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28 杖の検証その2


乱獲をすると生態系の破壊につながる。

でも相手が魔物だから、そうしたほうがいい。

もともと澄みついていなかったらしいから。


そして、ここへ来た目的はひとつだけ。

この魔法の杖の検証だ。


僕の見た鑑定結果が本物かどうか。

ルディの証言とは異なる結果となった。


魔力付与の例外もあるが、魔法は基本的に術者が覚える必要があると。


鑑定せずに見たタグの内容にも、裁きのいかずちと記載があった。

鑑定の目で視えたのは秘められた効力……ではなく。

雷系魔法1の付与で。

雷効果があるなら最低限の付与効果なのに秘されていた。

それなら、もうひとつの検証も必要になる。



「ルディ。このままレベリングをしようと思うんだ」

「いいですね。あのカニを狩れば、さらに採取もできますし」


「……うん。そう思って辺りを見てるんだけど。

 この雷杖で仲間が倒されるのを見たのか、どうやら逃げて隠れてしまった」


カラスガニと他の甲殻類の姿が見えなくなっていた。

この洞窟は壁に隙間があるものの、一階層しかないので時間的に探し回るのは得策とはいえない。


「……いなくなったみたいだ。外に出てほかの魔物のところへ行きたい」


「魔物たちはきっとラルク様の勢いにおじけづいたのね。

 それなら、いっそのこと北の森に向かうというのはどうでしょうか?」


「北の森に? そんな遠出をする予定はないのだけど、なぜ?」


「ここで戦闘経験のないラルク様が無傷だったのですから、森の小妖精を狩りに行けば欲しがっていた例の「ふしぎなぼうし」が手に入るかもしれませんよ」


冷え込む秋空に、暖かな春風が吹くように彼女が笑った。

この湖を越えれば、ヤナコドムの森も近い。


「あの森までは行ったことがない。迷子にならないかな。

 帰りが遅くなれば、マチルダに余計な心配をかけてしまう」



アレを憶えてくれていたのか。

夢の中で亡き母に逢いたいといっていたことを。

道具屋にいた時の店主との会話だったか。



「森は方向感覚が惑わされやすくなる。帰り道に迷い遅くなったら叱られるのは

 ルディだからな」

「いやですね、あたし森の民のエルフですよ。迷う心配なんてありませんが……

 今日はやめておきますか? ゴールド福引使って楽をなさいますか?」


「……っ!」


その言い草は聞き捨てならんな。

楽はしたいが年下の君に言われては引き下がれない。


活発な性格の君らしい誘い方だ。

付き合ってあげるよ、魔法指南役さまのお仕事に。


エルフは森の民。

確かにそうだった。

ファンタジー好きの僕がそれを忘れていた。

そうだよな。ルディが付いているもんな。


杖の検証のためだ。

ルディが傍にいる間に済ませて置くほうが楽である。


「……いや、そうまでいうなら森に行こう。杖の検証がまだ残っているからな」

「杖にまだ……なにかありましたか?」

「MP回復のほうだよ。杖は本物だったんだから」

「それも試すのね。でもラルク様は攻撃魔法がないから……もしかして!」


目を見開いていった。

ルディは勘がいいようだ。


「そうだ。僕が魔物の攻撃を受けて、傷つく必要があるんだ」

「いくらなんでも。ラルク様は勇敢すぎますよ」

「一撃ぐらいなら持つと思うよ」


そうしなければ、回復魔法を使用できない。


「魔法を使わないとMPの回復が検証できないからね」

「なにも、ご自身で試されることもないのに。健気です」

「ありがとう。自分の買い物だから、自分で確かめたいんだよ」


健気だって、褒めてもらった。

僕の勇気は君の笑顔から充電させてもらっていますとは言えないから。


「ルディが森の民だから、できそうな気がしてきたんだ。よろしくな!」


夕刻までには街に戻る予定で森まで行くことにした。


「レベルが上がれば、運も魔力も上がるはずです、ラルク様」

「うん。頑張るよ!」


「ところでラルク様?」

「……なんだ?」

「走れますか?」


北の森を指さし、ルディがにんまり顔をした。

皮肉も言えるのかよ。

そんなヨボヨボじゃねえよ。


「あのな……僕は十代ですし、それに病人じゃないぞ!」


いや、どんだけ過保護に気遣われているんだよ。

好きで家に引きこもっているのではないのだ。


そうと決まれば、ルディは駆け足のポーズで声高らかに。


「駆け足で行きましょう! いい運動になりますよ!」

「お、おう!」


まさか本日、この足でヤナコドムの森まで遠征しに行くとは思わなかった。


ルディと出会い、会話を弾ませたこの日に。

あの妙な噂のある北の森にだ。


結局、背中を押されているのは僕のほうだ。

望みはサクサクと叶えられているのは嬉しいことだ。

この()には感謝、感謝。




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