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43 転移台


もし、僕が一人でこの場所へたどり着いたなら。

この立方体の、つまり、いま全員で乗っかっているこの石造りの台を

くまなく調べることだ。


これが、次の部屋へ移動する装置というなら、皆で乗ったらその重みで下に沈み、

押すための仕掛けになっているのだと予想を立てたので、

一番最初に乗りたかった。意見をうかがいながらも勝手に飛び乗ったのだが。


でも、すでに乗っかっているにも関わらず、なにも変化が見られない。

それなら、ますます自分で紐解きたかった。


間もなく答えがでる。


ファルが「起動するよ」といい、手のひらを床に向ける。

彼は治癒士だけど杖などは装備していない。

出会った時からずっと素手だった。


そして、魔法使いのデルタンが「始めますか」といい、杖を左手に持ち替えて、

空いた右手をファルと同様に床に向けた。



「え、なぜ?」



意外だったから、思わず声を漏らした。



「二人で何か……同時に発動するのか」



この二人が手から発動するのは魔力しかない。それはピンときた。

二人の指先から目が離せない。


さきに唱えたのはファル。彼は「スモールヒール」といった。

いまも僕が絶え間なく回復をしている。だから回復する必要はなく、これは装置起動のために必要な手順のものだとの解釈に必然的に至った。


低魔力のヒールを唱えた。それが乗っている床に放たれた。

その魔力の流れは、まるで電力のように石板の辺を伝い、正方形の四つの辺を時計回りに回転し出した。


次いで、デルタンが「レイン」といい、小さな水魔法を床に向けた。

その魔力は辺ではなく、角に向けて集約された。

そこから対角線上に水しぶきが走って、もう一つの対角線も伝い、バツを描いた。2種類の属性魔法は台の上で緑と青の綺麗な2色の光で静かに通電するように流れた。


混じり合うことなく石板の上でささやかな光のダンスを見せると、やがて消えて、もともと描かれていた花びらの紋様に注がれるように集約された。

花びらの紋様は一瞬だけ青白く光って、消えた。ブゥーンという振動音が足元から体内をかけめぐった。   


僕もピンときて、また尋ねた。



「そうか! 異なる属性の魔力を同時にぶつける必要があるのか……」



続けてなにかを言いかけたのだが。


単独でやって来れたとしても、解けないギミックだったか。

僕の胸の内で踊っていた黄金のきらめきがあっという間にくすんで、冴えない色に変わる。

ここでも「やっぱり先駆者には勝てないか……」。

自分なんて何の役にも立たない思いに駆られて、さすがに閉口した。


ひとりで盛り上がって、一人で意気消沈する。


すると、ファルが「ラルク! 見てみて。部屋を移ったよ!」って。

謎解きに気を取られて勝手にしょげていたら、移動が終わっているという。

皆が台から降りていく。

僕ひとりがポツンとそこに取り残されるように。


あっけに取られている僕にファルがいった。



「両(サイド)をよく見てごらん!」


「えっ、えっ?」



キョロキョロと目だけじゃなく身体ごと左右を見てみると。



「あれ? これは……コーナーになっている。もう移動したんだ……」



さきほどの部屋は石の台は壁際の真ん中にあった。

それが隅に置かれているから、ここはまた別の部屋なのだ。

部屋のあちこちに目をやると、間取りが明らかにちがって見えた。

台をゆっくりと降りて皆のそばへ行くと、ファルがなんだか陽気に振舞い、新たな言葉を差し出してくれた。



「そんながっかりしなくて大丈夫だよ。これ転移台ね! もうわかっただろうけど

2種類の属性の魔力を流せば反応して起動するんだ」


「うん、そこはピンときたんだけど……」


「そこだけど、君ひとりでも可能だよ。回復(緑)と雷(黄)でも反応するから」


「えっ、そうなの!」


「あはは~ん、今泣いたカラスがもう笑った、か?」


「な、泣いてなんかいません! からかわないで下さい」


「もちろんジョーダンだよ。ユリオルさんとの会話、聞こえちゃったから……」



ユリオルとの会話というと……、どの部分だ?

首を傾げていると。

ファルは僕のハイエロファント・ロッドを指さした。



「うーん、ということは……」


「それ、雷魔法も光魔法も付与されてるよね? 君の場合それだけで十分だし」


「ライトといかづち。確かに2種の属性だ。ライトはすでに稼働中だ」



転移台に乗って、そのままいかづちを発動すれば移動できるってことか。



「やったぁ! 僕、ソロで移動できるんだぁ!」


「おい、ラルク! 勝手に動き回られては守り切れないから。いまの発言はイエローカード1枚な!」


「ええっ!? アビリオンさんっ、そりゃないですよ~!」



皆が、わははと笑い飛ばす。

ファルが一言付け加える。



「転移台の周辺は安地だよ、覚えておいてね」


「安全地帯なの、ここ?」


「詳しくは解明されてないけどね。転移台はピュアなマナに反応するんだ。

 瘴気まみれの魔物がそばにいると、いや居れないんだけどね……」



うん?



「報告によると、魔物に噛まれてそれを引きづって転移台まで滑り込むように

逃げてきたら、その魔物はその場で消滅したらしくて、ね」



おお、なるほど。



「それで安置だと判明したんだよ。ここを利用して作戦を立て直すときに集合するから。もし、はぐれたときはどこかの転移台を探して、そこで待機していれば、取りあえず襲われないからね!」



僕が納得した顔を見せると、アビリオンがすかさず忠告をいれる。

彼もファルに合わせる様に陽気な素振りを見せるが。

なにやら先ほどのかっこいいニキとはちがうキャラで迫って来る。



「転移台をおもちゃにして、遊んじゃダメよん? 行ったり来たりしちゃダ~メ、

お・ね・が・い・よ、ラルクちゅわあ~ん!」



アビリオンがオネエみたいな口調で注意を促してきた。

手の動きがしなやかで、

肩幅より外に出さないように意識したコンパクトで上品な動き。

これは上級者だな。

さっきは坊やなどと見下し気味だったが、接する態度が急に優しすぎると困惑する。



でも外れ部屋から戻ると、魔物が全部リポップするリスクは避けなければ。

レッドカード並みのペナルティだ。


何度も同じ説明をするのが嫌なのだな。だから強烈に印象づけてくる。

まあ、それは肝に銘じておくとします。



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