第12話
私は思わず、男の子に声をかけた。
「ねえ、その本、好きなの?」
女神はこの世界には何十柱も存在するとされている。
現に、記録によって髪や瞳の色が全く異なっている。
最も多いのは赤い髪に金色の瞳。
だからか、1柱の女神が姿を変えて人を助けている、と言っている――『女神同一論』を唱える研究者が過去にはいたそうだ。
赤い髪に金色の瞳といえば、エリナの色だ。
まあ、エリナは人間だから、関係ないけどね!
可愛いけど!
男の子は声をかけた私を見上げ、驚いたように目を見開きつつも、口を開いた。
「好き・・・いや、好きというより・・・」
言葉をつまらせ、困ったように眉を寄せる。
「ねぇ、その本ちょっと見せて!」
「あ、あぁ。」
私は男の子から画集を受け取り、ページをめくる。
そこには、同じ女神の絵しか載っていなかった。
そして、その著者は、『女神同一論』を唱えていた研究者だったのだ。
これって・・・まずくない?
私は顔に困惑を浮かべ本をじっと見つめる。
なぜなら、その研究者は禁忌の研究をしたとして、著書をすべて燃やされたはずだからだ。
私は本を男の子に返し、「他の画集、見たことある?」と聞いた。
男の子は首を振り、なぜそんなことを聞くのか、という気持ちを顔に浮かべる。
ちょっと、これはまずいよねぇ。
女神が1柱だけって思ってたりしない・・・?
「じゃあさ、ちょっとまってて!」
私は急いで他の女神の画集を取りに行った。
神官たちが女神は1柱だけじゃないって教えてくれるならいいけど、男の子のこの考えに気づかなかったら・・・。
もし、あの研究者のようになったらと考えると、私の体は自然と動いていたのだ。
数分後、私は本を発見して戻ってきていた。
男の子は素直にその場から動かず、待ってくれていた。
私は持ってきた本をテーブルにドサリと置き、ベージを開く。
「みて、これ!」
私が見せたのは濃い青の髪に、水色の瞳をした『海の女神』の絵。
「これ・・・。」
男の子は驚き、信じられない、という目を私に向ける。
まあ、そうだよねぇ。
女神は1柱だって主張している者の著書を読んでいたんだから。
私は他に持ってきた本に書かれている女神を見せていった。
昼の女神、夜の女神、火の女神・・・。
この世界には本当にたくさんの女神様がいるのだと、そう見せつけるように。
「ね、この世界には大勢女神様がいるんだよ!」
その瞬間、男の子の目が疑いから困惑へと変わった。
「じゃあさ、この画集は?」
「それは、一番有名な創世の女神様。」
その瞬間、男の子の表情が揺れる。
迷っているような、そんな顔。
私は「だから、」と続けた。
「一番有名な一柱の絵を集めただけなんじゃないかな?」
「そう、か。」
男の子はまだ信じきれていないのだろう。
それでも、確信からは遠のいたと思う。
これなら大丈夫だろう。
そう思って、私は彼に一番聞きたかったことを尋ねた。
「ねぇ、出口ってどこ?」
「ばかか?お前。」
男の子は言葉通り、ばかにしたような表情を浮かべながらも椅子から立ち上がった。




