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星海の来訪者

ヴェルダ国の城門は、石造りだった。

切り出したばかりのような白さではなく、長い年月が染み込んだ灰白色だった。石の一つひとつに、積まれた時間の重さがある。カイはその色を見ながら、エルド・ラインにも似た城があったことを思い出した。名前は出てこなかった。戦場として覚えている場所の名前は、時々そうなる。地形だけが残って、名前が抜ける。

「思ったより小さいな」

カイが小声で言った。

「聞こえますよ」

エリオが同じ声量で返した。隣を歩きながら、視線は城門の上部を確認していた。見張りの数と配置を読んでいる目だった。

城門の前に、人が出て待っていた。

若かった。カイより少し上か、同じくらいか。礼服を着ているが、どこかまだ慣れていない着方だった。しかし姿勢は真っ直ぐだった。背筋を意識して伸ばしているのではなく、自然にそうなっている。

笑顔は本物だった。それだけはすぐ分かった。

「よく来てくださった」

エルト王が言った。一行を見渡した後、視線がシオンで止まった。シオンはベレー帽の縁を一度だけ触った。

「あなたが、星の海から来た提督か。我が国では、賢者と呼ぶ者もいる」

「賢者、ですか」

シオンは少し間を置いた。

「魔術師と呼ばれるよりタチが悪いですね。賢者というのは、答えを持っていることになってしまう」

エルト王が笑った。作った笑いではなかった。

「答えをお持ちではない?」

「持っていたことが一度もない。いつも後から、なぜそうなったかを考えているだけです」

エルト王がまた笑った。今度は少し違う笑い方だった。最初の笑いより、少しだけ距離が縮まった笑い方だった。

シオンはそれだけ言って、城の奥に目を向けた。距離があった。愛想がないわけではない。もう少し何かを見てから話したい、という目だった。エリオはその視線の先を一瞬だけ確かめた。城の奥、北棟の方角だった。確かめて、すぐ元の位置に戻った。

エルト王は気づかなかった。

「どうぞ、中へ」

石畳の音が、複数人分重なった。

城の内部は、外観と同じく質素だった。装飾が少ない。廊下の壁に掛けてある絵画は、戦功を誇るものではなく、風景画だった。山と、川と、平原。シオンは歩きながら、それを一枚ずつ横目で確認した。権威を見せるためではなく、好んで飾っている、という種類の選び方だった。

案内された広間で、昼食の席が用意されていた。豪奢ではなかった。この国で取れるものを、丁寧に調理したという食卓だった。エルト王は上座に座ったが、沈黙を埋めようとしなかった。沈黙に慣れている人間の座り方だった。

シオンはその点を、少し意外に思った。

「お口に合いますか」

最初の一皿が半分ほどなくなった頃、エルト王が口を開いた。

「合います」

「それは良かった。料理長が、星の海の客人に何を出すべきか、昨日の夜から悩んでいたので」

「ご心配なく。私は食事に関しては保守的なので」

「保守的」

エルト王が繰り返した。言葉の意味を確かめているというより、その言葉を選んだ人間を確かめている繰り返し方だった。

「星の海まで出ていく人間が、食事では保守的というのは、面白い」

「出ていかざるを得なかっただけです。好んで出たわけではないので」

エルト王はまた笑った。

エリオは二人の会話を聞きながら、自分の皿を静かに片付けていた。シオンが食事をしながら話している時は、給仕に徹する。長年の習慣だった。

リラは隣のアルヴィを横目で見た。アルヴィは食事を半分ほど残したまま、窓の外を見ていた。庭に風が来ていた。木の葉が揺れていた。それだけだった。何かを見ているというより、何かを聞いているような目だった。

食事が終わった頃、エルト王が言った。

「夕食の後に、少し話をしてもいいですか。一対一で」

視線はシオンに向いていた。

シオンはカップを置いた。この世界のハーブの茶、二杯目だった。エリオが補充のタイミングを、今日は完璧に測っていた。

「構いません」

石畳の音が、廊下の向こうで続いていた。


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