第28話 現行犯逮捕
深夜、大麦畑は不気味なほどの静寂に包まれていた。雲が月を覆い、視界は最悪に近い。
畑の最深部、先日開通したばかりの主排水口の近く。草むらから、黒いマントを羽織った三人の男たちが音もなく這い出てきた。手にはそれぞれ、水路を再び埋め戻すための頑丈なスコップと、土留めを破壊するための鉄製の大型ハンマーが握られている。
「……よし、誰もいないな。噂通り、あの小娘も平民どもも館で泣き寝入りしているようだ」
「さっさとこの水路を叩き壊して泥で埋めろ。二度と使えないようにな」
男たちが勝ち誇ったような低い笑い声を漏らし、ハンマーを大きく振り上げた、その瞬間。
チリン、チリリン!
闇を切り裂くように、鋭い金属音が鳴り響いた。男たちが仕掛けられた細い侵入検知用の糸(鳴子)に足を引っ掛けたのだ。
「な、なんだ!?」
「バグを検知! みんな、やれ!」
近くの茂みからテオの鋭い声が響くと同時に、夜の荒野に異変が起きた。
ボウ、ボウ、ボウ! と、畑を取り囲むように、数十本もの松明が一斉に燃え上がったのだ。
「何だこれは……待ち伏せか!?」
男たちが慌てて武器を構え直すが、すでに遅かった。松明の明かりの中に浮かび上がったのは、鍬や棍棒を握りしめ、怒りに目を血走らせた三十人以上の大人の農夫たちだった。その包囲網は、私の計算通り、男たちの唯一の退路を完璧に塞いでいる。
「て、てめえら、ただの平民の分際で、我々に逆らう気か!」
工作員の一人が威嚇するようにナイフを抜いたが、男たちの先頭に立つ大柄な農夫が、それを鼻で笑った。
「寝言言ってんじゃねえぞ、泥棒猫が。俺たちの畑をこれ以上めちゃくちゃにされてたまるかよ!」
「お前らが井戸を汚したせいで、うちのガキがどんだけ怖がったと思ってんだ!」
怒号とともに、農夫たちが一斉に距離を詰める。夜の闇を利用した隠密工作員など、地の利を知り尽くした圧倒的多数の現場のマンパワーの前には無力だ。
数分と経たないうちに、鈍い打撃音と短い悲鳴がいくつか上がり、三人の工作員は武器を取り上げられ、地面に組み伏せられた。
「……完璧なログが取れたわね」
松明の列が割れ、私とアルフレッドさんがゆっくりと前へ進み出た。
地面に顔を押し付けられ、泥まみれになった男たちを見下ろし、私は冷たく唇の端を上げる。
「夜遅くに他人の敷地内で土木工事だなんて、ずいぶんと熱心な勤勉家ね。でも残念。このエリアのセキュリティ管理は、私の管轄よ」
松明の炎に照らされた私の顔を見て、捕らえられた男たちの顔が恐怖で急速に青ざめていった。




