vsタテ(3/3)
チャプっと慎重に水上へ姿を現したのは、オネエ自慢のレーザー盾だった。
やっぱりな!!
俺は盾の向きを確認すると反対側へ跳ぶ。
機体が顔を出した瞬間、フォトンブラスターを放った。
「盾の最大の短所は、向けてる方にしか効果がねえ事だ!」
「そんなの分かってるわよぅ」
途端、盾がグルンと半回転する。
「へ?」
ワザと逆向きに盾を構えて出てきたのかよ!!
くそっ、引っかかった!!
俺はショットガンでスタン弾を撃つ。
盾がフォトンブラスターのレーザーを逸らす。
かと思いきや、俺のレーザーは格子状に広がってオネエ機を包んだ。
「なぁにこれ!?」
俺のレーザーネットを振り切ろうと、オネエ機は水中に潜ろうとする。
くそっ、引き込まれる!!
水に浸かってるレーザーは30%のパワーダウンとはいえ、どんだけパワーのある機体だよ!!
オネエがミサイルを放つ。
スタン弾がオネエ機にヒットする。
引っ張り出してから撃ちたかったが、しゃーねーな!!
俺は網を切り離すと同時に、巨大プラズマ弾を撃ち込んだ。
結果を確認する間もなく、襲いくるミサイルに追われ空へ逃げる。
フォトンブラスターのリロードはまだか!
カニバサミで投石しつつ、ショットガンで撃ち落とす。
散弾に変える間もなくスタン弾のままだ。
くそっ、数が……っ!!
ようやくリロードしたブラスターで残りのミサイルをなんとかギリギリ包みこんだ。
っ、はー……。
間一髪だったな……。
足元ではオネエ機がまだ俺の美しいプラズマ弾に焼かれていた。
そうか、盾も一緒に包んだせいで前面からのダメージが通らないんだな。
それでも、機体は背面からバチバチと焼き続けられてる。
「ちょっ……これいつになったら終わるのぉ!?」
「獲物が力尽きるまで」
というのは嘘だが。本当は15秒だ。
「ぇぇえええっ!?」
着地して、オネエ機にスタン弾を追加する。
これ以上暴れられても面倒だ。
プラズマキャノンも構えなおして、現在次のプラズマ弾を生成中だ。
「しっかし、本当にすげぇ盾だな」
言いながら、俺はショットガンとサブマシンガンでしっかり追撃する。
「ああん、盾には自信あったのにぃ!」
悔しげなオネエに俺は苦笑して言う。
「いや、俺のプラズマキャノン相手によくこれだけもったよ」
実際、ご自慢の盾はレーザーにはびくともしていない。
が、盾の反対側から機体にはプラズマ弾の攻撃が入りまくっている。
そこへもうひとつ、俺は出来立てのプラズマ弾をプレゼントした。
「ああああんっ、もうもたないわぁん!」
叫びとともに、オネエの機体は爆散した。
[勝利]
と書かれた画面を見つめる。
思いがけず、手強い相手だった……。
防御力を極めるとあそこまで耐えるもんなんだな。
最後は毒のスリップダメージだったみたいだ。
実はもうレーザーネットは消えかけていたので、一瞬後にはスタンのかかったオネエ機は水中に沈み込むところだった。
そうなると、また体勢を立て直してきただろうな……。
ボイチャが通じてたのをいいことに、思わずブラフをかけちまった。
15秒で消えるなんて知ったら、まだ粘りそうだったからな、あのオネエ。
なにやら底知れぬ粘り強さを感じるタンク(盾役)だったな。
俺は対戦結果のウィンドウから相手の名前を再確認する。
タテさん。か。
確かに、盾役にはぴったりの名前と性格だ。
PvPでは火力不足で苦戦しそうではあるが、今後チーム戦が始まれば……。欲しいよな。ああいうタンク役が。
チーム戦かぁ……。
そりゃもちろんやりたいが、友達の少ない俺に4人のチームメイトが集められるかというと……、正直自信がない。
リボルバーとゼンのログイン時間帯のずれを考えると、あと最低でも2人は同じ時間にログインできる仲間が欲しいよな。
人には向き不向きがある。
こういうことは俺よりも、アサギかゼンに任せる方が良さそうだよな。
あいつらなら、チーム戦が始まると知ればあっという間に仲間を集めそうだ。
俺はその時、チームメイトに選んでもらえるように、しっかり戦力を上げておこう。
ここまでの戦いでフォトンブラスターに求められるレーザーのパターンがいくつかはっきりしてきたし、これからは広範囲に浅く撒くレーザーと、細く長いレーザー、ネットタイプの変則レーザーと、標準レーザーの4つはスイッチ1つで切り替えられるような装置を作った方がいいかも知れないな。
俺は頭の中でアタッチメントの設計をああでもないこうでもないと考えながら、格納庫へ向かった。
***
土曜日は、11月らしい秋空の晴天だった。
俺は被っていたキャップのツバをグイとあげて空を見上げる。
秋風が吹く度に、構内の木々は赤や黄色の葉を落としている。
俺とゼンは、アサギの大学に来ていた。
待ち合わせ時間より5分ほど早く着いた俺達が、初めて入った某有名大学の中庭を眺めながら話していると、向こうからいかにも爽やかそうな好青年が小走りで駆けてくる。
「お、あれアサギっぽいな」
「あーっ、ぽいっスねーっ」
ゼンは今、俺の隣で機体と同じオレンジ色のチェックシャツを羽織って、白い大きなウサギの耳をぴょこぴょこ揺らしていた。
背の低いゼンのウサ耳は、ちょうど俺の目の前で揺れている。
昨日ゼンはグループ通話に「これなら絶対分かるっス」と言ってウサ耳のカチューシャを被った自身の写真を送っていた。
アサギらしき青年は、そんなゼンのウサ耳を見つめて駆け寄ってきた。




