61 僕は悪くない
ユリオルに説明を迫られた。
彼は明らかに憤りを感じている。
鋭い眼光を見せている。
出会った頃の包み込むような陽気な眼差しは、そこにない。
だが僕も言いたいことがある。この際はっきりと言ってやる。
「──僕は、悪くない!」
その言葉が身勝手なものに聞こえたかもしれない。
皆が目を見開いて、注目した。
氷漬けにされたデマンたち5人も、目を真っ赤にして睨むようだ。
ユリオルが皆の気持ちを制するべく、彼らに手を掲げた。
「なるほど召喚術か。俺たちを本気で襲った理由を聞かせてもらおうか?」
呼び出した者たちでさえ、そこは謎の部分だ。
僕が問いに答えようとしているのを感じとったのか、キルバーンは一歩下がる。
老兵が追撃の意思を否定すると、皆の視線は一気に僕だけに集中する。
これ以上は、とぼけるだけ無駄だと思った。
「スキルが僕に危険を促してきたんだ──」
ファルがずっと僕の腕を掴んでいるもので、だれも反撃まではしない。
話を聞こうという雰囲気になった。
傍にいたファルが僕にいう。
「きみのスキルは不思議なものがある。警告までしてくれるなんて」
この場の空気を和らげようとしてくれたのか。
シオンも口を開く。
「きみも鑑定眼の持ち主だ。わたしたちのなにが危険だったんだ?」
見えたのだろう、と理由を知りたがる。
デルタンは女盗賊を指さし、盗んだ魔導石の返還を求めた。
そして僕を諭す様にいった。
「もう敵意を向けるな。ユリオルさまも話を聞いてくださるのだから」
確かに今の状況からだと、僕だけが悪い。
このままだと悪役のラルクと何ら変わりない。
「質問に答えると同時に僕のほうも質問に変わりますが──」
「構わないから、話せ」
ユリオルの声は一段と低くなり、凄むようでもある。
こういうタイプの人は仲間を思いやり、胸を熱くする。
「ユリオルさん、あなた方が魔物であるという警告を受けたのだ」
「……はっ!? どういうことだ? 俺たちは、君に魔王軍と戦っていると説明したはずだが。その俺たちがなぜ魔物だなどと」
今、明らかに目を泳がせた。単に心外で驚いただけか。
だが、なにかを隠しているんだとの確信が僕の中に芽生えた。
では質問をさせてもらう。
「どういうことか、など僕にもわかりませんが。ボンちゃんはこう言ったんです。ヤナコドムの森であなたたちと僕が接触したときに、はじめて『臓物遺跡』は出現したんだと、ね?」
僕の答え方が的確で彼らの胸の内には効果的だったようだ。
僕の腕を掴むファルの手から力が抜けたように感じた。
質問の答えが、質問に変わるといった意味を理解できたのか。
彼らの表情に緊迫感が浮かんでいる。
何かしらの動揺が走っているのがよく分かる。
引き続き、ユリオルに問う。
「あなたは僕に言った。魔王の復活の祭壇が最下層にあると。そこにダンジョンの守護者がいると。僕は駆け出しの冒険者なのに、そんな危険な場所へ僕を誘い、しかもレベリングを応援した……」
それを聞いて、ユリオルはすかさず反論する。
「誘った理由もあのとき述べたはずだし、君の身の安全は俺たちが約束する条件だっただろう。請けた任務が辛くなったのなら抜けてもいいのだ、それをこんな……」
弁明している者の顔ではない。
今改めて聞くと、僕が確認もせず、軽率な行動で皆を気づ付けた酷い奴。
そう聞こえる。
「では、そこは省きましょう。僕を強くしたら、最下層の守護者と戦わせて討伐させるつもりでしょう?」
ユリオルは厳しい表情を改めた。
僕を口説くように言った。
「そうだ、それが目的だといった。そしてちからを合わせて遺跡を封じるんだと」
肝心なところは言わないつもりか、と僕が憤る。
「その守護者を倒したら、逆に何かの封印が解けて、邪悪なものが世に解き放たれるんじゃないですか?」
「いったい何の話をしてるんだ!?」
「それじゃ、これが最後の質問です」
「まだ、なにかあるのか? いい加減にしないか」
「こっちだって命がけなんですよ! ちゃんと聞けって!」
話を聞かないなら、攻撃しかないと告げた。
傍にいたファルが、血相をかえた。
僕が声を大にしたから、宥めようと口を開いた。
「落ち着いて、ラルク! オイラたちは魔物なんかじゃないよ。きみのスキルを疑うわけでもないから、落ち着いてほしいんだ」
落ち着けというので、頷いて、深呼吸をして見せた。
キルバーンも聞き耳を立てていることだし、確認をさせてもらう。
「だったらひとつだけ、僕のいう質問に答えて見て。
ファルたちは、『エンシェントボム』なんでしょ? 人間じゃないんでしょ?」
人間ではない、そこの部分だけでいいから。
僕は、強くそう言い切ったのだ。「そっちこそ生身の人間か」と。
彼らは沈黙をして、言葉をためらった。
顔面蒼白でなぜか誰も答えないのだ。
その反応をやめてくれ。とも思った。
答えを聞くのが、なんだか恐ろしくなってくる。




