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58 見知らぬ戦い



女盗賊らはおなじ盗賊を警戒しながら狙いを定めた。


ユリオル、アビリオン、デルタン。

その前衛の3人を狙いに行った。

アタッカーの3人だ。

ファルとシオンと他には目もくれず。



「……くっ!」

「……ちぃっ!」

「ふん、こっちは頂きよ!」



三方向へ走り出した彼女ら。

成功を収めたのはハル、一人だけだ。


左手にいて、シオンの前を歩いていた魔法使いのデルタンの灯りを奪った。

背後を取とる手際のよさ。

魔導石に手を掛けた動作は目にも止まらぬほど早業。


一人分の灯りが消えたことで、ようやく異変に気付く彼ら。


突然現れた盗賊に意表を突かれた。

そんな表情をしている。



「だ、誰だ! なにをする!」



デルタンだけでなく複数人が同時にそう叫ぶ。

間もなく、状況を掌握すべく目を細めていたシオンが指摘する。



「お前たちは、オークの階で出会った女盗賊たちではないか!」

「なに?」

「どうやってここへ舞い戻ったのだ!?」



アビリオンが驚きの声を上げ、ユリオルが彼女らに疑問符を投げかけた。


シオンは鑑定眼であの時の盗賊だと見抜いた。

彼の目にも「オークから救出した女盗賊」とでも鑑定結果が出たはずだ。


だがシオンの目利きはそれだけではない。

シオンは女盗賊らに鋭く問う。



「お前たち、生身ではないな。誰の差し金で動いているのだ?」



どうやらシオンは彼女らを操り人形の様に見ているようだ。

侮れない眼を持っている。



「臓物遺跡の意思ってことか?」



ファルがシオンに意図を尋ねる。

魔道チップでも埋め込まれたゴーレムのようだと疑ったようだ。


その言葉にアビリオンがピクリと反応した。

前傾になり、素早く剣を抜いた。

姿勢を低く構えて前方へと素早く踏み込む。

彼女らに刃先を向け、斬りかかる。



「そういう類いか!」



ユルオルも条件反射で抜刀し、討伐に移行した。

仲間は円陣を組み、女盗賊らを逃がさぬ態勢に突入する。

このままでは彼女らは瞬殺を受けてしまう。


物を盗られたからには逃がす気はない。



(出番だ、キル。彼女ら以外の者が敵対者だ。殺さず存分に打ちのめせ!)


キルバーンという男に命じ、解き放った。


アビリオンほど長身でないものの、筋骨隆々の戦士のようなガタイだ。

今度は大男の出現だ。


彼らはこの階の魔物の出現として捉えたのか、何も言わず戦闘態勢をとった。

僕は彼らの、つまりファルたちの回復の援護をやめた。


うんと後退し、自分の身だけ防御回復する。

自分だけにしないと呼び出したのが僕だと知られる。


女盗賊たちまで援護するかは分からないが、キルバーンの猛攻がはじまる。

危険を察知したのは護衛部隊。



「女盗賊どもは我らにまかせて、そっちのデカブツを討ち取ってください!」



護衛部の二人がユリオルに声掛けする。

盗賊は盗賊同士。


盗賊の対決は5対3。

レベルも護衛部隊のほうはLV90だ。

あの3人には厳しいかもしれない。


(キルなら僕が女盗賊にバフ掛けしたことなどお見通しだろ、そっちも叩け)


キルバーンは左手を軽く上げ、かなり前方にいる5人に魔法を飛ばす。

特大の氷塊を5人の盗賊の頭上に展開した。



氷塊大槍ブリザードランス!」



突如彼らの頭上に氷魔法が出現した。

ドハ、ガハ、イヒ、デマン、ワキの5人に特大の氷の槍が落下した。


その攻撃を外すわけもない。

彼らが躱せるはずもなく、その身に多段ヒットした。


5人は凍結にも遭い、大ダメージを喰らう。


ファルが急いで回復にあたる。


そのような処置には見向きもせず、キルバーンは前衛たちにもぶっ放した。

その攻撃も感情なきマシンのように何の容赦も遠慮もなかった。


キルバーンは右手を軽く上げ、人差し指と中指をそろえて立てる。

その指先をひょいとユリオルに向けた。



獄炎精霊イフリートッ!」



魔法名だけ呼び終えるとユリオルの頭上にも現れた。

あれは炎の魔人とも呼ばれ怖れらる。


火柱、火炎の渦、爆風などありとあらゆる炎攻撃をもたらす。

ユリオルは渾身のエネルギーを全身から漲らせる。


全力の防御を必殺技のごとくに発揮した。

全身が銀色に輝きを放つ。



「うおおおおっーー!!!」


「ふんっ、パラディンの鉄壁ガードなど、何の意味も持たぬわ!」



ユリオルの全身全霊のガードも何分も続くわけでもない。

そのガードが緩み切ったとき、断末魔の叫びに変わる。



「あがががががぁぁ────ッッ!!!」



ユリオル自身も高い回復力を持っていただろう。


ファルも回復の加勢をしているだろう。

しかし、人間の回復力など通用し切らないのが魔人クラスの魔法なのだ。


彼こそが、この世の魔法を極めつくした男。

魔法評議会最高顧問だった、キルバーン・レオリウス三世。

齢60。


僕が追放処分にした、前任の魔法指南役だ。



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