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41 とんでもスキル覚醒



まさか魔物が普通に人と会話ができるレベルの知能を持つとは。

置かれた状況を知るには至ったが、それを観戦できない状況は変わらない。

結界に衝撃を喰らったことで皆の表情に緊張が走った。

おかげで魔物とのエンカウントが真実だという実感を持てた。


自分にできる回復は言わばオートモードだ。

暇を持て余して指をくわえて見ているのは、あまりにも退屈である。

しかし戦いの邪魔はできない。

それなら部屋を移動する際に起きるリスクを減らせないか対策を練りたいと、推察を巡らせているととんでもないことに遭遇した。



バトル中の魔物はリッチ。


強大な魔力で知られている。アンデット系。

魔法使いの不死者。


自身の魂や生命力を「聖句箱」と呼ばれるアイテムに封印していて、肉体が滅びても魂が無事であれば何度でも復活する。

「(……そんなものどこにも見当たらない)」


外見はミイラや白骨化した姿でやせ細っている。

ボロボロのローブをまとっている。

ドロップアイテムには物体Xのような不燃ごみがある。

と、ファンタジー文献にはそのように書かれていたと記憶している。



気がかりなのは不死という一点。ユリオルは戦歴があると発言した。

臓物遺跡はSランク。魔力が強いのは当たり前。

だが討伐経験者がいればこちらは問題はなさそう。


デルタンが詠唱準備に入った。

アビリオンが剣を抜かずに盾を構えてデルタンの壁役についている。

斥候盗賊もバックラーで身を守る姿勢を取り、いまは動き出さない。

斥候をしない、ということは5体のリッチが道を塞いで譲らないのだ。


横並びになって、同じ高さの目線にいるのだろう。

亡霊系なら浮遊して目線の上にいても不思議ではない。

だが天上は高い、上空にいるなら全力で走り、とっくに振り切っているはず。



「ここは討伐しきるしかないな」



アビリオンとユリオルが互いに目を合わせ、アイコンタクトで頷き合って

そう判断を付けた。

すると同様に討伐手順を知るであろう、鑑定士シオンがつぶやく。



「討伐できたら『洗礼の御霊(みたま)』が1個ぐらいは手に入るかもしれない。頑張って下さい皆さん」



その期待の受け皿になったのは、護衛部隊の一人だ。



「レアドロは時の運だ。日頃の行いが悪いと引けないらしいからな。あっはは」



日頃の行いなら「俺たちは抜かりがないから」きっと大丈夫と前向き姿勢のアビリオンが、もらえる前提でそれをどのように分配するか、そちらの心配をつぶやく。



「おいおい、そんな超レアなもん、どう山分けすんだよ?」



ニッカリと、華やぐような笑みを交えて背後に視線を飛ばす。

デルタンは詠唱中。後ろにいて手すきなのはシオンとファルと僕。

金策の話題にファルがすかさず回答した。



「そりゃあ換金後でしょうよ。1個でれば金貨100枚、一人頭10枚ずつだね!」



アビリオンとファルが浮き浮きしながら、狸の皮算用をする。

リッチのレアドロップ物は100万ゴールドか。

「僕ももらえるみたいな計算してる。山分けルールか、そりゃいいね」

任務報酬の他にボーナスがついてくる。こりゃ、ヒーラーを極めたほうが楽かもしれない。


軽い談笑のあと、デルタンが合図した。



「準備完了! いつでもいいぞ!」


「よし、ファル。やつらの呪文を弾けるように頼む!」


「わかってるよ、まかせて!」



デルタンがでっかいのをぶっ放すみたいだ。

そのための時間稼ぎで皆が交互に楯になるらしい。

リッチの攻撃呪文を弾くための防御魔法を皆の盾に施していく。

つまり、バフをかける。


敵が何かを察知したようだ。空気に熱気が伝わり空間が膨張するかのように肌にピリピリとした圧力を受けている。防御結界越しなのにすざまじい威力を感じる。


おそらく「閻魔」クラスの火炎魔法が飛んできたのだろう。

次の瞬間、前衛たちが軽快なステップを踏んだ。

身軽な盗賊たちが素早く前に出て、次々と「パリィ」の仕草を見せた。

盾にかけられたバフは氷系。一定時間、炎のダメージをを防いでくれそう。


なにやらうめき声が響いて来た。

斥候盗賊らのパリィが成功したようだ。

自分の攻撃が己に跳ね返り、悔しさの嘆き声を上げたのかもしれない。


アビリオンが「こっちは俺が引き受けた!」といい、ダッシュで前方へ飛び出る。

盗賊たちのパリィで隙を見せた1体のリッチに強烈なタックルをぶちかます。



「デルタン、出番だ!」



アビリオンが、ショックを与えてダウンを取った。

敵を下に見ながらその場を飛び退いた。

デルタンの視線もアビリオンが見つめる先とおなじだ。床の上にぐったりしているリッチを目掛けて準備した特大の攻撃魔法を放つようだ。


デルタンの杖の先から神々しい黄金の光が発光し、キュイインと音を唸らせると共に尾を引いて高速回転をしていく。

杖の先にかかる魔力の質量が、どんどん加算されていく。杖を両手で支え、頭上にゆっくりと振りかぶり、力強く、振り下ろしていく。


「えぇ──いっ!!」


光の尾が螺旋を描き、眩しい閃光となり、前方の一点に向かい解き放たれた。


「……あ、あれは!」


僕も指南役に幾度も見せつけられた闇の浄化に使う神聖魔法だ。




シン・ワイプイレイズ──っ!!」




ずっどぉーーーんっ!! と、天誅が下るように相手に炸裂する。

屈強な魔物が消滅していく様子は彼らの表情と漏れる歓声から、目に浮かぶ様だ。

1体のリッチを倒したのだ。


そうなれば後は同様の手順で2体目、3体目と討伐していくだけである。

連携プレイ、手慣れたものだ。


「見事なものだ……(見えないけど)」


そうして4体目を倒し切ろうと言う時に、5体目のリッチがどうやら逃げ出したようなのだ。



「ちぃ! 危険を察知しやがって! 得意の姿消しで、消えやがったか!」


「逃げたら逃げたで楽ができる。まあ、しょーがないな。せめて『闇の貴布きぬ』か、

『核の魔石』のひとつも置いていってくれりゃあな」


「私は『強い骨』がいいですね!」



皆が口々に望みを唱える。戦利品の話だな。

その次の瞬間だった……。



「おいおいおいおいおい、おおおお────────いぃっ!!!」



アビリオンの声を先頭に勝利を収めた皆が驚きの声を上げた。何事かと目をやれば、

目の前にはおびただしい数のドロップアイテムが落ちている。

ドロップって1度にそんなに出るものなのかと、僕もびっくりした。


左サイドに最前衛のアビリオンと斥候盗賊たち。右サイドに護衛部隊。その手前にいるデルタン。さらにその後ろにシオンとファルがいる。

敵を倒したようで皆が前に出て、ドロップ物を確認するべく跪きながら囲った。


シオンも手に取り、同様に驚愕する。



「シオン、これを見てくれ。『洗礼の御霊』しか……ドロップしてねぇぞ? 夢でも見てんのか俺たち」


「リッチの亡骸から、湯水のごとく湧いて出てくるぞ! なにがどうなってる!」



その光景は、まるでゲームでいうところのバグ現象でしかない。

いつになれば止まるのか。レアアイテムが1分間は湧き続けている。



「これはなんという奇跡であろう。しかも4体分ではきかない。何十個ドロップしたんだ? 本物か、いま鑑定する」



ユリオルたちも垣間見たことのない現象のようで、シオンに詰め寄る。



「どうだ、シオン? すべて本物か? 幻覚を見せられてはいないか? 

いつもなら、不死者のクソしか落とさないのに」


「ああ、アレはゴミだ。使い道がまるでねぇんだ。

糞だから食うわけにもいかねぇしよ。だが今日に限って一体何が起きたんだ?」


シオンが血相を変えて、すべて本物だと告げた。

皆、興奮冷めやらぬといった感じだ。



だが僕は知っている。

皆が驚愕する大量のレアドロップ放出の理由を。

敵を討伐し終えた直後に僕の方には天の声が聞こえた。






『欲しいモノを先に選んでください』



「はあ? なんの話だ? (急に説明本が話しかけてきた)」



『欲しいモノを……ドロップ等級の下位に設定をしてください』



ドロップということは、拾得できるアイテムを選べるってこと?

なにが起きたんだ?

最初は僕でも驚愕した。


「その意味を詳しく教えて!」




『福引権と魔物ドロップ等級が“シナジー効果”を生みました。

これを「シナジースキル」といいます。


無限福引 + 魔物ドロップの等級化 = 魔物で福引


その結果、ラルクさまが新たに受けるスキルが

『ドロップ福引』へと複合されました。


 魔物のドロップが複数ある場合、入手したいものを等級の最下位に設定すれば

 入手確率100%になります。上位等級の確率が順次極力低下します。

 等級は八段階までになります。


魔物がドロップする際、福引方式へと移行します。


1等を1個引くまで延々と、無限再抽選がおこなわれます。

なお、福引権は譲渡できないためショップではサポート対象外となります。


ラルク様、シナジースキル『ドロップ福引』の獲得、誠におめでとうございます!』




半殺しの目に遭い、窮地に立たされたせいで、とんでもスキルが覚醒していた。



「まじか、これも使えるやつだった! 最下位は末等だから必ず当たるという概念になるんだな。ヤバすぎんか、無限アプデ……」


ドロップアイテムの情報さえしっかりとしていれば、目当てのものは1個確実に大量に手に入る。


それで↓

おや、すでに仲間が騒いでいる。


「おいおいおいおいおい、おおおお────────いぃっ!!!」


目の前にはおびただしい数のドロップアイテムが落ちている。


「『洗礼の御霊』しか……ドロップしねぇぞ? 夢でも見てんのか俺たち」

となった。



結果的にこう。

リッチは、ドロップが5つなので。



一等 『不死者の糞』確率 0.1% 通常ドロップで利用価値がなく買取価格0

二等

三等

四等

五等 『核の魔石』  確率 1.1%

六等 『強き骨』   確立 1.1%

七等 『闇の貴布』  確率 1. 8%

八等 『洗礼の御霊』確率 100%



 

「この配置にしてみたんだけど。いやそれ、八等しか出ない気がする……」



しかし実際のドロップを見ると、


『洗礼の御霊』99こ

『闇の貴布』 11こ

『強き骨』  4こ

『核の魔石』 5こ

『不死者の糞』1こ



僕は、ユリオルたちに自分のスキルが関係していることをそれとなく伝えた。



「き、き、き、き、き、き、金貨っ! 9900枚っっ!! 家が買えるぅ!」


「ラルクに逢えてほんとに俺たちラッキーだよ! ありがとなー!!!」


「戦えないのに山分けにしてもらえるんですか?」


「当たり前だ! それが冒険者の掟だ。遠慮なく受け取れ、あっはっは、泣くほど嬉しいのは俺たちもだ、ラルク」



人生で初めてまともな扱いを受けた気がする。

色んな意味で目頭が熱くなってくる。




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