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21 消費者目線


武器の購入で銀貨50枚を予定していたが、45枚で済んだ。

残金は銀貨155枚。155000ゴールドだ。


金袋を覗いて防具に充てる予算を算出していると。


「ラルク様、杖はお気に召しましたか?」


ルディが購入した武器を気にかけてくれる。


「まあまあだ。雷属性の杖で、いかづちを出せるみたいだ」

「へえ……そのタイプですと魔法を覚えなくても魔物を討伐できますね?」

「うん。弱い奴なら行けそうだ。光属性もあって周囲を照らせるし」

「値段分の性能は当然ですよね。他には何ができるのですか?」

「魔力回復1が付与されているから回復ポーション切れに役立つのかな」

「他には何があります? 魔力付与が大幅に大きいとかですか?」


なんか、ぐいぐいと訊いてくるね。


「付与魔力は50だ。攻撃魔力も魔力量も」

「ちょっとラルク様? 商品のタグを拝見できますか?」

「今さらタグなんか見てどーするの?」


すでに清算済みの商品なのに。


効能書きの薄っぺらいカードのことだ。

だがルディは、どうしても見せてくれとせがむのだ。

仕方なく、無限の鞄に手を入れて取り出す。


「これか?」

「拝見いたします」


興味津々という顔付でもなさそう。

四つ折りになったタグを開いて目を通すと

ルディはまるでマチルダが乗り移ったように

頭のてっぺんから噴き出すような甲高い声を上げる。


「なんですかー! このしょぼくれた性能はっー!!」

「へっ!?」


びっくりした。

でも当然の反応か。


「ラルク様にウソを吹き込んだのね、あの店主!」

「ウソとは、どういうことだよ?」

「ラルク様はご覧になったのですか、このタグを?」


幼少時以来、武器防具の買い物を遠ざけていたから。


「いちいち見ないけど」

「見てください! ラルク様が思い込んでいるような効果は記されていません」

「えっ? 記されていないって……」


ルディは、開いたままのタグを僕の目の前に向けた。

改めて購入した魔法の杖の効能書きに目を通した。



────────

ハイエロファント・ロッド


攻撃力 +50 裁きのいかづち

魔法力 +50 自動MP回復1 


雷属性 +光属性 

   


品質 Cランク 


────────



あら?

随分と項目が減っている気が。


「でも、いかづちとMP回復はあるし、光属性も付いてるよ?」

「ラルク様はタグの見方を知らないのですね。付いているのは+50だけです」

「だって書いてあるじゃん。これ雷系1の魔法だろ?」

「ちがいますよ! それこそ書いていませんし」

「なんでそうなるの?」

「これは雷魔法を習得すればの話です。むろん、MPもですよ」


なんだそれ。

どういうことなんだ。


「ラルク様、よく聞いてください。それ書いてあるだけですから」

「は?」


ルディの言い分では書いてあるだけで実質的な杖の性能ではないと。

しかし僕の鑑定能力がさらに詳述していたのだから効能はあるはずなのだ。


「なぜ効果のない効能をタグに記してあるんだ?」


タグは詐欺を防ぐ目的でつけることが義務付けられたものだ。

街で一番大きい武器店に限って、そんなこと。


「……ありえないよ」

「おそらく攻撃魔法を知らない者に高値で売りつける詐欺商品なのでしょう」

「仮にも僕はアッシュルーズ家の三男だぞ。

 そんなすぐにバレる商売を街の有名店がするだろうか?」


記されている効能が本当にあるかないか検証をしてみればいい。


「──というのは、どうだ?」

「信じるのですか?」


なぜ、そう決めつけるのか。


「じゃあ、疑う理由はどこにあるんだ?」

「ラルク様、魔法は習得しなければ発動しません」


一理あるが。

魔力自体は物にも宿っているし。


「掘り出し物という魔法具が存在してるじゃないか」


ルディは掘り出し物の存在は否定しないと添えて、


「武具に付与されたものは賢者や聖女クラスなら所持していますが、

 それらは金貨100枚は下りません」


魔法付与ってそんなに貴重なものなのか。


「え……こんなショボい効果が付与されたものが? 

 本来は金貨100枚とかするの!?」

「はい。ふつうにします。それが魔法界の世の常です」

「たしかにそんな高価なものを安く売ってくれるのは変だけど……」


作者名もない。

工房先も記してない。

価格の記載さえもない。

仕入れ値や売り値まで見えたのは僕の能力だったか。


工房には街の鑑定士が配備されていたはず。

目利きがいるのに、この手違いはなぜ起きた。


言葉を失う状況ではあるが、女神がくれた鑑定能力が間違いとは思えない。

僕の鑑定能力はより多くの情報が見えるようになっていたことが理解できた。

それなら、なおのこと杖の性能は本物のはずなのだ。

本物なら相当高価な代物になるが。


なんだ、あの店主?


「これは何かあるのではないか」


彼女の消費者目線が意外な事実を浮かび上がらせた。

僕はルディに少し様子を見て見ようと提案した。


「防具と道具を購入して、宿屋で福引を済ませたら、浅瀬の洞窟に行こう」

「ラルク様がそこまでおっしゃるのなら、同行いたします」

「ルディはこのあとも買い物に口出ししないでくれ」

「わかりました」


納得しきれない微妙な表情をしているな。

だが僕が言えることがあるとすれば、僕には敵が多いということだ。

用心するに越したことはない。



「ラルク様、防具にはいくら使うのですか?」

「防具屋の次に道具屋へいくんだけど」

「……はい」

「道具の調達が一番肝心になるから、必ず50000は残したいんだ」

「それじゃ、防具には銀貨100枚ぐらいかけるんですね」

「予定ではそうなるけど、さっきは5枚浮いたからな」


残りの銀貨で得られる福引券は105枚だ。

ぼったくりはショックだが、

今さら文句をいえば券を返さなければならない。


「目的は福引券をより多く入手することなのだ」


ルディには堪えてもらうしかない。

マチルダの言葉通りにならない現状。


「すまないルディ。二人で楽しい買い物になってなくて」


ルディは目を見開く。


「いまは運を試したいんだ……」

「いえ……ラルク様。あたしのほうこそ肝心なことを忘れて熱くなってしまい、

 申し訳ありませんでした」



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