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受け取った朝

朝は、思ったより普通に来た。


目が覚めた瞬間、

最初に浮かんだのは――

昨日の夜。


送ってしまった、あの一行。


取り消せない言葉。


胸の奥が、じわりと重くなる。


怖い。

返事を見るのが、怖い。


それでも、

見ないままではいられなかった。



スマートフォンを手に取る。


通知は、ひとつ。


彼女の名前。


それだけで、呼吸が浅くなる。


数秒、画面を開けない。


開いたら、何かが決まってしまう気がして。


それでも――

ゆっくり、指を動かす。



そこにあった返事は、短かった。


余計な言葉は、何もない。


ただ、

彼を安心させるためだけに選ばれた言葉。


胸の奥の、いちばん硬いところに

そっと触れてくる。


引っ張らない。

急かさない。

答えを求めない。


ただ、置いてある。


その優しさに、

思わず小さく息が漏れた。



怖さは、消えていない。


今日、顔を合わせたとき。

何を話せばいいのか。

どんな顔をすればいいのか。


分からない。


それでも。


昨日までとは、少し違う。


逃げなかった夜が、確かにあった。


それだけで、

足元がほんの少しだけ

崩れにくくなっている気がした。



同じ頃。


彼女も静かな朝を迎えていた。


眠れなかったわけじゃない。

でも、深く眠れた気もしない。


何度も目が覚めて、

そのたびに

彼からの一行を読み返した。


嬉しい。

胸が温かい。


同じくらい、不安もある。



この一歩は、

とても勇気がいるものだと知っている。


だからこそ、

簡単に壊れてしまうことも。


自分の言葉ひとつで、

彼はまた殻に閉じこもるかもしれない。


近づきすぎてもいけない。

離れすぎてもいけない。


細い道。


今日も、その上を歩く。



それでも。


昨日の一行は、

確かに「前」だった。


逃げないで、差し出されたもの。


それが、何より嬉しかった。



支度を整えながら、小さく息を吐く。


大丈夫。

急がなくていい。


今日もきっと、静かな一日になる。


でも。


昨日とは、同じ静けさじゃない。



会社へ向かう道。


冬の空気はまだ冷たい。


それでも、胸の奥だけが少し温かい。


怖いまま。

不安なまま。


それでも二人は、

同じ朝を選んで歩き出していた。

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