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「難攻不落の氷姫」と呼ばれる他校の美少女に傘を渡したらなぜか養ってもらうことになった  作者: 星宮 亜玖愛


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第29話 信頼

「結姫……!!!」


 俺は倒れ込む結姫に駆け寄った。


 そして結姫を抱き抱えてそいつらから距離を取った。


 結姫の顔は赤くなってボロボロだった。


 苦しそうな結姫を見て、こんなことをしたこいつらに対しての激しい怒りとこうなる前に助けに来れなかった自分への不甲斐なさが入り交じった。


 なんで……なんで結姫がこんな目に遭わなきゃなんねぇんだよ……!!


「ふざけんなよてめぇら……なぁ?…何してんだよっ!!」


 くそ、くそっ、なんで助けられなかったんだ、なんでこいつらなんかに……。


「てめぇが何してんだよ、そもそも誰だよ」


「なんでお前がキレてんだよ……おかしいだろ…、どうして、どうして結姫がこんな目に遭わなきゃいけねぇんだよ………なぁ、教えてくれよ」


 明らかに人生において最大限の怒りで感情のキャパを超え気持ちがぐちゃぐちゃになる。


 自分でもどうしていいかわかんない。


「どうしてって、そりゃそいつがなめた態度取ってるからだろ」


「舐めた態度……?なんだよそれ、教えてくれよ」


 結姫がそんな態度とるわけない、そう確信していたからこそさらに怒りが込み上げてきた。


「それは……そいつが男にだけ笑顔振りまいてこいつの彼氏(たぶら)かしたからに決まってんだろ」


 そう言ってそいつは隣にいた一人の女を指さした。


 切れ長の瞳に茶色に染められた長い髪、鼻筋も綺麗で世間一般的に見ても綺麗な部類には入ると思う。


 でも、それでもこいつからはどこか嫌な雰囲気を感じた。


 あぁ、こいつが朱美か。


 直感的にそう思った。


 なんでかは分からない。


 それでもそいつからは明確な敵意を感じた。


「あぁ、そうかよ。どうせ証拠もなしに決めつけてそう言ってんだろ」


「はぁっ!?証拠ならあるわよ!」


「じゃあ何だ、見せてみろ」


「見せると言うか、彼氏がそいつ(結姫)に話しかけてるのを私がこの目で目撃したのよ!」


「はぁ?」


「彼は一途で浮気するような人じゃないからきっとその女(結姫)が誑かしたに違いないのよ…!!」


 必死に朱美が言っていた言葉は全て幼稚なものに思えた。


 ただひたすらに自分の存在意義が無くならないための虚言を言っているようにしか聞こえなかった。


「しょうもない……、幼稚すぎる。で?お前らは何でこんなことしてんだよ」


「俺らはただ朱美にお願いされて」


 は?


 お願いされただけ?それでこんなになるまでやるのか??


 ふざけんなよ。


 何で何だよ……!!


「お前らは……絶対全員死んでも許さない……」


「はぁ…お前もうだるいわ、消えてくれよ」


 男のうちの1人がむくりと立ち上がってゆっくりとこちらに近づいてきた。


「消えんのはお前らだけで十分だよ」


「舐めた口ききやがって」


 その時思いっきり頬を殴られた。


 吹っ飛びそうになるのを何とか堪えてその場にとどまる。


「死ねっ!おらっ!!」


 男は何発も続けて殴ってくる。


 止めずに、何度も、何度も。


 これはちょっとした俺なりの罪滅ぼしでもあったのかもしれない。


 結姫を助けるのか間に合わなかった、自分への罰を。


 結姫が受けた分の仕打ちを少しでも受けようと。


 きっと結姫が持っている傷はこんなもんじゃない。


 もっともっと深くて、辛いはず。


 どうしてこうなってしまった、どこで道を間違えてしまった……。


 俺がもっと上手く立ち回れていれば、もっと、もっと……!!


「くそっ、こいつ倒れねぇ」


「ちょっといい?」


 そう言ってもう1人の男が近づいてきた。


 そいつは後ろで壁に寄りかかり見ていただければだったからあまり顔まで見ていなかった。


 でも、、今ならわかる。


 こいつは、中野俊介だ。


「お前だったのか……」


「あぁ、そうだよ」


「くそ、、お前はいつまで経ってもクズなままなんだな」


「おかげさまでね」


 何から何まで気に触ることを言う。


「ふふ、こうしてると5年前を思い出すなぁ」


 5年前……それは俺がこいつにいじめられていた時のこと。


 こいつはいつまで経っても変わらないいじめっ子、根が腐ってるクソ野郎だ。


「とりあえず相変わらずお前ムカつくから死んでくんね」


 そう言って中野はみぞおちに思い切りパンチを入れてきた。


「かはっ……」


「なんだ、効くじゃん」


「うるせぇ」


「てかお前1人できたのかよ、助けられる保証もないってのに」


「うるせぇ……」


「あー、やっぱムカつくなぁ」


 そう言うと中野は顎めがけてアッパーをしてきた。


 俺はそれに思わず飛ばされて膝をついてしまった。


「乃亜……くん、やめ…て、にげて……」


 すると後ろで結姫がそう呟いた。


 だめだ、まだダメなんだよ。


 こいつらを、こいつらを地獄に叩き落として、結姫以上の辛さを味わってもらうには、まだダメなんだよ。


「大丈夫結姫、絶対何とかするから」


「はぁ、カッコつけてんなよ」


 近づいてきた中野に蹴りを食らわされる。


 …い……こい……来い…、来い、来い来い来いっ!!!

 

 その時、後ろで一瞬白い光が見えた。


「きた…か、」


 自分だけに聞こえる声でボソリと呟いた。


 笑っていられるような状況では無いのに、思わず口角が上がってしまった。


「てかよ、そもそもここに1人で来ること自体アホだよな」


「いつ、いつ俺が一人で来たと言った?」


「は?」


「お前は知らねぇかもしれないけどよ…今の俺は5年前の俺と違って信頼出来る"仲間"

がいるんだよっ!!」


「は?何言って…」


「ごめん、待たせた乃亜!!」


「でもやることはちゃんとやってきたぜ」


 後ろから颯爽と高木と奨吾が近づいてきた。


「誰だお前ら……」


「すまんな中野。俺はお前のことを友達だと思ったこと一度もないからさ、徹底的にやらせてもらうよ」


「は…?」


「これからは…俺たちの時間だよ」

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