57 はじめての召喚
それは【呼び出し】という名の召喚スキルだ。
人生で最初の召喚をする。
女盗賊を三名ほど呼び出すことに決めた。
召喚という僕の憧れとは遠い気もする。
異世界ならドラゴンや獣人といった印象を持っていた。
呼び出すと同時に、ステータスウインドウが開く。
一旦ここに情報として表示されるようだ。
呼び出しに応じたことを示す項目が開いた。
『召喚されし者』という項目が目に入る。
そこには、「オークと女盗賊」とあった。
その折の女盗賊たちだと一目瞭然だ。
ここでのやり取りは念話だ。
僕と彼女らだけの会話で、外部に漏れる心配はない。
「お呼びになりましたか。貴方様に命を救って頂いた盗賊です」
「ラルクでいい。君たちの名を聞いてなかったな?」
「ラルク様、私たちはラルク様の魔力により再構成された造形物なので、名などありません。ラルク様が名付けて下さるなら喜んでお受けします」
つまり、出会った経験がデータとなった。
それを魔力で再構築して生成された人物ということか。
使い捨てのNPCみたいな存在か。
なるほど勉強になった。
当の本人が来るわけではなかった。
それならこの先、気軽に召喚ができそうだ。
魔物だけの召喚ではないため、変わり種のスキルだ。
なるほど、それが『呼び出し』か。
「そういうことなら、左からハル、ナツ、アキと名付ける」
「ありがたき幸せです」
いま僕はステータスウインドウを開いて彼女らと念話をしている。
ゲームでいえば冒頭のキャラメイクに当たる。
この子らはもともと三人いたから容姿も異なるけど。
もとの三人の盗賊に準拠して生成されていた。
レベルは出会ったときのもののようだ。
このSランクの遺跡に忍び込んで来た猛者だ。
LV50クラスの盗賊になる。
そこそこ強いと感じた。
だが、ジョブが盗賊だ。
戦士ほどのパワーはない。
いや、盗賊なら敏捷性に優れているから素早さを活かせるかも。
「初手は、あいつらの腰元を狙い、灯りの魔導石を盗み取ってくれ。暗くなれば敵を視認する精度が落ちる。さすれば命中率も下がるはず」
「かしこまりました」
「お任せください!」
「灯りを盗むなど思いもよらぬ作戦です」
エイム。
敵を正確に素早く討ち払う技巧だ。
剣も魔法も矢じりも命中させるには必須になる技術だ。
彼らも必死に鍛錬をしてきたはずだ。
それを低下させるのが狙いだ。
「体力は1000もあるんだな」
「褒めて頂き、恐縮です」
だけどそれじゃ、アビリオンやユリオルに強打されたらいくらも持たない。
「お前たちを失いたくない。バフをかけておくよ」
防御結界を彼女らにも施してやった。
ここで限界を超える回復というのを試してみたい。
「それを頼む」
すると彼女らの最大体力が、10倍に増加された。
そういうことか、じつに面白い。
「わあ! すごいですわよ。途轍もないちからがみなぎってきたわ!」
「よし、これで行くか。解き放ったらすぐに取り掛かれ!」
ウィンドウを閉じるとその場に解き放たれた。
彼女らは命に従い、番犬のごとくに走り出した。
彼女らのパワーでは、あいつらを打ち負かせはしまい。
そうかといい、僕の攻撃は脅威過ぎる。
倒し切るのではない。
目的を吐かせたいのだ。
何者かを名乗らせてやる。
そのためにもう一人、『呼び出し』をする。
護衛部隊といえども、度肝を抜かれることは間違いない。
「出でよ! キルバーン評議長っ!」
「ら、ラルク様ではないですか!?」
「キルバーンよ、僕に従う義務はまだ残っているか?」
「……義務はございます。まさか、あなた様に召喚されようとは…」




