33 無限覚醒
そこには先ほどまでの狂気していた暗殺者の面構えはなかった。
間違いなくとはどういうことだ?
別人の可能性をとことん推しまくりだした。
ここはあまり、しつこく訊かないほうが無難かもしれない気もするが。
だけど、そんなに声をそろえて言うのだから気になるし。
「僕はいったい、どなたと間違えられたのですか?」
「それがな。大きな声じゃ言えないんだが、ラルクアッシュルーズという……」
「おい馬鹿野郎! てめえそれ以上、情報漏洩をするんじゃねぇ!」
僕じゃないか。
まちがいなく目の前にいるよ。
あなた方の目の前にいるのが、お探しのラルク・アッシュルーズですと、
わざわざ教えるとまちがいなく叩き殺されるよね。
おそらく、手配書に不備があったのだろう。
不意に僕の腰の肉を掴む感触があった。
「(おい坊や……それ以上は刺激をするな……)」
「(は、はい)」
それは傍で回復しつつあったユリオルの合図と囁きだった。
奴らからすれば単なる人違いで、無関係な人たちを執拗に追い回して。
瀕死の重傷を負わせ、ヘラヘラと笑ってごまかして立ち去ろうというのだ。
決して許せない行為だが、刺激しては逆効果になる。
相手がそういうのなら「いまは人違いで過ごすんだ」ユリオルはそういった。
やつらはべつの場所を探せ、といい、散らばろうとする。
「おいおめえら、ほかを当たるぞ!」
「──にしても、なんで見失ったんだ?」
「そんなもんわからん。あのメスガキの連れがラルクのはずなのだが」
「なんでこんな、通りすがりの『旅人』を対象だと思い込んじまったか」
いま、なんて言ったの?
「あ? 旅人さんも災難だったな。見た所、大して怪我もないみたいだし。
おれたちゃ、もう行くわ。まあ、気を付けて旅をつづけるこった!」
「メスガキ……(ルディのことだな)いまは堪えてやる」
僕はユリオルたちに向き直り、ヒールを放出しつづける。
一難去って命拾いをした。
それと、遅ればせながら。
「スキル旅人を鑑定! 詳しく説明しなさいよ、死にかけたんだから」
☆
スキル旅人
装備品、旅人の服を無限アップデートした結果、覚醒したスキル。
旅人→ 繰り返す(10年)→ プロの旅人(さらに20年)→
達人の旅人(さらに30年)→ 仙人レベルの旅人(さらに50年)→
究極の旅人(さらに100年)→ 旅人の神(さらに300年)→
『だれがどう見ても旅人、まごうことなき旅人、旅人以外の何者でもない』の
称号に昇華→ 称賛の残留思念がエーテルとなり(500年世を彷徨い)→
称号が神格化(さらに千年の間、星々を巡り)→
神々に周知される(神々の住む都の大書庫へ紛れ込み、さらに万年)→
ついに神々の読書晩餐会に招かれ
「よそ者学」という謎めいた本として司書が紹介
・幅広い知識と教養を身に付けるetc
・健やかな身体を養うetc
→感銘を受けた彼らはセンセーショナルだと、読書流行大賞にノミネート
神々はスキル化し、何者にも干渉を受けない旅を散々堪能したのち、
飽きて雲の上にポイ捨て→ それを女神様がゴミ拾いのついでに回収→
転生者が訪れる度、「剣聖がいい」だの、「外れスキルは嫌」だのと→
結果、女神が、冒険者になったら誰でも購入するだろうと防具に仕込み、
旅人の嗜みを知ってもらおうと、等云々。
『それを、【スキル無限アップデート】でアップデートしましたら、
「スキル旅人」として無限覚醒に至り、ラルクさまが獲得なさいました』
かつての神々が手にしたものよりグレードは高い。
効果、効能。→上記の通り
☆
いや何それ! 説明長っ!
要するに僕は、モブ化してしまっているワケね。
姿は見えるから、ステルス化ではない。
「やっと意味が理解できた……これは使えるやつだった!」
『無限覚醒』
スキル旅人でモブ化。
誰も僕をラルク・アッシュルーズだと認識できないようだ。




