第6話
朝食から数時間が経ち、私はパーティーが開催されるホール近くの部屋にいた。
参加者が集まるまで待たなくてはいけないのだ。
かなり時間がかかるのだが、身だしなみを整えたとこだからおとなしく座っていなければいけない。
まあ、暇だ。
でも、エリナがいるからいいもんね!
私は隣に座ってお菓子のかすがついているエリナの頬を拭い、お菓子を食べている様子を眺めていた。
頬を膨らみ、小さな口でクッキーをもぐもぐしている。
・・・リスみたいでかわいいなー。
そんなことをのんきに考えながら過ごしていると、エマが呼びに来てくれたから立ち上がる。
「エリナー、そろそろ行かないといけないから、お菓子置いてね。」
「うん!」
素直に返事をしてお菓子を置いた妹の手を握り、会場の入り口へと向かった。
扉の前に立ち、背筋を正す。
中からお父様の声が聞こえると同時に扉が開かれた。
さらに、ホールの中から拍手の音が響く。
ちょっと、怖いな・・・。
そう思い、足を踏み出せずにいた。
そんな私の手をエリナがぎゅっと握る。
かわいいー!
手を握り返すと同時に気持ちが前に向くのを感じた。
私は微笑みを浮かべ、エリナの手を引いて両親へも道をまっすぐ歩く。
左右には、見覚えのある人、ない人がいるから少し緊張する、のだが――
エリナが手を握るだけでなく、きゅっと腕に抱き着いてきたから、まあ、気にならなくなりましたよ。
かわいいよ。
そんなこんなで、両親の前に到着してお客様のほうに向きなおる。
「セレナ・アルヴェインです。本日は私の誕生日パーティーにご出席してくださった皆様には感謝の念が堪えません。どうぞ、楽しんでいってくださいませ。」
定型文を言い、微笑みながら淑女の礼をする。
すると、再びホールに拍手が溢れた。
♢♢♢
ふぅ。
ようやく全員との挨拶が終わり、一息つく。
・・・何人いるんだろうね。
エリナは途中から飽きてきたみたいで、部屋に帰っちゃったし・・・。
お父様たちの話を聞くのは面白いんだけど、まあ、多すぎて疲れる。
・・・ちょっとくらい、抜けてもいいかな?
お母様に尋ねると、すんなりと許可が下りた。
ちょっと庭に行こうかなー。
今ならだれもいないだろうし。
ベランダの横にある階段から庭に降りる。
そして、いつものベンチへと向かった。
迷路のようになっている道を間違えないように歩く。
花の甘い香りがほんのりと漂い、少し落ち着いてきた。
のんびりと歩を進め、ベンチに着いた、のだが・・・。
誰かがそこに座っていた。
私とおんなじくらいの男の子。
特徴的なシルバーグレーの髪をしている。
その手には分厚い紙の束があった。
私と同世代の男の子は今日見ていないのだ。
誰だろ?
うーん、と考えこむ。
不法侵入者か、親がホールにいるのか。
悩んだ時間はわずか。
私は彼に話しかけてみることにした。
「あなた、誰?」
身を潜ませていた生垣の陰から堂々と姿を出す。
すると、男の子はびくりと身体を震わせ、おずおずとこちらに目を向けた。
「あ、ご、ごめんなさい。」
声を震わせながらベンチから降りる。
「あなた、見たことない気がするんだけど、どこの家の子?」
「あ、アルヴェイン。」
「私と一緒ね!」
いまだにおどおどしたまま立ち尽くす男の子を安心させるようににっこりと微笑みかける。
そして、ベンチに近づき、すとんと腰を下ろした。
「ねえ、何してたの?教えて!」
自分の隣をトントンと叩き、座るように促す。
男の子は素直にもう一度ベンチに腰を下ろした。
「それで、何してたの!?」
「え、えっと・・・。新しい魔術、考えてたんだ。」
「そうなの?見せて!」
私は無言で差し出された資料を受け取り、目を通すと同時に、目を見張った。
え、すごいすごい!
効果はもちろんだけど、ちゃんと回路つながってるから運用もできる!
「あ、あの・・・。」
「すごいね!こんな複雑な魔術作れるなんて!」
「え・・・?」
「こんな優しい魔術、見たことないよ。私、これ使ってるとこ見てみたい!」
興奮した勢いのままで一息にそう言うと、男の子はおどおどしながらも頷いて見せる。
そして、資料の間に挟んでいた魔法陣に魔力を込めた。
次の瞬間、あたりがぼんやりと、淡く輝く。
正確には――生き物の周りにぼんやりとした光が現れたのだ。
魔術を使っている男の子の周りは緑と水色で周囲よりも強く輝いている。
きれいに別れているわけじゃなくて、マーブル。
植物は淡い桃色だ。
私は、白だ。
男の子以外は体にその色をまとっている、という感じだった。
きょろきょろとあたりを確認して、しばらくすると、光がすっと消えた。
私は男の子の手を取り、思わず声を上げた。
「すごい、すごい!魔力を可視化するなんて!」
そう、男の子が考案した魔術は魔力の可視化。
資料に書かれていた使用用途がまさに「優しい」気持ちの表れだった。
それは、魔力暴走を未然に防ぐため、である。
「ありがとう。」
そんな優しい少年は、心の底から嬉しそうに笑ったのだった。
色の意味は・・・?




