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「難攻不落の氷姫」と呼ばれる他校の美少女に傘を渡したらなぜか養ってもらうことになった  作者: 星宮 亜玖愛


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第35話 始まり

「お待たせしました」


 約束の時間、約束の場所で待っていると後ろから声をかけられた。


「待ちましたか?」


「いや…待ってはな……い……」


 振り返るとそこには薄紫のの浴衣を見に纏った結姫がいた。


 くるりんぱを取り入れたお団子で綺麗にまとめられた髪は清潔感を出し、首元から少し見えるうなじはどこか艶かしく見えた。


 いつもはしていない化粧も今日は少しだけ薄くしておりより美しさが増していた。


 少し朱色に染まる頬と紅色に塗られた唇も相まってより一層俺の心臓を高まらせた。


「綺麗だ……」


 そんな言葉が不意に口からこぼれ落ちてしまうほどに美しかった。


 茜色に染まる夕空が普段の結姫には無いような妖艶さを映し出しているようにも思えた。


「へ?なんて……?」


「あっ…いや、なんでも無いよ」


「…?なら良いんですが…。あ、そういえばこの浴衣どうですか?一度は着てみたかったんですよー!」


「あぁ、似合ってるよ、とっても」


「っ!やった!」


 そう言って無邪気に喜ぶ結姫は今までにみたことのないほど年相応に感じた。


 もしかしたらこれが1番結姫《《らしい》》のかもな。


「まぁ結姫はなんでも似合うからな」


「そ…そんな褒めても何も出ませんよ?」


「何も出ないのかぁ〜」


「やっぱりそれが狙いじゃないですか!」


「はは、冗談冗談。本音だよ」


「本当ですかぁ?」


「ほんと……てか、あ、ちょっ……」


 疑うように覗き込む結姫、それが角度的に色々とまずかった。


 俺の理性が視線を逸らせとうるさく警鐘を鳴らしたので慌てて手で視線を遮り横を向いた。


「ん?どうしたんですか?」


「いや、何もないけど……、ただ、色々とまずかったかなって」


 そこで結姫は自分の体勢に気付き事態を理解したのか慌てて体を元に戻し視線を逸らした。


 その頬は朱色に染まっていた。


「あの…ごめんな?」


「いえ…乃亜くんは悪くないので……。それに…」


「……?」


「や、やっぱなんでもないです!さ、行きますよ?」


「お、おう?」


 不思議がって結姫の方を見ると何故か頬は朱色ではなく真っ赤に染まっていた。


 いや、何故かではなくてだんだんと事態を把握して恥ずかしくなっていったのか。


 本当に申し訳ないことをしたな。


 というか今この状況は恥ずかしくないのか?


 何故かというと真っ赤に頬を染めた結姫は俺の手を取って引っ張っているからである。


「あの…、結姫?」


「なんですか?」


「いや、やっぱなんでもないよ」


 まぁ学祭の時手繋いでたしな。


 いくらあの時の結姫と同じじゃないと言えど結姫は結姫だしこういうのは気にしないタイプなのかもな。


「…っ!ごめんなさぅい!」


 俺の思っていることを理解したのかぱっと手を離して謝ってきた。


 謝らなくても良いのに。


「噛んでるし」


「あ、それはその……」


「はは、良いよ別に」


「なら良かったです…」


 なんだかこの結姫は感情が忙しそうだな。


 それも可愛いけど。


 とか言いつつあれこれしてるといつの間にか駅に着いていた。


 いつも通り人通りは多かったが心なしかいつも以上に多いような気もした。


 それに…


「やっぱり結姫すごい見られてるな」


「え?そうですか?」


 自覚ないのかよ、俺の知ってる結姫はそういうのも自覚症状あったんだがな。


 まぁ高一の記憶抜け落ちてるって言ってたから実質中3みたいなもんだしその時にはその感情を持ち合わせてなかったってのもあるかもな。


「たぶん乃亜くんも見られてますよ?」


「そんなわけないって」


「えー?だって女性の方もたくさんこっち見てますし、それに今日の乃亜くん昨日より全然かっこいいですし」


「えっ!?」


「あ、いや昨日がかっこ悪かったとかそういうわけじゃなくてよりかっこいいというかなんというか……」


「あ、いや…その、ありがとう」


 お世辞…なのかどうかは分からないがたとえお世辞でも嬉しいものは嬉しい。


 確かに今日の俺はいつもより気合を入れて髪をセットしたり服装もよりおしゃれなのをセレクトしたつもりだ。


 ちなみに髪の方は上手くアップバングにできた気がする。


「と…とりあえず移動するか」


「そうですね」


 どこかいたたまれない気持ちになった俺は逃げるように話題を変えたのだった。


♢♢♢


「わぁ!いっぱい出店がありますね!!」


「そうだな」


 出店の種類とその量に結姫の目は輝いていた。


「でも人はやっぱり多いな」


「そうですね」


「早く来て正解だったな」


「はい!」


 今はまだ6時だ。


 花火は7時からだからあと1時間はあるって感じか。


「花火までの1時間くらいは色々みて回ろうか」


「そうですね!」


 そう言って俺たちは人混みの中に入っていった。


 その人の量に圧倒されつつも心の中には淡い期待が一瞬よぎった。


 《《また》》手を繋げるのではないかという浅はかな考えが一瞬頭の中をよぎってしまった。


 でも今の結姫は俺が築き上げてきた関係なんてものを知らない。


 だからそんなこと俺から言えないし言える関係でもない。


「はぁ、思い上がるな俺」


「ん?なんか言いましたか?」


「いや、なんも」


 とにかく結姫とはぐれてしまわないようにしっかりと近くにいなければな。


「わぁ!りんご飴です!りんご飴ですよ乃亜くん!!」


 そんな俺の心の内とは真逆に結姫は心からこのお祭りを楽しんでいた。


「おぉ、美味そうだな」


「そうですね!買いましょう!」


「だな」


 明らかに結姫の目が光り輝いていたのでつられて俺も食べたくなった。


「すみません、これ2本ください」


「あいよ、800円になります」


「はい」


 そう言って800円を取り出して店主に差し出すとりんご飴2本が手に入った。


「ほら、あげる」


「え?お金は…」


「大丈夫大丈夫、そんなん気にしなくていいから」


 実は一時期隠れてバイトもしてたからお金には余裕があるんだ。


「ありがとうございます!」


 そう言うと結姫は美味しそうにりんご飴頬張り始める。


 そんな光景が微笑ましくてたまらなかった。


「美味しいか?」


「はい!とても!!」


「そうか、よかった」


 幸せそうだな。


 俺は今幸せなのか?


 客観的に見たらそうでは無いかもしれない。


 でも、たかがりんご飴1つでこんなにも幸せそうにしている結姫と一緒にいられるのが俺の1番の幸せなのかもな。

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