第5章-2
療養所に戻り、まずアルスの部屋を訪れた。彼はソファに座って、自分で淹れたハーブティーを味わっているところだった。
「もう大丈夫なの?」
様子を窺うと、アルスは「ん」と返事をした。
「これからどうするんだ?王と話をしてきたんだろ?」
「あ、うん……」
2日後に王城前で待ち合わせて、海底の小さな砂浜へ向かうこと、同じタイミングでアルティアとシェイドも合流することをアルスに伝えた。
「出国の許可を得たのか。まあ、あいつがいないと翡翠の王は討伐できねぇか」
「ミスティアもそこにいないとダメだけどね……」
姉は捕えられてあの場所にいる……そう想定して向かう。
「そこなんだが」とアルスは持っていたカップをテーブルに置いた。
「囚われし者の御魂って、核の守護者でいいんだよな?」
「うん。ボクもそれだと思ってるけど……?」
アルスは腕を組んだ。何やら悩んでいる様子だが、ほかに囚われている御魂は、と聞かれてもピンと来ない。
「ミスティアが核の守護者に囚われていたとして、どうやって御魂を消すんだ?」
「あっ……えっと……ボクたちが守護者からミスティアを助け出さないと、消せないよね。討伐しないといけないと思う」
「守護者を討伐、は、ミスティアも殺してしまう、なんて状況だったら?」
「なっ……」
意地悪な問いだと思ったが、その可能性も大いにある。必死に考えたが、ついに答えられなかった。
「……守護者が完全に魔物だったら、シェイドが手懐けられるかもしれない。翡翠の王の命令しか聞かないようになってたら終わりだがな」
魔物がヒトに従うなんて。魔物はヒトを喰らうのに、そんなことができるの?闇の種族だからできちゃうの?
……いや、その技に種族は関係ない。やろうと思えば会得できる技なのかもしれない。
「闇の種族は魔物に近い属性だからな、思念を送り合うこともできる。他の種族では無理だろうな」
考えを読まれていた。アルスは「勝手に読んですまん」と小声で言った。
「状況を見て、だな。……で、レントはどうした?」
「わかんない。まだ病室へ行ってなくて」
「そうか。じゃあ行くか」
病室を出ることは許可されているらしい。というか、明日には退院するらしい。よかった。
アルスと一緒にレントの病室へ向かう。その途中でアマリアとばったり会った。
「あら、おかえりなさいヘイレンさん。レントさん起きてますよ。まだ本調子ではないですが」
「本当ですか!?様子を見に行こうとアルスと向かってたんです。ありがとうございます!」
「アルスさんは……そのご様子だと明日退院と担当医に言われたましたか?」
「……ああ、まあ」
「それはよかったです。でも、どうかご自愛くださいね」
ニコッと微笑んで、「では」と去って行った。一瞬の笑顔にドキッとして、つい見惚れてしまう。
「……行くぞ」
低い声で現実に引き戻されてハッとした。先に行くアルスを慌てて追いかけた。
レントの病室に入る。アマリアの言う通り、彼は起き上がっていた。ベッドの中にはいたが、包帯などは見られない。おかえり、とフレイが手を振っていた。
「ただいま。レントさん、調子はどうですか?」
レントと目が合う。朱色のそれは、少しくすんでいるように見えた。
「……どう、なんだろな」
歯切れが悪い。そういやちゃんと容体を聞いていなかったかも。フレイがアマリアから聞いたことを話してくれた。
「頭蓋骨はヒビで留まっていて、壊れてはいなかったって。ただ、少しだけ記憶が抜けているところがあるの」
「えっ……」
「あ、でも大丈夫、私たちのことは忘れてないから」
そこはよかったけど、何の記憶を失ってしまったのか、そわそわする。
「……悪いんだが、俺が何でここにいるのか、教えてくれねぇか?」
……さて、どこから話せばいいのだろうか。因みに、フレイはまだ何も話していないという。悩んでいると、アルスが横で口を開いた。
「翡翠の王を討伐するためだ。何でここか、っていうのは、潜水艇で聞いた言葉……よりも、ミスティアから聞いた言葉が先だな。ヘイレン、任せた」
アルスに振られる。アビエル島で巨大な魚に飲み込まれたミスティアを助けるため、フレイとレントがそれを討伐したことと、ミスティアが残した言葉を伝えた。
すると、レントはこめかみを押さえた。
「海の底、波の壁、祠の核を、湖へ……。ああ、なんかあったな、そういうの」
思い出してきたみたいだな、と少し安堵した時、レントは腰に手を当てた。腰袋を探しているようだったので、フレイが棚に置いてあったそれをそっとわたした。
「治療するのに外さないといけなかったから」
「ん、ありがと」
レントは受け取ると、袋に手を突っ込んで小さな石を取り出した。巨大な魚から取り出せた、ミスティアが身につけていた翡翠の護石だ。
「その石に波の壁を取っ払う力があるって、精霊が言ってたわ」
翡翠の護石、波を消す。
翡翠の霧、囚われし者の御魂を消す。
身を捧げし者、罪の核を解き放とう。
罪の身を屠りし者、核を湖へ沈めよ。
この言葉を聞いて、またこめかみを押さえ「罪の核」と呟いた。
「翡翠の王と呼ばれていたヒトは、昔ヒトを殺した罪で処刑されたコア族ですって。名前は……」
「ジェドだ」とレントが言った。フレイは言葉を切って、黙って頷いた。
「この石を持って海底へ行く。で、ジェドの核を湖へ……その為に俺はここにいるのか」
レントの眼に、鮮やかさが戻っていく。
「ああ……アスール様に謁見する日、過ぎちまってるよな」
「それならボクが行ってきました。全部話してきたけど……2日後に王城前で再会して、海の底へ向かい、翡翠の王の討伐を図ることになりました」
「お、おう……そうか。……2日後か」
レントの顔が曇る。明日になって、しっかり動けるようになるとは思えない。かといって、置いていくわけにもいかない。ここはボクの力を使う時か……?
「……そもそも海底は火属性の魔法が無効になって使えねぇから、魔法戦になったら役にたたねぇ。フレイもそうだよな」
「ええ……。武器で殴るしかできないわね」
竜騎士たちは、戦力が半分くらいになることを懸念していた。ポセイルの騎士隊とアルス、ボクがいて、それでも相手を倒せるのかどうか。互角では勝てない。
「レントさんの頭蓋骨のヒビ、ボクの力で綺麗にしただけでは、力は戻ってこないですかね……?」
火の力が使えなくとも痛みが無くなれば……という考えは浅はかだろうか。
「……まあ、痛みが消えるんなら集中力も上げられてまともに動けるようにはなるとは思うが。だがよ、勝手に治療するのはまずくないか?」
「もちろん、アマリア先生に話はします!」
以前、勝手に魔法を使ってルーシェに怒られたことがある。また怒られるのも嫌だし、先生を困らせるのも嫌だ。勢い余ってそんな話までしてしまったものだから、フレイとレントは目を丸くして、それからくすりと笑った。
「ヘイレンって、正直よね。わざわざ怒られた話をしなくてもいいのに」
フレイに言われて赤面する。なぜ余計なことを言ってしまうのか、ボク自身もわからない。……とにもかくにも、アマリア先生に会いに行かなきゃ。でも、探すには苦労しそうだな……。
と、レントが枕元に置かれたものに手を伸ばし、ボタンを押した。主治医を呼ぶ通信機だった。ダーラムではそこで話ができたが、ポセイルではボタン一つで来るらしい。
「来るまでのんびりしてろ。茶でも淹れて飲むか?」
記憶喪失で不安げになっていたレントの表情が和らいでいた。しっかり取り戻せたみたいでホッとした。
フレイが淹れた緑茶をみんなで楽しんでいると、アマリアが入ってきた。和やかな様子を見て、緊急ではないですね、と胸を撫で下ろしていた。
「アマリア先生、レントさんにボクの力を使いたいんですが、いいでしょうか?」
2日後にはここを出なければならないことを続けて話すと、アマリアはなるほど、と少し間を置いた。
「ヘイレンさんの癒しの力を、レントさんに使うことを許可します。ただ、使い過ぎてあなたが倒れてしまわないように」
「わかりました。ありがとうございます!」
そういうわけで、レントには仰向けでベッドに身体を預けてもらい、頭部に淡い光をしばらく当てた。心地良かったのか、レントは次第に微睡んでいった。
小半刻(約30分)ぐらい経って、手を離してみた。光はぼんやりと残っているが、そのうち消える。消えた頃には、レントの身体は癒えている……はず。
「ひとつ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
アマリアが言いにくそうに、けれども思い切ったようにたずねてきた。
「あなたの『癒しの力』、一体どうやって会得したのでしょうか」
「えっ……それは……うーん……元々持ってた力、としか……」
そう、はじめからこの力は使えていたのである。と言っても、最初は少し使ったら倒れていたくらいに、自分の魔力への耐性は低かったのだが。
「こんな……傷をあっという間に塞いでしまう魔法なんて……世の医師が羨む力を持っていると知られたら……危険が及ぶかもしれません」
急に脅された。こき使われてしまうだとか、悪いヒトたちに捕えられてその魔力を奪われてしまうだとか。最悪は命を取って地肉を喰らう輩も出てくるのでは……とまで言われる始末。
滅びたはずの『テンバの力』だもんなぁ。
「……ですから、あまりこういう場所ではお使いにならないほうが良いかと。……今回は許可しましたけど」
「わかりました……。用心しておきます」
いつかはボクの力を狙ってくるヤツは出てくるだろう。自衛できる術を持っておいたほうがいいよね……。どうすればいいのかな……。考えがぐるぐる回って目も回りそうだった。
レントの様子はフレイが見てくれるということで、アルスの病室に戻った。夕食は食堂で取っていいらしく、一緒にそこで食べた。
今夜はアルスの部屋の、ゲストルームと呼ばれる小部屋で休ませてもらえることになった。そういやいつから寝てないんだっけ……気絶はしたけど。
「2日後、万が一レントさんの調子が悪いままだったら、護石を預かって海底へ向かう。フレイはレントさんのそばにいてもらって、ボクとアルスだけで王城に行く……って感じでいいかな?」
この提案に、アルスは黙って頷いた。
明日アルスが退院するので、この部屋ともお別れだ。ということは、宿を探して部屋を取らなければならない。明日は明日でやることがあるな。
少し頭の整理がついた途端、眠気が襲ってきた。今日はしっかり眠ったほうがいいな……。
「しっかり休め。昨日は寝てなかっただろ?」
「え、なんで寝てないってバレたの……」
「……ヤツれてる、顔が」
指摘されて、ほっぺを手で覆った。アルスが倒れた時も寝てなかったらしいのに、ヤツれてなんかいなかった。この差はなに!?
……まあいっか。
「よーく寝てくる。おやすみなさい」
軽く会釈して、ゲストルームに逃げ込んだ。
2日後。
朝食を済ませ、まだ少し鈍っている身体に鞭を打つが如く筋トレをし、シャワーを浴びて、カモミールティーを淹れて一息ついていた時、がたん!と物音がした。
ゲストルームから慌てて出てきた青年は、派手な寝癖をつけて息を切らしていた。寝坊した!と飛び起きたようだった。
「も、もう、お昼だよね!?」
カーテンを開けてみると、ポセイルに来た頃とほぼ同じ様子だった。街灯がついているかどうかが判断材料らしいが、それもついている。
「え、え、え、もしかして、もう……」
「まだ朝だ」
口をわなわな震わせているヘイレンは、「まだ……あさ……」と復唱していた。
「……早く支度しろ。待ち合わせの時刻が近い」
「……え?」
ため息をついてからカモミールティーを飲み干す。
「昨日、丸一日眠ってた。強めに叩いても起きねえから、先生に相談して、この部屋をもう一日借りた。よーく寝過ぎて身体痛めてねえか?」
「は……え?……ボク、そんなに……寝てたの……」
両手で顔を覆って項垂れる。そんなことしている場合じゃない。
「シャワーを浴びて覚ましてこい。寝癖も直せ」
「う、うん……」
とぼとぼと歩いてシャワールームに入っていった。
ややあって、部屋にレントとフレイが入ってきた。ヘイレンの魔法のおかげか、レントはしっかりと動けるようになっていた。
昨日、互いに身体を動かすべく体術の訓練というか、運動というかをして、「これならいける」とレントは頷いていた。見守っていたフレイも安堵していた。
「やっと起きたか」
シャワーの音が小さく聞こえている。もう一杯カモミールティーを飲む時間がありそうだったので、簡易キッチンに行って湯を沸かし始める。
「魔法を使わせちまったせいかねぇ……」
レントはヘイレンの様子を気にしていた。
「アスール様に情報を共有しに行った時、一睡もしなかったらしいぞ」
「マジか。てことは、アスール様も……」
「そういうことになるな」
王に付き合わされたのか、王が彼に付き合ったのか。後者だと大分迷惑をかけていることになる。
「どっかのタイミングで謝っとかねぇとな。そもそも俺が謁見要請したし。……ヘイレンにも、な」
カモミールティーを3つのティーカップに注ぎ、レントとフレイに振る舞った。しばらくして、シャワールームからヘイレンが出てきた。髪は綺麗に整えられ、表情もシャキッとしている。
「あ、レントさん、フレイ……」
「おかえり。さっぱりした?」
フレイが優しく声をかけると、ヘイレンはやや紅潮してぎこちなく頷いた。
「レントさん、大丈夫?」
「おかげさまで。助かったよ、ありがとな」
「よかった」
「んで……すまなかった、ひとりで全部やらせちまって」
「そんなの、気にしないで。むしろ、役に立てたなら良かったです。……寝過ぎちゃったけど」
そんな会話をしながらも、ヘイレンは手際よく支度をしていた。空になったティーカップを洗い、身支度を済ませる。
準備が整い、王城へ向かう。約束の時刻が目の前だったので、ヘイレンには簡易食料で腹を満たしてもらった。
待ち合わせ場所に着くと、騎士隊が整列していた。隊長テスタの姿はない。あの深傷は、魔力を持たない『普通のヒト』なら即死だが、半魚ジンはどうなのか。隊員に聞くのも何となく気が引ける。
王城の扉が開き、以前と同じく側近に囲まれてアスール王が出てきた。俺たちの気配を感じると、王は小さく頷いた。
「皆さまいらっしゃいますね。ああ、レント殿!お身体は大丈夫ですか?」
「ご心配をおかけしました、もう大丈夫です。謁見日に伺えず申し訳ありませんでした」
レントは最敬礼をした。王は回復されたのなら何よりです、と微笑んだ。
「そして……フレイ殿も、ようこそポセイルへ。お変わりないようですね」
「あ……はい。アスール様も」
お互いに微笑む。……和みの時間は一瞬だった。
王の「さて……」の言葉で、空気はガラリと変わった。皆の気が引き締まる。
「翡翠の王討伐作戦と題し、我々は騎士隊を2つ立てました。ひとつは別の場所でセイレーン族の長イスカと待機しています。その場所でアルティアと合流し、海の底へ向かってもらいます」
王は一呼吸置いた。
「これから海の底へと向かいますが、騎士隊たちは各々で。途中海に棲む魔物に気をつけて。波の壁の近くで待機してください。我々は別の方法で向かいます」
「はっ!」
騎士隊は一斉に承知の声を上げた。そして、テスタに代わって隊長を任されたであろう騎士の「行くぞ!」の一言で、皆駆け出していった。
さて、別の方法とは何なのか。潜水艇は運休中と聞いた。さすがに泳いで行くわけじゃないよな……。
こちらへ、と王に連れられて、一同は城に入った。ある場所の扉が開かれると、下り階段が出迎えた。側近が白く光る松明を持って先頭を歩く。王が続き、レントとフレイ、その後ろにヘイレンと俺、そして別の側近。
ある程度降りたら曲がりを繰り返す。王城の地下は、どこかに繋がっていそうだが……まさか。
やがて、階段が終わった。まっすぐ伸びた廊下を歩くと、重厚そうな扉が現れた。耳を澄ますと、滝のような音が聞こえる。
「この扉の向こう側に、波の壁があります」
マジかよ!?
「昨日、位置を確認して、建築を得意とする魔導士たちにこの地下道を作ってもらいました。この扉も封印の魔法をかけていますが、私の魔法で解けるものとなっています」
「アスール様、これ、開けたら波の壁に飲み込まれたりしませんよね?」
レントも同じ不安を抱いていた。というか、皆が思っていた。フレイもヘイレンも、小さく何度か頷いていた。
「それは……わかりません。ギリギリのところで扉を作ってもらいましたから」
「えぇ……」
レントは顔を引き攣らせる。
「ですが、護石をかざして扉を開ければ……きっと波の壁は払われましょう」
王が振り返った。レントを先頭に促す。
「レント殿、護石を。よろしく頼みます」
側近たちと王が退がってくる。自然と数歩退がる。扉の前で、レントが佇む。はあ、とため息をついていた。
腰袋から護石を取り出し、少しの間見つめる。ほのかに緑色の光を放っている。
「……もし、海水が押し寄せてきたら、俺たち全員溺死しませんかね?」
「この道には入ってこないように呪文をかけているはずですが、万が一そうなってしまったら私の魔法で皆さんをお守りします」
念の為に今そうして欲しいと思ってしまう。ともあれ、海水でも波の壁でもなく、核の守護者の攻撃があるかもしれないので、腰に差している短剣に触れておこうと手を動かした。
短剣が無かった。
……俺としたことが、装備品の確認を失念していた。どこへやってしまったのか。バルドの幻影か偽物かを退治した際に紛失したのだろう。
今更戻れないし、短剣が無いなんて言ったら、不安を増幅させてしまう。体術と闇魔法でどうにかするしかないと、腹を括った。
……アルス。
ヘイレンの声がした。しかも、頭の中で。思念だ。横目で彼を見ると、じりじりとこちらに寄ってきていた。
……短剣、持つところだけになっちゃってたのを、ボクが預かってるんだけど、それでも使える?
あの時、鉤爪の爪が壊れた。短剣の刃が無くなっているのも頷ける。残念ながら用無しだ。
……無理だな。でも、お前が持っていても邪魔だろうから、返してもらおうか。
そう思念を送ると、ヘイレンはそっとポーチから柄だけのものを取り出し、俺の左手に握らせた。
すまねぇな。
こっちこそごめん、言い忘れてて。
柄を右手に持ち替えた時、レントが護石を掲げた。王も手を上げた。翡翠色に眩く輝き、思わず目を瞑ってしまった。
きぃん、と耳をつんざく音からの、ゴゴゴゴという扉が開く音。滝のような音が大きくなる。潮の香りが鼻につく。
ばしゃーん!と水の音が響き、目を開けた。波が、水が、押し寄せてきそうなのに、来ない。海水は、光に消されていっているようだ。
レントが一歩、また一歩と進む。フレイは止まったまま動かない。ヘイレンが彼女を抜かして後をゆっくり追う。俺も続く。
「後方で待機してろ。魔物がここにきたら、王を守れ」
「……わかった」
フレイは武器を召喚して構えた。ひとつ頷いて、俺は歩みを進めた。
扉を越えた時、再びばしゃーん!と弾ける音がした。滝の音がすん、と消えた。波の壁が、打ち消された。
「……あれだな、核の守護者は」
目の前に見えるのは、小さな浜辺と、浜辺に佇む岩肌の洞窟の前でとぐろを巻く大蛇だった。




