守られた二人の関係
夜。
部屋は静かだった。
カフェから帰ってきてから、
二人ともあまり話していない。
午後の仕事中も、
昼の出来事は考えないようにしていた。
重い沈黙ではない。
ただ、少しだけ疲れている雰囲気だ。
その時。
彼のスマートフォンが鳴る。
画面を見る。
父だった。
珍しい。
「もしもし。」
出ると、少し間があく。
「……母さん、そっち行っただろ。」
父の声は落ち着いている。
彼は苦笑する。
「うん。」
「カフェで会った。」
短く答える。
父はしばらく黙る。
怒るわけでもない。
ため息でもない。
ただ考えている沈黙。
「そうか。」
それだけ言う。
少しして父が続ける。
「母さんな。」
ぽつりと言う。
「昔から、ああなんだ。」
彼は何も言わない。
「心配すると、強くなる。」
父の声は穏やかだ。
「まあ……」
少し笑う。
「やりすぎるけどな。」
彼も小さく笑う。
父が聞く。
「怒鳴ったか?」
「いや。」
彼は答える。
「怒鳴らなかった。」
また沈黙。
父は静かに言う。
「そうか。」
そして続ける。
「お前、大人になったな。」
彼は言葉に詰まる。
父はすぐ話題を変える。
「その子、近くにいるのか?」
彼はキッチンを見る。
彼女がコップを洗っている。
「うん。」
父は少し間を置いて言う。
「代われ。」
彼は驚く。
「え?」
「いいから。」
短い声。
彼はスマートフォンを差し出す。
「父さんが話したいって。」
彼女は少し驚く。
でも受け取る。
「もしもし。」
少しだけ緊張した声。
父が言う。
「今日はすまなかった。」
いきなり謝る。
彼女は目を丸くする。
「母さんが。」
父は続ける。
「昔から、ああなんだ。」
少し沈黙。
父が言う。
「でもな。」
「うちの息子。」
少しだけ笑う気配。
「ちゃんと自分で決めてただろ。」
彼女は思わず笑う。
「はい。」
父が言う。
「なら、いい。」
それだけ。
でも、その一言は重い。
父は最後に言う。
「今度、会おう。」
少し間。
「母さん抜きで。」
彼女は笑う。
「はい。」
電話が切れる。
彼女はスマートフォンを彼に返す。
少しだけ微笑んで言う。
「いいお父さんだね。」
彼は照れた顔で言う。
「うん。」
少し沈黙。
彼女が言う。
「でも。」
彼は首をかしげる。
彼女は少し笑う。
「今日はあなたがいちばん。」
彼は何も言えない。
でも、
今日は少しだけ分かる。
守るとは
こういうことかもしれない。
そして、きっと--
これからは一人じゃない。




