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「お前は口減らしだ」と婚約破棄された私が、前世の知識で領地を最適化したら、なぜか全員に溺愛されています  作者: 秦江湖


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第20話 大改革の号令

「これより『北領冬越しプロジェクト』を開始します。各自、マニュアルの担当セクションを確認してちょうだい!」


翌朝、夜明けと同時に大麦畑の前に集まった領民たちに向けて、私は声を張り上げた。


昨日までの諦めムードはどこへやら、集まった男たちの手にはしっかりと鍬やスコップが握られている。女たちは家々から集めた木灰を満載した大八車を引いており、子供たちは私の作った「工程管理図」を誇らしげに掲げていた。


大人のマンパワーが加わった現場の熱量は、菜園の比ではない。


「第一班は西側の本流へ続く排水溝の泥上げ! 第二班は掘り起こした土の運搬! 第三班は菜園チームの指揮のもと、空いた区画から順次、木灰の散布と耕起をお願い!」


「応よ! 任せときな、お嬢様!」


大柄な男の野太い声を合図に、一斉に作業が始まった。

ザク、ザク、と何十人もの人間が同時に土を掘り返す音が、荒涼とした大地に力強く響き渡る。


アルフレッドさんは、私の隣でストップウォッチ――の代わりとなる砂時計を片手に、鋭い目で全体の進行速度(タスクの消化率)を記録していた。


「リーゼロッテ様、第一班の泥上げ、想定の1・2倍の速度で推移しております。これなら冬の到来前に、確実に本流まで水路が繋がります」


「素晴らしいわ、アルフレッドさん。過去のボトルネック(詰まり)が解消されれば、データも水も一気に流れるようになるものよ」


私は大きく頷き、自らも鍬を握って前線へと赴いた。

相変わらず私の身体は体力が底辺で、すぐに息が上がって腕が震えだす。けれど、今の私には、背中を預けられる頼もしい「社員(領民)」たちが何十人もいるのだ。


「お嬢様、無理すんじゃねえぞ! あんたは俺たちに指示を出すのが仕事だろ!」

「そうだ、泥仕事は俺たちに任せろ!」


作業中の男たちが、泥だらけの顔でニカッと笑いながら声をかけてくれる。

その温かい言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなった。


「ありがとう。でも、私もこのプロジェクトの総責任者リーダーだからね。一本でも多くの泥を掘るわよ!」


私がガッツポーズをして笑うと、領民たちからどっと歓声が上がった。

誰にも必要とされず、「口減らし」と切り捨てられた最果ての地。けれど今、ここには確かな活気と、未来を掴み取ろうとする全員の強い意志が満ちていた。


「よし、全員で一気に黒字(勝利)を掴みに行くわよ!」


大麦畑に、この領地で生きるすべての人間のときの声が響き渡る。


――その頃。

王都の広大な執務室で、王太子カイウスは届けられた一通の報告書に目を落としていた。


送り込んだ目代からの、ひどく狼狽した筆跡のファーストレポート。そこには『北領に追放されたリーゼロッテが、不穏な計算術を使い、領民を扇動して大がかりな土木作業を始めている』という、奇妙な内容が書き連ねられていた。


「……リーゼロッテが、領民を扇動?」


カイウスは美しい金色の瞳をわずかに細め、かつて冷酷に切り捨てた「不要な道具」の顔を思い浮かべた。


「魔力も低く、病弱なあの女が、一体北領で何をしているのだ……」


冷徹な王太子の胸に、小さな、けれど確かな『興味の芽』が生まれた瞬間だった。

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