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63 六式護衛部隊



「俺の名は、ユリオル・ケフィン・アスバルドだ」


「ユリオル・・・ケフィン・アスバルド。はて、どこかで会ったか? いやそれより、お前は冒険者か? どこの出身で所属隊の名はなにかと訊いておるのだ」


「アスバルドの者だ。六式ロクシキ魔術、地の異器イギの使い手。および六式護衛部隊百騎士長。この者たちは冒険者だが、今はこの隊のまとめ役を買って出ている」



ユリオルは護衛部隊が自分を含めて3人で、残りの者が冒険者だと答えた。


キルバーンの求めに対し、ユリオルが素性となる情報を明かした。

僕は少し驚いた。

名前しか知らなかったが、聞けば聞くほど不思議が生まれることに。

一見すると普通のことだが、キルバーンの反応を見るに納得がいかない様なのだ。


キルバーンの顔つきが一変する。

思い当ることとそうでないことに思慮を巡らしている様子。

相手を見据えながら、時折ゆっくりとだが視線を泳がせている。


そして、ひとこと漏らす。



「六式魔術……地の異器イギ……だと?」


「どうしたんだ、キル。驚くことなのか。それについて詳述はできるか?」


「はっ、ラルク様! 以前、お教えしたことを覚えておいでですか?」


「……魔術のことか?」



キルバーンは、ほっこりした顔つきで頷く。

僕が彼から教わることと言えば魔法に関することだけだ。

僕は顎に手を添え、首をかしげる。

記憶の底にしまっていたものを絞り出す努力のために。


六式か。

それは魔法書に記してあった古い知識でもあり現代魔法の基礎となるもの。

キルバーンは、六式について神妙な面持ちで僕に尋ねた。



「六式を、いくつ言えますか?」


「えっと、たしか7つだね。魔法は零から数えるため六式目で7つです」


「ご名答。──では異器については、いくつ存じておいででしょう?」


「うーん。3つかな。「地の民の異器」と「空の民の異器」と「砂の民の異器」ぐらいしか思い出せないけど……」


「それで結構です。あやつは「地の民の……」、始祖だと名乗りおったのですじゃ」


「あ、そうだ! たしか……そんな意味だった」



異器というのは始祖や起源を意味するものだ。

つまり、オリジンというものだ。


そして異器も六式と同等の数が存在する。

双方を例えると、鍵と錠前のような関係になる。


(それにしても、ユリオルが地の民とはどういうことなのだ)



「……キル。始祖なんか居ないだろ。地の民って、現存していなかったんじゃないの?」


「ええ、まあ。遥か、いにしえの大地。そこに住んでいたというのが地の民です」


「では異器の使い手とは、どういう意味なんだ?」


「なぜわざわざ、奴がその言い回しをするのか。単純に六式は魔法陣で、異器の使い手とは我々と同じく魔法使い、という意味でございますのに」



キルバーンが僕にその説明を言い終えるタイミングで、護衛隊のデマンが前に出てユリオルと並び、キルバーンに向けて語気を強めていう。



「おい、老兵! 貴様が何者かは関係ない。ユリオル様は護衛部隊の長だと名乗られたのだ。敬意を表するのが先だ。それが貴族への礼儀であり、人の筋道であろう!」


デマンは興奮気味で憤りを見せている。

確かに敬意は必要だ。

相手は王様の護衛部隊だから。

この世に護衛部隊と言えば「王様の護衛部隊」しか存在していない。

それは周知の事実で、キルバーンも心得てはいるが。眉根をを寄せ、頑なに口を閉ざす。



「……キル。そこは彼が正しいのでは」


「よろしいのですか? 敵対者に首を垂れても……」


「僕は、スキルの警告に従い、一度は彼らとPTを組んだが怖くなり困惑して攻撃の手を加えてしまった」


「では、ここは折れるところではございません。ラルク様」


「僕だって、君に尋ねて臓物遺跡が日常的に出現しない怪しい場所との判断を強めたから、彼らへの疑いは晴れないままだよ。でも──」


「何でございましょう? ラルク様……また多勢に無勢になると臆病風が吹いて黒を白と言う病でございますかな?」


かつての嫌味な物言いを見せるキルバーンに対して、僕は少しカチンときた。


「そんなことない! 僕も強くなったんだ! クズ呼ばわりはするな!」


「ほう!」


「彼らが怪しいことに変わりないが、彼らは一度たりとも僕を脅かしていなかった」


「ラルク様、言葉を返す様で恐縮ですがスキルとは己も同じですぞ、それを疑ってはなりませぬ!」


(キルはボンちゃんと同じことを言ってくる。今回は徹底して味方なんだな)



すると、アビリオンがそわそわしながら、会話に割って入って来た。



「ここで揉めるのは得策ではないのよ。ラルクちゃんも、キルちゃんも立ち止まらないでもらえるかしら。お願い、歩を進めてちょうだい」


「そうだ、おまえら喋り過ぎだぞ。もっと静かにして移動しながらやれよ!」


デルタンの指示で皆がまた歩き出す。

転移台に向かって、移動を始めた。

ユリオルは僕らの方を向いて、まだ歩き出さずにいた。

そんな彼にデマンが助言をする。


「ユリオルさま、先を急ぎましょう! 我々に課せられた任務を優先しましょう。坊やには転移で外へ出てもらってもいいのでは? あの方への報告を急ぐべきです」


「わかっている」



下層で誰かが待っているのか。


デマンは僕をPTから外してもいいとの意見をユリオルに伺い立てる。

この馬鹿げた騒動を振り返るように呆れ顔で言った。


彼らにはじっくりと僕の誤解を解いている暇などなさそうだ。

ユリオルもゆっくりと背を向け「ラルク移動するぞ」と言い残し、歩き出した。


勝手に移動していく彼らを目で追い、キルバーンは僕に攻撃の許可を求めて来た。



「それしか、あ奴らは耳を傾けるつもりがない様です。ラルク様、ご決断を!」


「わかったよ、キル」



転移台にたどり着く前に、けりを付けてやる。



もうだれも興味をなくしてしまったんですね。ラルクさんかわいそう……

読みに来て下さりありがとうございます。完結めざします。

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