第14話 数字が証明する成果
「リーゼ! 村のやつら、みんな熱が下がったぞ!」
『衛生管理オペレーション』を開始して四日目の朝、テオが弾んだ足取りで館の裏庭へと駆け込んできた。その顔には、ここへ来た当初の陰鬱さはひとかけらもない。
「本当? 良かったわ」
「ああ! あんなにうなされてたあいつらも、今朝は自分から起き上がって粥を食ったんだ。大人たちも『本当に呪いが消えた』って大騒ぎしてるぜ!」
テオの報告を聞きながら、私は胸の内で安堵の息を吐いた。
手洗いと飲用水の加熱沸騰という単純な予防策だが、徹底すれば確実に結果は出る。前世のプロジェクト管理でも、基本のチェックリストを愚直に回すだけで、大半のエラーは未然に防げたものだ。
「それだけではございませんよ、リーゼロッテ様」
アルフレッドさんが、いつもより心なしか誇らしげな笑みを浮かべて菜園の奥を指差した。
「ご覧ください。私たちの『第一生産拠点』が、最高の見頃を迎えております」
促されて視線を向けると、そこには、青々と力強く茂った蕪の葉が一面に広がっていた。土の隙間からは、丸々と白く太った蕪の頭が、今にも弾けんばかりにひょっこりと顔を出している。通常なら倍以上の時間がかかるはずの北領で、信じられないほどのスピードと大きさでの初収穫だ。
「よし、予定通りの成果ね。テオくん、収穫作業を始めましょ。傷をつけないように、丁寧に引き抜いてね」
「おう! みんな、やるぞ!」
テオの号令で、集まった子供たちが一斉に畑へと入っていく。
「うわ、でっか!」「抜けたぞー!」と、あちこちで歓声が上がった。泥にまみれながら、小さな手で次々と立派な蕪を収穫していく子供たちの目は、どれも誇らしげに輝いている。
その様子を、柵の向こうからじっと見つめている大人たちの姿があった。
三日前、集会所で「そんな面倒なことで呪いが消えるか」と私を鼻で笑った年配の男たちだ。彼らは、熱を出した子供たちが全員ケロッと治ったこと、そして目の前で次々と収穫される見たこともない大ぶりの蕪を前に、完全に言葉を失って硬直していた。
「な、何なんだ、あの令嬢は……。本当に、北領の呪いを解いちまったのか……?」
「呪いではなく、ただの現状分析と適切な処置(最適化)ですよ」
私が大人たちを振り返って淡々と告げると、彼らはビクッと肩を揺らし、それから深く頭を下げた。その目には、もう不信感や見下すような色は一切なく、確かな敬意と畏怖の念が宿っていた。
「これで、現場の信頼は完璧に掌握できましたね、お嬢様」
アルフレッドさんが私の隣で静かに微笑む。
「ええ、数字と実績に勝る説得力はないわ。さあ、アルフレッドさん、厨房を借りるわよ。この収穫した蕪を使って、みんなで最初の『ご褒美』を分け合いましょう」
私は抱え上げた蕪の、ずっしりとした確かな重みを感じながら、厨房へと歩き出した。




