第9話
その後、私は早速フェリクスとともに、研究の資料を見に行くことになった。
お母様たちはお茶会をするらしい。
「ここだよ。」
「わぁ、すごくいっぱいあるね!」
フェリクスに案内された部屋は、まさに資料室といった様相だった。
壁には、天井に届くほどの高さの本棚が3つ。
そのほかにはテーブルと椅子が置いてあるくらいだ。
・・・それにしても、いい部屋だなぁ。
本が傷まないようにあまり日の光が入らない。
あ、でも、令息に与えられるような部屋じゃないのかも・・・?
そんなことを考えていると、フェリクスが口を開く。
「どれでも、好きにみていいよ。質問があったら答えるからね。」
「いいの?やったぁ!」
その言葉を待っていました!
私は喜び勇んで本棚の資料を端から見ていった。
初めの棚にあったのは、魔術の入門書や既存の魔術についてまとめられた本の数々。
私が読んだことのある本も何冊かある。
何気に、いろいろ勉強したんだよね。
何が役に立つかわかんないし。
次の棚にあったのは、既存の魔術の改善点について書かれた資料だ。
・・・これ、全部フェリクスが考えたんだよね?
天才だよ!
まあ、攻略対象である時点で、そうなんだけどねぇ。
♢♢♢
ここで、フェリクスについての情報を整理しよう。
アルヴェイン子爵家の三男で、セレナと同い年。
幼少期から魔術に強い興味を持ち、6歳から既存の魔術の改善や新しい魔術の考案を始めた。
しかし、子供の言うことだからと、誰も取り合わず、彼はどんどん自信を失っていく。
それでも、彼は希望を捨てなかった。
なぜか?
それは――15歳で成人すれば、魔術師団に入れるから。
さらに、研究成果の発表も可能になるからだ。
しかし、彼のそんな希望も、あっさりと打ち砕かれる。
研究成果の横取りである。
彼はそんな現実に失望し、どんどん性格がひねくれていく。
性格が悪くても、フェリクスはものすごく優秀だった。
魔法、魔術、どちらにおいても。
そんな彼に、周りの人々は嫉妬し、それは次第に憎しみへと変わっていく。
そして、フェリクスは戦時中に誤った情報を伝えられ、死んでしまうのだ。
♢♢♢
うーん。
正直、研究成果の発表を自分でしたらいいんじゃないかな。
ま、この年でこれだけ研究してるって時点ですごいから、横取りしたらどれだけの功績になるかなんて火を見るよりも明らかだ。
うん。
発表は自分でやるように説得したら、大丈夫かな。
と、言うわけで・・・今はこの状況を楽しまなきゃね!
いくつか気になる資料を取り、テーブルに運び、目を通し始める。
部屋にはゆったりとした空気が流れた。
数分後、甘い、いいにおいが鼻をかすめる。
私が資料から顔を上げると、そこにはいつの間にかお茶とお茶菓子が並べられていた。
私が資料を置くと、フェリクスも顔を上げた。
「そろそろ、お茶にしようか。」
そう言いながら、使用人を呼んでお茶を入れさせる。
そして、改めてこちらをじっと見つめて「どうだった?」と尋ねた。
「すごい、の一言ね。まさか、この術式が効果はそのままでここまで短縮できるとは思ってもみなかったわ。」
思ったことを素直に伝えると、フェリクスは照れたように微笑んで「ありがとう。」と微笑んだ。
その後は色々と議論を重ね、お母様たちが呼びに来るまで楽しい時間を過ごしたのだった。
「じゃあね、フェリクス!」
「またね、セレナ。」
お互いの名を呼び合って手を振る。
セレナは充実した時間を過ごせて満足げに。
フェリクスは始めとは似ても似つかない顔つきでセレナを見つめていた。
それは、自分の話をきいて理解し、率直に思ったことを告げてくれる相手に初めて出会ったからなのか。
はたまた、違う感情をいだき始めているのか。
それは、誰にもわからない。
君らは本当に8歳か?
――あ、セレナは違うか。




