ込んだ。
傷を負った少女は、俺が近づいた瞬間、明らかに怯えた表情を浮かべる。
(……俺を怖がってる)
次に、もう一人の少女へ視線を向けた。
彼女は今も友達を助けようとしている。
その瞳は閉じられたままだ。
(……俺を怖がっていない?)
話しかけてみるべきだ。
「君たちを助けに来た」
少女は少しためらったあと、ゆっくりと頭を下げた。
「……あ、ありがとうございます」
彼女は礼を言う。
だが、その視線は俺とはまったく違う方向を向いていた。
「……ん?」
どうしてあっちを向いているんだ?
そう尋ねようとした、その時――傷を負った少女が慌てて口を開く。
「誤解しないでください……この子はあなたを無視しているわけじゃありません」
「この子は目が見えないんです」
その言葉で、ようやく理解した。
目を閉じているのは、彼女が盲目だからなんだ。
俺はもう一度、彼女へ話しかける。
「お、俺はこっちだ」
俺の声を聞いた瞬間、目の見えない少女は、その声のする方へ顔を向けた。
「俺はレイだ」
「君の名前は?」
目の見えない少女は、優しく澄んだ声で答える。
「……私はアリアです」
アリアに、なぜあの男たちに命を狙われていたのか――そんなことを聞こうとした、その時。
「き、貴様ァッ!」
武装した男の一人が怒鳴りつけてくる。
だが、震える体が、その恐怖を隠しきれていなかった。
「お前、自分が誰を殺したのか分かっているのか!?」
「ダリウス様は、ガレス様の右腕なんだぞ!」
俺はゆっくりと立ち上がり、三人をまっすぐ見据えた。
三人の武装した男たちは弓を投げ捨て、剣を抜く。
そして、俺は動いた。
一秒も経たないうちに三人の間を駆け抜け、その喉を切り裂く。
奴らは反応する暇すらなかった。
一人、また一人と地面へ倒れていく。
俺はそのままアリアとその友達のもとへ歩いて戻る。
その場にいた全員が、信じられないという表情で俺を見つめていた。
顔に浮かぶ衝撃は隠しようがない。
それもそのはずだ。
俺はあの武装した男たちを、あまりにもあっさりと倒してしまったのだから。
俺はアリアの友達へ視線を向ける。
「どうしてあいつらは君たちを襲っていたんだ?」
アリアの友達はしばらくうつむいたあと、小さな声で答えた。
「わ、私にも……分かりません」
「大勢の武装した男たちが突然、私たちの村を襲ってきたんです。そして、目に入る人を次々と殺していって……」
「お願いです……どうか、私たちの村を助けてください」
その言葉を聞き、俺は決意する。
「分かった……君たちの村を助けよう」
「でも、その前に……」
俺は彼女のそばへしゃがみ込む。
足に刺さった矢へそっと手を添え、一気に引き抜いた。
彼女は声を上げまいと、強く歯を食いしばる。
すると、アリアはすぐに自分の服を裂き、その布を友達の傷口へ丁寧に巻きつけた。
アリアは友達を支えながら立ち上がらせる。
支えられた少女は、ゆっくりと立ち上がることができた。
俺は村の方へ視線を向ける。
(どうやって向かうか……)
俺一人なら、何の問題もなく村までたどり着ける……。
だが、この子たちは俺の速度についてこられない。
その時、武装した男たちが残していった馬が目に入った。
四頭の馬……。
これなら全員で乗れる。
俺たちはすぐに馬へ乗り込んだ。
アリアとその友達は一頭の馬に二人で乗る。
残る三人の少女たちは、二頭の馬に分かれて乗った。
俺は最後の一頭へまたがる。
そして、俺たちは村へ向かって駆け出した。




