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33 無限覚醒



そこには先ほどまでの狂気していた暗殺者の面構えはなかった。


間違いなくとはどういうことだ?

別人の可能性をとことん推しまくりだした。

ここはあまり、しつこく訊かないほうが無難かもしれない気もするが。

だけど、そんなに声をそろえて言うのだから気になるし。



「僕はいったい、どなたと間違えられたのですか?」


「それがな。大きな声じゃ言えないんだが、ラルクアッシュルーズという……」


「おい馬鹿野郎! てめえそれ以上、情報漏洩をするんじゃねぇ!」



僕じゃないか。

まちがいなく目の前にいるよ。


あなた方の目の前にいるのが、お探しのラルク・アッシュルーズですと、

わざわざ教えるとまちがいなく叩き殺されるよね。


おそらく、手配書に不備があったのだろう。

不意に僕の腰の肉を掴む感触があった。



「(おい坊や……それ以上は刺激をするな……)」


「(は、はい)」



それは傍で回復しつつあったユリオルの合図と囁きだった。

奴らからすれば単なる人違いで、無関係な人たちを執拗に追い回して。

瀕死の重傷を負わせ、ヘラヘラと笑ってごまかして立ち去ろうというのだ。

決して許せない行為だが、刺激しては逆効果になる。


相手がそういうのなら「いまは人違いで過ごすんだ」ユリオルはそういった。

やつらはべつの場所を探せ、といい、散らばろうとする。



「おいおめえら、ほかを当たるぞ!」


「──にしても、なんで見失ったんだ?」


「そんなもんわからん。あのメスガキの連れがラルクのはずなのだが」


「なんでこんな、通りすがりの『旅人』を対象だと思い込んじまったか」



いま、なんて言ったの?



「あ? 旅人さんも災難だったな。見た所、大して怪我もないみたいだし。

 おれたちゃ、もう行くわ。まあ、気を付けて旅をつづけるこった!」


「メスガキ……(ルディのことだな)いまは堪えてやる」



僕はユリオルたちに向き直り、ヒールを放出しつづける。


一難去って命拾いをした。

それと、遅ればせながら。



「スキル旅人を鑑定! 詳しく説明しなさいよ、死にかけたんだから」





スキル旅人 



装備品、旅人の服を無限アップデートした結果、覚醒したスキル。


旅人→ 繰り返す(10年)→ プロの旅人(さらに20年)→ 


達人の旅人(さらに30年)→ 仙人レベルの旅人(さらに50年)→ 


究極の旅人(さらに100年)→ 旅人の神(さらに300年)→



『だれがどう見ても旅人、まごうことなき旅人、旅人以外の何者でもない』の

 称号に昇華→ 称賛の残留思念がエーテルとなり(500年世を彷徨い)→ 


 称号が神格化(さらに千年の間、星々を巡り)→

 

 神々に周知される(神々の住む都の大書庫へ紛れ込み、さらに万年)→ 


 ついに神々の読書晩餐会に招かれ


 「よそ者学」という謎めいた本として司書が紹介


・幅広い知識と教養を身に付けるetc

・健やかな身体を養うetc


 →感銘を受けた彼らはセンセーショナルだと、読書流行大賞にノミネート


 神々はスキル化し、何者にも干渉を受けない旅を散々堪能したのち、

 飽きて雲の上にポイ捨て→ それを女神様がゴミ拾いのついでに回収→ 


 転生者が訪れる度、「剣聖がいい」だの、「外れスキルは嫌」だのと→

 結果、女神が、冒険者になったら誰でも購入するだろうと防具に仕込み、

 旅人の嗜みを知ってもらおうと、等云々。

 


『それを、【スキル無限アップデート】でアップデートしましたら、

「スキル旅人」として無限覚醒に至り、ラルクさまが獲得なさいました』

 かつての神々が手にしたものよりグレードは高い。


 効果、効能。→上記の通り






いや何それ! 説明長っ!


要するに僕は、モブ化してしまっているワケね。

姿は見えるから、ステルス化ではない。



「やっと意味が理解できた……これは使えるやつだった!」



『無限覚醒』

スキル旅人でモブ化。

誰も僕をラルク・アッシュルーズだと認識できないようだ。



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