13 にらみ
「ふう。マチルダが出て行ったぞ! ルディ、出てこい」
呼ばれたルディがそっと顔を覗かせて、こういった。
「すぐ戻って来ますよ?」
「確かに時がないけど、ルディは部屋にもどるぐらいは大丈夫だ」
「はい」
とにかく詳細は外出してからにしたい。
「状況が変わった。すぐ街へ出かけよう」
善は急げだ。
ルディを速やかに部屋から出すとともに、告げる。
「パンケーキは収納に取ってあるから外に行ってから渡す。
ルディも支度をするために今のうちに部屋へ戻るんだ」
「はい。ではそうします。またお声をかけてくださいませ」
「わかった」
ルディも魔法訓練の時間なので仕事人の顔つきを見せ、部屋を出て行った。
これで何もかも上手くいく。
そう思った矢先のことだ。
◇◇
「ルディさーーんっっ!! あなたって人は、なんてはしたない真似をっ!!!」
マチルダの金切り声が部屋のすぐ外から聞こえてきた。
どうやらルディが部屋に隠れていたことが発覚してしまったようだ。
「どうして、こんなに早くもどって来たんだ?」
僕はしっかりと見届けたんだ。
マチルダが廊下に出た後も、
姿が見えなくなるまで警戒して確認を怠らなかった。
「なにか僕に言い忘れて引き返して来たとしか思えない」
だが、ルディが全責任を問われるのはマズい。
ルディまで反省室に追いやられて遠ざけられたりするわけにはいかないのだ。
ここは僕が説明をするしかない。
マチルダとルディを再び部屋に招き入れた。
うわぁ、なにこの試練。
目の前に親子みたいな女子が怒りモードでふたりもいる。
もう失禁しそうな程、緊張してるんだけど。
「結局、同時にふたりを相手にする羽目になったか…」ボソッと呟く。
僕は「苦虫を嚙み潰した顔」という言葉を思い出して
途方に暮れそうになる。
きっと目の周りの筋肉がピクピクと引きつっている。
それもマチルダが見逃すはずもない。
テーブルの上はすっかり片付けてもらい何もない。
顔を隠す物陰も何もない。
マチルダの、ルディを睨む目つきが恐々としている。
しかし、彼女には先程の失態もある。
マチルダは僕の言葉に従ってくれた。
着席をしての話し合いを受け入れる。
三人で席に着くことにした。
マチルダとルディのふたりは僕の対面に座る。
さて。
まず僕から話すと、僕の図り事だと知れてしまう。
マチルダから切り出せば。
するとルディの行儀の悪さを責め続ける。
その場合、僕がルディからの信頼を失くしてしまう。
ルディが上司のパワハラに耐え兼ねる。
僕に泣きついたら、僕との協定を諦めてしまう可能性がある。
ルディから発言すれば、きっとふたつにひとつの選択肢しかない。
保身に走って裏切り、僕がそそのかしたことを白状する。
それとも。
食い物を選択して僕をかばい、自分がひとりで罪を被るか。
駄目だ。
ルディをひとり悪者になどできない。
これからなにかある度にルディは心を痛めることを強いられていく。
痛みの蓄積は絶対回避しなければならない。
将来的に恨みを買うのは御免だ。




