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19 魔法の杖



僕が停学処分になったことなど街の者は周知している。

そっけない態度は致し方ないさ。



「ルディはさがってて。僕の買い物だ」


言われた通り僕の後ろに控えた。

カウンター越しに店主に話す。


「魔法の杖を見せてください」

「あ、お買い上げでしたか。とんだ失礼を!」


僕は笑みを含んで穏やかに振舞う。

商品を売ってもらうために。

思えばこの店にも迷惑をかけたことがある。


幼少時に装備しても魔力が向上しないと辛く当たり、返品を要求した憶えがある。

あの頃の店主は老人だったが、目の前の人は跡継ぎだろうか。

店主が商売人の顔を見せ、「ご予算は?」と尋ね返す。


「予算は、銀貨50枚です」

「ほう、銀貨50でございますね」


その額に、にんまり顔を見せて応対する。

予算の範囲で手頃な物を見繕ってもらう。

まだ、それほどの魔法を知らない。品物は店主に任せよう。


「そのあたりを頼めるか?」

「へい。まいど! でしたら、あちらはいかがでしょう?」


店主が奥の棚に目をやると、ルディが品定めを申し出る。


「ラルク様、見て差し上げましょうか?」

「いや大丈夫。さがってて。僕が選んでこの場で納得したいんだ」


ルディの心遣いは嬉しいが。

僕はもう何も他者のせいにしない。


あのとき、商品は悪くなかった。

僕の運が悪かっただけだ。


店主が魔法商品を物色しに奥へ移動し、戻って来た。

一本の杖をカウンターの上に寝かせて、手に取るようにいった。

僕は薦められた杖を何気なく目にする。



すると自動で、目視鑑定が発動した。




────────────────────────


ハイエロファント・ロッド


攻撃力 +50 裁きのいかづち (雷系魔法1相当)

魔法力 +50 自動MP回復1 (毎秒)


雷属性 +光属性 (ライトキュアの効果)



価格 買い値 5500 GOLD

   売り値 25000 GOLD (銀貨25枚)


品質 Cランク (新品)


作者 一般魔法工房員 (レイナルーズ領内・街)


────────────────────────




新品というのは傷がないということ。

人の手に渡った中古でも効果は一切変わらないのに。

基本的に貴族は汚れ物を嫌う性質がある。


これは目にしたことはないが、銀貨50枚の値打ちがないのは一目瞭然。

持ちやすく軽い木の杖にヒスイのような宝石がチリンとぶら下がっている。


ハイエロファント……たいそうな名前が付いてる割に効果が貧弱。

周囲を照らす灯り付き。(ライトキュア)

MP回復1は装備品には付いていて当たり前の仕様。

そのあたりがCランクっぽさを演出している。

戦闘をしない金持ち向けのお飾り装備か。


前言撤回だな。

だが、


「これはなかなかの代物ですね。いくらですか?」

「へい、ぼっちゃんにすごくお似合いの一品ですよ。

 なにせCランクですから。値は銀貨45枚……とお値打ち品、

 今回は、特別サービスでこちらもお付けいたしやす」


銀貨45枚って、何言ってんの。

うん?

さらに、なにかを差し出して。

とびきりスマイルの店主は続ける。


「掘り出し物の魔法具です。こちら「バルドの聖杯」という代物です」


抱き合わせ販売ってやつか。


「見たところ、首飾りのようだけど。なんに使うのですか?」

「こちら、亡霊対策に効果てきめんなのです」

「へえ……ゾンビが出るような地下世界へ僕が行くかなあ?」


早朝の商店街には客足が少ない。

専門店に来る客は品を製造注文する。

引き渡しは大抵、数日後の夕刻以降と相場が決まっている。

店頭販売を選ぶのは素人客になる。


まさに今の僕だ。


「貴族のお坊ちゃまなら、魔力も相当お持ちでしょう。

 すぐにお強くなり、いまにご必要になりますから」

「ああ、そうだな」


首飾りの先に小さな銀色の聖杯をかたどった物が付いている。

魔法具は本来誰にもその値打ちが解らない。

そのため取り扱う店舗によって価格も変動する。


「アッシュルーズ家は賢者の系譜として有名でおいでですよね?」

「ああ、もちろん」



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