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30 百騎長ユリオル


ヤナコドムの森で出会った百騎長の部下は9人いて、合わせて10人。

一方、僕の暗殺のために送られてきた刺客は数百人。


ただのゴロツキではないようで。

魔物を相手に戦ってきた冒険者が有無を言わさず退却はするまい。

話し合いという選択肢もあっただろう。


しかし、これはそうはいかないと判断が下された。


僕の身体が左右に大きく揺れる。

重力による圧力を受けているため、妙なスリルを味わっている。

小隊は逃げながら蛇行するようにアクションをとる。


茂みを飛び越えたり、開けた場所を避け、敢えて獣道を選んでの逃走。

それは敵を試すための攪乱だ。


だが相手はそれに動揺することもなく軽々と追いついてくる。

訓練された兵だという証拠だ。



「無益な争いは御免だよ、坊や」

「す、すみません。危ない所を助けてもらって感謝します」


その部下たちは傍を黙って走る。

僕を抱えて走る百騎長の言い分は正しい。

殺意を露わにした危険な連中相手に話し合いも何もあるものか。



「君を擁護しようものなら、あの場で皆、口封じに遭っていたことだ」

「僕も、そう思います」

「しかし、奴らもしつこい。どうあっても君を始末するつもりでいるぞ」



それについては返す言葉が思い浮かばない。

背後に迫る追手が追跡を諦めて、引き返すという気配はうかがえない。


僕は僕で心当たりがあるので、追手の執念深さを納得するのだ。

『身内に殺害される運命』それを前もって承知しているから。


今日がその決行日だったなんて。

しかも、虐めてきた召使いたちではなく。

家督を継ぐ、醜い跡目争いの憎しみの的として実の兄弟に。


事情が理解できなくても百騎長が大ごととして受け止めている。



「俺はこの小隊を率いる長のユリオルだ。君は?」

「ラルク。駆け出しの冒険者です、17になります」


「何があったか今は聞かない。ただならぬ事案に遭遇してしまったようだな」

「はい……あの、森を抜けるまでどれぐらいですか?」

「まだ50ムーブは先だよ」



50キロメートルだといっている。

大雑把な地図では目にしたことがあった。

百万ヘクタールほどの森林の中心を円形にくり抜いて

都市として開拓したのがレイナルーズ領だ。



まじか、死ぬ。

この人たちが逃げきれない時は命運が尽きる。

光陰矢の如しというが。

時に逆らう術はないものか。



「テッポウ、本陣に伝令を。急ぎ飛ぶのだ!」

「御意!」



ユリオルが一人の部下に命じた。

テッポウという者が頷くと同時に、ギュンっと加速をして彼方へ消えた。

特殊な移動スキルでも持っているみたいに。



「いまの人は転移したのですか?」

「いやそんな大したモノではない。テッポウは俊足が他者より頭抜けている」



どんな鍛え方をしたんだ。

ロケットみたいに、すっ飛んでいったぞ。



「では、その本陣と連絡が取れれば、援軍が期待できるんですか?」

「その通りだ。森を抜けた所に、ある調査のために設置してある」



何かの調査。



「それ、冒険者の領土侵害の……」

「侵害があるかは不明だ。冒険者がどこで何をしようとも自由のはずだ」

「も、もちろんです」



ユリオルは強めの口調で否定した。


向こうの領土もピリピリしていたんだな。

街の者の噂は相手側を悪と決めつけがちになる。

悪人ばかりなら、こうして僕なんかを救いはしない。



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