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64 不可解な警告



「行くぞ、キル」


僕は攻撃の許可は出さずに彼らの後をついて歩くことにした。

もちろん、キルバーンは僕に疑問を投げかける。


「痛い目に合わせないままで、よいのですか?」


「彼らはずっと無抵抗だった。君の攻撃をまともに浴びて猶も反撃しないんだ。抵抗しない者たちを背後から襲うつもりなのか?」


「……むう」


不服そうに唸る。

しかし、その状況には納得を示してくれたようだ。

デルタンの魔導石は女盗賊に命じて、すでに本人に返納した。


僕は、キルバーンにどうしてこうなったのかを伝えたいと思った。


「すこし、経緯について話をしよう」


「わかりました」


キルバーンが僕の元を去ったのは、五日前のこと。

うるさいお守り役が居なくなり、僕は卒園間近の学園内で例によって貴族を笠に着た振舞をした。まだクズのラルクで問題を起こし、停学になった。


「停学程度で済んで、なによりですな」


「貴族階級を行使できない学園ルールだから、父上に救われたよ」


その後に別居追放されて気落ちしたこと。

マチルダと黒服と新任の魔法指南役と半日過ごしたこと。


「君の後釜に来たのは、15歳のエルフの娘だったよ」


「ラルク様。エルフだとしても、上級となれば、ダークエルフですな。坊ちゃんが簡単に気をお許しになるのだから、さぞや美形だったのでしょうな」


「おい、冷やかすなよ。……ダークエルフ、そんな風には見えなかったけど」


そして、夜明けの朝に変わったスキルに目覚めたことを告げた。


「なんと鑑定能力に無限収納……ですか!」

「アイテムを1回で極限まで強化できる上に、スキルになるんだ」


生き地獄の生活が嫌で、家出のチャンスを伺いながらルディと買い物に出た。

武器屋と防具屋で入手した杖をめぐって、浅瀬の洞窟やヤナコドムの森に足を延ばしたこと。


そして杖の検証のため侵入したばかりの森で襲撃を受けたと。

ルディが楯となり、窮状を一時的に脱するも大勢の追手に囲まれて絶体絶命。

そのときに出会ったのが、いま目の前を歩く彼らであると。


攻撃に恐怖しながら焦る余りに手持ちの荷物をすべてスキルの餌にしたこと。

その場で入手していた旅人の服がその後の窮地を救ったことも。


襲撃が長兄カミルたちの陰謀であるとの確信もあり。

自分の弱さ故に家に戻れず、彼らと行動をともにすることにしたのだと。


「……なんとも奇遇な巡り合わせですな」


その後、彼らの持つ荷馬車に揺られて遺跡のお供に誘われたこと。

強くなりたいという自分の意志で引き受けた。


「この遺跡の調査を無限回復で手伝うことになってね。レベルもこんなにあがったんだ。苦手だった毒虫も克服したんだよ、キル」


それはとても嬉しいことで、つい自慢げに語ってしまった。

僕の表情は絵に書いたように晴れていたようで。


キルバーンは微笑ましく我が子を見守るように顔を綻ばせる。


「ラルク様……随分と明るくなられましたな。それに何だか逞しくも感じます」

「そ、そうかな? エッへへ」

「ほかにも何か良いことが、お有りだったのではないですか?」


キルバーンはそういって、左前を歩くファルを一瞥した。

幼少より仕えてくれたお守り役の君にはお見通しか。

ずっと欲しかった友達のような存在がファルなのだと。


ここまで打ち明けると、キルバーンはやれやれという表情をして、


「それでは、この攻撃は逆効果ではありませんか?」

「ためし過ぎちゃったかな。ファルにはちゃんと謝ろうと思ってる」

「しかし、ラルク様。スキルの警告は無視出来ませんぞ」


そこなのだ。

頭を抱えるのは。

ボンちゃんの言うことは『今は、だれも信じてはならない』だから。


「まったく、不可解な警告をしてくれたものだよ」

「そこに間違いはないのですか?」


システムだから間違いようもないのだと考えている。

僕は「たぶん」といい首を縦に振り、間違いという指摘の否定をした。


(だが、ボンちゃんもまだ……生命体までは鑑定が出来ない段階だと述べた。そこのところは詳しく聴かねばと思う。どうやって彼らを魔物判定したのか)


人間でない確証は得られていないが「エンシェントボム」という存在が気になる。

根拠が解らないが、インプの上位種のようなものだと。

その魅了の能力鑑定なら出来ていたのかもしれない。だがそうなると僕はいつ魅了されたのだ。


「僕の身もその後、受けたダメージをスキルに変えられたし。スキル自体が超越している実感はモブ化の時点で、すでにあるから。そうまで説明するのなら信じるに値すると判断を下したんだ」


「では、そのスキルに早急に確認する他はないですな。攻撃できぬならほかの手立てを講じる必要がございますな」


「そうなんだけど。彼らは質問に答えなかった。人間ではないのかと問われれば普通は『人間以外の何に見えるというのか』と即答するだろ? それをはぐらかすのだ」


「たしかにその点については、儂も立ち会っているから合点がいかぬ。どうやって答えさせますか。ラルク様をPTから外す考えも見せてきましたぞ」


説明本の不可解な警告が、この場の空気を大きく乱した。

本心は、ファルたちと喧嘩別れをしたくはなかった。


臓物遺跡の出現のタイミングも不可解だ。


中に入ってからも、下層が生み出される条件まで説明された。

それも鑑定能力で視ているわけだから。

女神から授かった転生スキルでだ。間違いなどない。


「なにか他の手立てか。なくもないけど──そいつから試して見るか」



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