15 見張り役②
やっぱり見張り役だったか!
だから金を持ってくる振りをして、そうしなかった。
僕はしゅんと冷めた顔をした。
平然としていたかった。
が、面と向かわれるとショックを隠せずにいた。
「なぜ話すんだ、そんなこと。その役目が務まってこその忠誠心だろ」
ルディも目を見開いてマチルダを見ている。
黙っていればいいものを。
「ちがうのです。この命は、旦那様の指示ではなく、カミルさまなのです」
「ええっ? 兄さまがですか?」
「物置塔へ移したあとの坊ちゃまの動向を見張り、報告をせよと」
「……いや……今さらだよ……そんなこと」
どうでもいい、などと思っていない。
心が大きく揺れた。
だけど、べつに不思議ではない。
長兄のカミルなら監視ぐらいはつけるだろう。
僕が跡継ぎ候補にあるのを疎んじていたのは前から知っているし。
「私も雇われなのでそうするしかないと考えていましたが」
「いやマチルダ……そうすればいいと思う。
僕の味方について疎まれたら厄介だ。君には損益しかないのだから」
「ち、ちがうのです、坊ちゃま!」
「なに……どうしたのですか?」
血相を変えた。
なんだか様子がおかしい。
「私は坊ちゃまの味方になりたいのです。
今朝から私たちに冷たく当たらずに優しく接して下さいました。
そんな風に変わろうとなさる坊ちゃまをずっと待っていたんです!」
待っていたとは。
「旦那様の意見に反して坊ちゃまを追放処分にと強く推したのは、
カミルさまと、ヨシアさまです。今回の件で別居処分にしなければ、
事業から手を引き、屋敷を去ると旦那様を半ば脅迫なさったのです!」
兄たちはすでに経営陣の中枢にいる。
本気で抜けたら経営が著しく傾いてしまう。
「……あ、あの人たちは昔からそうだ。マチルダが気に病むことはない」
「いいえ、坊ちゃま。私は望んでこちらへ来たのです」
「……それって……僕のため?」
マチルダはうなずく。
「僕がまた暴言を吐くかもしれないのに、自ら希望したの?」
「旦那様もそれを望んで託されたのです。
最後まで抗議なさった旦那様は、今回ばかりは守り切れないと覚悟されたとき
私が世話係になるのが条件でなら認めると、最後まで孤軍奮闘されたのです」
なんだか涙腺が緩んできた。
僕は勝手に後妻を迎えた親父を嫌っていただけだった。
「じゃあ黒服も、あの人たちの手下なのか?」
「はい。旦那様の手の者はすべて遠ざけられています。
ですから、お出かけも名分がだいじになり、時間厳守でなければ」
行動を見張って、今後もさらに付け入るつもりだ。
「ずっとここから帰れなくするために……か」
マチルダはまた頷いた。




