22 貴族の特権
武器防具の購入は一応の準備だ。
修行を受けるための。
だから機能性の充実した逸品を狙おうなんて腹積もりではない。
この買い物は街へ繰り出すための名分でしかない。
本来の自分に目覚めて悪態をやめた。
このスキルで運命からの脱却は叶うのか。
そこへの不安は否めない。
次は防具屋へ入店した。
べつに魔法使いに見合った装備を整える気はない。
だが予算が銀貨100枚となれば、また相当なものを勧められるだろう。
僕にとって適切な武器防具などないのは知っている。
なにせ魔力が乏しくてレベルも低い。
体力を守りたい。
身軽でいられるものを考えているだけだ。
それなら、
「旅人の服がいいです」
防御力+15 が付加されただけの服。
これから街のギルドに寄り、冒険者になる。
戦いの初心者だから防具にお金をかけてもしょうがない。
「本当にそのような装備でよろしいのですか?」
「いいんだ。僕は初歩的な攻撃魔法さえ覚えていないんだ。
だから採取クエストぐらいしかできないので、今はそれでいいんだ」
防具屋の店主が念を押す。
弱いのに着飾っても意味がないと告げる。
さきほどルディにタグを見せた時に杖を出したままで来た。
店主はそれを目にして意見する。
上等の魔法のローブじゃなきゃ釣り合いが取れないと。
僕としては釣り合いなど、どうでもいい。
冒険者になって受けられる任務を受けてしまえば、
仕事や修行の名分で家から離れる機会が得られるから。
これはそのためのカモフラージュ的な準備なのだ。
「身の丈にあった物じゃなきゃ無駄遣いになりますから」
「なるほど、坊ちゃんは堅実なのですね。ではこちらをお包みします」
旅人の服は上下がセットになった丈夫で軽い装備だ。
見栄えもよく動きやすい。
どんなジョブでも駆け出しには適している。
ここでの出費は銀貨20枚だ。
福引券のおまけはなく、20枚を入手した。
「ラルク様、それだと防御力が少し増える程度ですよ?
魔力を上げなくてもいいのですか?」
「だからこそなのだ」
ルディは僕の言葉の意味を理解し切れていない様子。
だからこそといったのは、
ルディが大騒ぎしないようにするためだ。
効果の大きいものは杖と同じで、高いだけになる。
僕は入店直後に目視鑑定を駆使して、置かれていた商品をざっくりと視た。
店頭に並ぶものは効果の割に値が張るものばかりだった。
購入後、タグを見ても頭を噴火させなくて済むように。
僕の弱さが原因だ。
強者が入店すれば、それなりのものを勧めてくるはず。
本格志向の品は奥に隠してあるものだ。
相手は僕を一人前と認めていない。
他の客が知れば信用をなくす可能性がある。
「ルディ、今は守りがあればそれでいいんだよ」
「そうですか。わかりました」
「次は道具屋へ行くぞ」
「毎度あり! またいらしてください」
店主に挨拶をして店を出た。
ルディは僕のやる気を心配している。
物選びをおろそかに考えているのではと。
「道具の調達が肝心だといっただろ?」
「はい。……回復系ですね」
「そうだ。なにか行動をするたび消耗するからな
そこに大量投入するのが効率というものだ」
そこに残金を全部つぎ込めばいいのだ。
早速、道具屋へ着いたので入店する。
購入するのはポーション類だけだ。
体力と魔力の回復。
その旨を店主に伝える。
「ポーション(小)なら100Gです。Mポーションは小でも500になります」
よく知っているよ。
怪我ばかりして泣いてきたからな。
ポーション(小)は体力を50ほど回復。
Mのほうは魔力回復で20ほどの回復力を持つ。
回復魔法1があるから、Mポーションだけでもいい。
魔力は3で、ヒールを3回使い、魔力回復すると500ゴールドの消費だ。
僕の魔力量だと一回のヒールはポーション(小)と変わらない。
ヒールを使わずポーション回復なら3回分で300ゴールドで済む。
後者が得のようだが、魔法を覚えた時のために備える。
残金、銀貨135枚。
「ポーション(小)を100個とMポーション(小)を200個。
銀貨110枚分を頼む」
「ありがとうございます! 大口の客は大歓迎です」
店主が喜び、庭を駆けまわりそうな笑顔だ。
福引券を110枚入手した。先の分と合わせて185枚だ。
ルディは疑問符をぶつけてきた。
「そんなに持てますか? 手伝いましょうか?」
「いやいい。僕も収納には自信があるから」
ルディは知らない。
僕がどれだけの魔法を習得していないかを。
だから──。
「魔力低かったですよね? そんなに大きくないですよね、収納?」
その指摘と疑問は当然あるだろう。
心配は無用だ。
僕はちゃんとそれの回答を持っている。
「無限の鞄という、掘り出し物を以前に入手したんだ」
「えっ? なんですかそれ……」
「そう、そこに割となんでも入るんだよ」
アレを掘り出し物の魔道具ということにする。
それでチートスキルを知られずに済む。
「これでも貴族だからね、僕は……あっはっは!」
貴族ゆえにどれだけ掘り出し物を押し付けられてきたかをアピール。
情けなくなる特権だけど。
あとは笑ってごまかせば何とかなる。
「ラルク様、流石です。無限だなんて頼もしいですわね!」
ルディもラッキーとばかりに喜んでくれる。
代金を支払い、鞄に大量の商品を収納していると店主がいう。
「坊ちゃん、当店で福引をなさいますか?」
「ん? それは宿屋でしようと思っているのですが……」
「うちなら末等はポーションですから、最低でも回復薬が増えますよ!」
「……あ。そうか! それいいな」
道具屋の福引が有用だとなぜ気づけなかったのかと。
ルディと顔を見合わせた。
「うん!」
ここで半分回してみることにした。
いよいよ、運試しの時が来た。




