44 突っ走れ!
さて、転移台の周囲は安置である。
休息ポイントが明確に存在するのは九死に一生だ。
遺跡の入り口の部屋が第一層のAとする。1Aと。
そこの転移台は1つだから、つぎは正解部屋なので、1A-1とする。
転移台が複数あって正解ルートから外れた部屋を1A-Aと。
正解は数字で、まちがいはアルファベットで記す。
一層ごとに魔物の親玉となるボスが存在するようだ。
そいつがどの部屋にどのタイミングで出現するか決まっていない。
ユリオルは同じ場所に長く足を止めていると出るといった。
ここからは、盗賊が斥候で先行していく。
アビリオンが号令をかける。
「さあ、もう行ってくれ!」
「了解!」
冒険者PTの3人をそれぞれの笑い声から、ガハ、ドハ、イヒと名付けた。
号令でイヒが走り出した。2人は残った。
護衛部隊の名乗らない2人も、まだ行かないようだ。
前に出たあの人をデマンと名付け、もう一人をワキと呼ぼう。
イヒがあっという間に姿を消した。この部屋の転移台を探しに行ったのだ。
まだバトルじゃないから質問しよう。
「あの斥候が返ってくるまで待機するんですか?」
「いやしない。この部屋からは進むと転移台にたどり着く道が枝分かれする場所があるから、その部屋までは俺たちも急がねばならん」
「そこで、ほんとに枝分かれしてるなら、その数に応じて他の者を出すのさ」
アビリオンとデルタンはそういって、そろそろ出発するそぶりを見せる。
遺跡の中は広めの空間と通路と思われる場所がある。
神殿の様な石造りの円柱が壁から半分突き出ていた。
折れた石柱が通路に横たわり道を塞いでいた。
壁際は細かい瓦礫が散漫している。
その辺から採取物でも見つかりそうだ。
部屋と部屋のつなぎ目には浅い階段があったり、所々に段差が目立つ。
壁に灯りはない。
緑色に発光するコケがほんのり周囲を照らす場面もある。
光るコケは瘴気に侵されていないようで美しくもあった。
僕はそんな神秘的な風景よりも、気になる物を見つめていたら。
アビリオンが嗜めてくる。
「おい坊や! よほどそいつがお気に召したようだな?」
「これ、封鎖するときには持っていけないですかね?」
「はあ? そんなバカでかいモノを持ち帰ろうとするヤツは初めてだぜ。
調査がきっちり終わるまで余計なことして壊すんじゃねぇぞ」
皆が苦笑いを向ける中、ファルだけが理解を示してくれる。
「ラルクにとってはそれが財宝に見えるようだね。アイテムがスキルの成長に影響するだけあって気になるようだけど、それ何に使うの?」
「ファルさまたち、転移魔法は使えますか?」
「お、そんなの使える術士は聞いたことがないけど……まさかでしょ?」
「剥ぎ取れたら、まさかが実現するかもななで、試してみたいなーって」
「まったく面白いね。好奇心旺盛でいいじゃないか」
「ほら、ワキだってあれば便利って思ってますよね?」
「うん? ワキって旦那のことか? 勝手にあだ名を付けたんだな」
「やはり呼び名がないと面倒なので」
旦那たちは、まあ好きにしろって感じで微笑んでくれた。でもアビリオンは
「それなら俺たちも、坊やで行かせてもらう」と付け加えた。
「仕方がないですね」と受け入れる。
そろそろ出発する。
ここからは歩く感じではなく、最低でも強歩だ。
敵が出ないなら走ってもありだという作戦になった。
とにかく戦闘の必要はない。
できるだけ回避して、下層を目指す。
アビリオンは指令をだす。
「魔物には構わず、突っ走れ! 坊やはファルから離れるなよ!」
「わかっています!」
「俺たちも、少数の敵は狩っておくが、ほとんど無視していく」
「もし親玉が出たら、逃げきれん! その時はみんな集合してくれ、頼むぞ!」
締めの言葉はユリオルだ。
親玉は回避不能らしい。
この瓦礫の中を動きなれている体力自慢の冒険者たち。
だけどファルは僕を気遣いをする。
はぐれないように手を繋いでくれる。
ここじゃまるで子供扱いだ。
「あぁ、でも。あの人たち足が速いよ。体力を回復できても移動速度で迷惑かけてゴメンなさい。……Aランク、Sランクはほんとにタフだよな」
「なにも考えなくていい、舌を噛むよ。いまはひたすら枝分かれの部屋を目指すだけだ、ラルク!」
「は、はい!」
ファルはヒーラーだけど身軽だ。
ひょいひょいと地面に転がる障害物をジャンプで避けている。
軽快に駆けるファル。
僕はつまずかぬように付いていくのがやっとだ。
先を行く仲間を遠目に見る。
魔物と戦っていた。
ガチの応戦ではない。
タックルで怯ませ逃走を繰り返すのだ。
通路を抜けた部屋に2,3体の魔物と出会うみたいだ。
ここでは倒し切らない。
先行のイヒが見つけた転移台を起動させ、戻る。
前衛が狩った少数の敵が復活したらその転移台は外れ。
また少数の魔物を狩って、それを繰り返す。
正解の転移台をくぐればそこが、
1A-2という位置づけになる。




