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45 杖が強ぇ!



ヒール役の2人が遠くを走る。

つまり僕たちのことだ。

どこかの部屋で呼び声が聞こえてくる。

それよりも床に叩きつけられた衝撃音があった。

ズン、ズンっと低い音は地響きのようだ。



「ファルさま? あれはまさか……ですよね」


「ああ、たぶん。出やがったみたいだね!」



出やがったみたいの意味は、紛れもなく第一層の親玉のことだ。



「はやく合流してあげなきゃ。この層のレベル帯って分かってるんですか?」


「さっきのリッチだとLV56程度だけど。親玉だと80はいくよ。でもオイラたちはこのまま転移台へ続く、分岐点の部屋へ急ぐんだ」



ファルが皆の作戦とは異なる行動を指示して来た。

一体なぜだ。



「ユリオルに集合するように言われていたじゃないか?」


「まあ、そうなんだけど。ヒーラーはもう1人いるから向こうは大丈夫さ」


「えっ、だ、だれなの? 回復薬でも投げ合うつもりなの?」


「そうじゃないよ。ユリオルさんがいるから大丈夫なのさ」


「あの兵装備の隊長さん? 確かに強そうな人だけど……」



ユリオルに回復役が務まるなんて初耳だ。

森の中では僕を試すため、回復を控えていたのか。

だが、それだと戦力を落とすのではと案じた。



「回復に回れば戦力不足にならないか心配じゃないんですか?」


「その心配はいらないよ。あの方のジョブは聖騎士パラディンだから。

 一層の親玉は、テイルリッチ。強いけど攻略法は同じだから任せておこう」


「パ、パラディンだったのですか! 攻守ともに優れ、回復までこなす、あの?」



兵士の装備で軽装してるから、とても聖騎士には見えなかった。

ユリオルの意外性に驚いた。



「オイラたちがいるほうが戦力が落ちるよ。とくに君を庇いながらになるからね。

 SランクのLVは90近いから、まず心配はない」


「……あ、そうなんだ」



LV90って……どうやら僕の取り越し苦労のようだ。

だけど僕は戦いに参戦したかった。

僕はもっとレベルを上げて強くなりたい。



「ラルク、顔に書いてあるよ。レベルアップがしたいんでしょ?」


「……そ、それは」



隠せないな。回復しかできないから、下心を見抜かれている。

ファルは逆方向を指さして歩き出す。



「さあ、もう少しで目的の部屋だ。そこにも魔物がいくらかいるはず。

 イヒが戻って来たら1人で苦戦するから、助っ人に行かなくちゃね」


「そうだ……ね。えっ、僕とファルとイヒであのリッチを処理するの?」


「イヒがパリィで怯ませて、オイラがホーリーで蹴散らすのさ。

 ラルクは回復に専念してね。レベルアップで魔力も上がったでしょ?」



同意する他はない。治癒士のファルも聖魔法を使えるのか。

そっちでもレベリングはできそうだ。たしかにイヒを1人にできないな。


目的部屋に到着すると、イヒが戻っていた。

僕らに振り返ると吉報を持ってきた。



「喜べ、正解部屋だったぞ!」


直後にファルが身構えながらいった。


「偵察、ご苦労様! リッチはたぶん、あのとき逃げた1匹だけだ。オイラたちで仕留めるぞ!」



相変わらず僕には魔物の姿が見えない。

攻略手順は彼らに任せて、僕は見物だ。なにも見えないけど。

そして終わったみたいだ。

やっぱりドロップが大量に出た。これは高く売れる素材だった。ぼろ儲け。


そして、レベルアップがきた。

LV31になった。


HP体力  400

MP魔力  93+500

      (杖は体内細胞となったため、ハイエロファントは仙人仕様に昇格。

      仙人の杖となる

こうげき  31

ぼうぎょ  31+1500(旅服

   運  0



☆少人数で高次元の魔物を討伐、「黄金体験期」を40年分獲得。

『仙人の旅人』領域へ到達しました。


☆仙人の旅人の恩恵:防御+1500 恩恵2:空を飛ぶ



(うわ、防御がすごいことに。そのうえ空まで飛べるように! えぐ過ぎんか!

 おまけにMPもとんでもなく増えた。ロッドが仙人仕様ってなに? うれ死ぬ)



「レベルが10あがったら、10倍の恩恵が付与されました。ファルさま、ありがとうございます! 少人数のこっちが良かったみたいですぅ」



喜びの気持ちと共に満面の笑みをファルに向けた。



「うむ。そうだろ、そうだろ。ラルクにとっては大人数より得するはずさ」


「そいつは良かったな、坊や」



イヒも僕にグッジョブな仕草を見せてくれる。

転移台の場所へ続く通路をイヒから教わる。でもひとまずここで待機だ。

後続の仲間を待つ必要がある。アビリオンたちの顏が見えて間もなく合流した。

アビリオンは倒した魔物がリポップしなかった旨を伝えた。

ナイスガイの白い歯を見せて、イヒを労った。



「運よく当たりを引いたみたいだな。幸先のいいスタートだぜ!」


「まったくだ。運が良いのはラルクを仲間に引き入れてからじゃねぇか?」


「ああ、そうだな。さっきのドロップといい、神がかってるよなぁ」



デマンとワキが僕を持ち上げ「あはは」と笑い声を響かせた。

皆が褒め称えてくれる。神は褒めすぎだ、まだ仙人ですから。

相変わらず、運は0だというのに。どうなってんだ。


「では参ろうか」

ラルク、つぎの部屋が1A-2だぞ。

アビリオンは僕に脳内にそう書き込んでおけと言わんばかりに念を押した。


再び、転移台に乗る。1A-2に移動すると台はまたコーナーに位置していた。

これが正解部屋の確認方法だな。必ず部屋の隅、コーナーに出るのだ。

第一層の魔物はリッチ。その親玉はテイルリッチ。どっちもアンデッド。

前衛たちだけで片づけて来たようだ。

どの道、僕には見えないからいいけど。魔物のドロップも気になるところだ。


とりあえず、いま大量に出た『洗礼の御霊』の1個を無限アプデしておこう。

あとで慌てなくて済むように。どんなものも役に立たないと決めつけは良くない。

アプデすれば運なんてどうにでもなる、気がしてきた。



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