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17 まさかのアレ


マチルダは運を向上させる何かに興味を示す。

そしてルディをまじまじと見つめる。

興味津々といった感じで。

僕も早く聞きたい。


善は急げだ。



「マチルダが味方だとわかったんだ。教えてくれ、ルディ」

「あ、その。あれですよ! マチルダさんもよくご存じの……」

「え、私も知っているもの……ですか?」



マチルダはルディのいう運を向上させるものについて思い当らず、首を傾げる。

ルディは、ニッコリしながらすかさず告げる。



「お買い物したら、もらえる『福引券』ですよ!」

「まあ、アレね! 確かに運が試されるわ。ぼ、坊ちゃま……?」

「えっ? 福引って、商店街でガラガラ回す……アレか……アレな…」



アレしかないだろな。

どうりで街にあるというわけだ。


だからか。

ルディは戦闘職なのに。

戦闘でレベルを上げるとかの話に行かなかったわけだ。

もっとも僕が戦えるレベルにないこともあるけど。


福引なら僕の人生でも嫌というほど経験済みだ。

だが、末等(スカ)しか引けないのだ。


家は金持ちだから買い物の質も量も半端ない。

これまでもらった福引券など数知れずだ。


幼少期に客が注目する中、外ればかり引くものだから。

その恥ずかしさに耐えきれず、二度とやるものかと、

しまいには嫌気が差して全部召使いに押し付けてやったんだ。



「これまで何度もやったけど。外れしか引けなかった……」



さっきまでの膨らんだ期待が一気にしぼんで心も顔も青ざめに変わった。

僕がいうと、二人の眼前にもなんだか秋の冷たい風が舞ったようだ。



「あら。なんだか目の前だけカラカラの木枯らしが吹いていますね」

「やだぁマチルダさん。水源豊富なレイナルーズ領ですよ、ここ?」



マチルダ、僕が沈黙しているからといって、

ルディに余計な知恵を授けるな。


マチルダ……、

木枯らしだなんて的確な表現はやめてくれ。


ほんと気が重い。


生前、学校へ行き給食費を持ち忘れた。

帰り道に級友らに「給食税だけでも納付しろ!」

と、からかわれながら帰宅した時ぐらいに気が重い。

運はそちらでも尽きていた。


ルディの視線は冷ややかになり、脇で卓球を観戦する人みたいに、

僕とマチルダの間を往復しだした。


「ラルク様って、そんなに運がお悪いんですか?」

「ぐはあ……っ!」


ルディの愛くるしい声で「運がお悪いんですか?」が

エコーがかりで耳の中にこだまする。

これは恥ずかしすぎる。


生前、屋上での初恋の告白が放送部のドッキリイベントによって、

全校生徒に配信実況された時ぐらいの恥ずかしさだ。


こっぱずかしくて頭を抱えるしかないじゃないか。


だけど、ちがうんだルディ。

今度のは悪いなんてもんじゃない。

ゼロだから、ないんだよ!

見込みなんてないんだ。


耳の中に棲みつくアバンチュールなこだまをかき消すのはマチルダ。



「でも、せっかくですから気分転換にルディさんとお二人で、

 お買い物を楽しんで来られたらいかがでしょう。

 坊ちゃまはすでにお変わりになられましたから。きっと運も開かれますよ」


「ほへ?」運が開かれるだと!?


「ラルク様は、さきほど運を上げる挑戦を真剣にするとおっしゃっいました。

 魔法習得に比べたら簡単ですよ。ラルク様、どんと参りましょう!」



ルディもすっかり元気を取り戻して張り切った声を出している。


気乗りはしないけど。

部屋にいてもしょうがない。

ここで尻込みなどしては余計に格好がわるいから。

僕が腹を決めて顔を上げると、



「坊ちゃま、これをどうぞ!」



マチルダがテーブルの上に金貨袋を差し出した。

いつの間に。


そっと手を伸ばして手にしてみる。

持ち上げた瞬間の重みと、袋の表面のザクザクとした手触りから感じ取る。

支度金がたっぷりと入っている。



「……マチルダ。ありがとう!」



まさか、福引をしに街へ行こうとは。

外出後に黒服たちに見張られていても不自然ではないけど。


運ステータスは0だ。

結果見え見えの無謀な運試し。


ルディの前でいい恰好できる要素がなにひとつないなんて。

悲し過ぎる。

いったい、どうすればいいんだよ。




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