太刀使い
「空中で脚パーツを交換したのかい? そんなことができるなんて知らなかったよ」
こいつ、話しかけてくるタイプか!
強い奴なんて大抵おかしな奴だし、あんま関わりたくねぇんだよな……。
スタン弾のリロードまで、俺は3秒おきにスタン弾を撃ち続ける。
おそらく相手は俺の5秒のリロードより早く動き出すだろう。
「ポンポンで毒が撃てるなんてのも、初耳だし」
っ! 毒が消された!
俺はもう一度刺胞弾を放つ。が、そこに相手は居なかった。
くそっ、4秒持たないか!
どこだ!?
熱源反応は……俺の真後ろ!!
「キミ、トリッキーで面白かったよ」
ザグン、と鉄を切り裂く音は、不快な衝撃と共に伝わった。
ディスプレイの端に映る、大きな刃。
あの男が背負っていた太刀の刃先だけが、俺の前に見えてるって、ことは……。
思わず全身に鳥肌が立つ。
計器が一斉に悲鳴を上げる。
俺の機体は、背後から太刀に刺し貫かれていた。
もし俺が本当にこの機体に乗っていたなら、今頃コックピットと共にこの身を裂かれていただろう。
動力炉の損傷率が一気に80%を超える。
くそっ、ここまでか!!
「また遊ぼうね、クマちゃん♪」
背後から囁かれた言葉に反応を返す間もなく、俺の機体は爆散した。
画面を埋め尽くす光の奔流。
それが音もなくおさまると、[敗北]と書かれたウィンドウが表示される。
「うあーーーーっ! 負けた!! 完敗だった!!!」
こんなに手も足も出ないような奴が、上のランクにはうじゃうじゃいるんだろうな。
「だいたいクマちゃんってなんだ、クマちゃんて! そんなファンシーな見た目してねーだろ!」
叫びながらも、俺の口元は緩んでいた。
こんな強い奴と、こんな風に戦える事が嬉しい。
4年間ずっと憧れ続けた、画面の向こうにしかなかったPvPに、今俺は参加してるんだ。
しかし、なんか若そうな男の声だったな、プレイヤー名はなんだったんだ?
『ザンク・ロウ』
!?
こいつ、しばらくロボワのサムライとか言われてた奴じゃないか!
リボルバー全盛期の頃からPvPランキング上位勢で、リボルバーがいなくなってからはそこそこ一位も取ってたけど、高火力広範囲武器の実装に伴ってランキングから徐々に消えてった奴だ。
多分、リボルバーと同じく武器種にこだわりがあるんだろうな。
刀系武器しか使わない。的な。
とはいえ、まだしばらくは太刀スタイルが廃れることはない。
あれほどのやつならゴールドはすぐ駆け抜けてしまうだろうし、今月のうちに再戦することはないだろうが、俺のランクが上がってゆけば、また会えるだろう。
今回は、あのスピードと正確さに翻弄されるばかりだったが、相手の戦法が分かれば対策だってできるはずだ。
……次は負けないからな!!
俺は強く拳を握る。
ホームに戻ると、メッセージが届いていた。
ああ、PvPも対戦中はメッセージの通知音は鳴らないんだな。
アサギからか……。
俺はそこそこ億劫な気持ちでメッセージを開いた。
『先程はすみませんでした。僕の浅慮な発言でクマさんが……』
つらつらと、詫びと以後気をつける的な文章が綴られているが、何だこれは、反省文か?
つーかお前、リボルバーに関してだけは反省したとこでマシになんないよな?
アサギはなぁ……。
リボルバーさえ絡まなきゃいい奴だし、ゼンともよく遊んでくれるからなぁ。
ここは俺の方が学習するしかないか。
とにかく、お前には今後リボルバーの話は振らない。
良かれと思っても。だな。
んで、次は何なんだ?
アサギからのメッセージは2通来ていた。
『僕もゴールドランクに上がれました。リボルバーはもうすぐプラチナだそうです
』
へえ。やっぱりすごいなリボルバーは。
ちゃんとアサギに進行状況を報告してるのも偉い。
『おめでとう。俺は早速ゴールドで負けたとこだ。しばらくはゴールドに居ることになりそうだな』
送信っと。
んじゃ俺も、ゼンが帰るまで戦ってくるか!
出撃ボタン、準備完了ボタンを順に押す。
そろそろこの手順にも慣れてきたな。
一瞬のローディング画面の後、マッチングの待機画面に移行する。
真っ黒な画面に【マッチングを行なっています】の文字がゆっくり明滅している。
『ザンク・ロウ』みたいに名の知れた相手とマッチングすることもあるわけだから、こっからは対戦前に相手の名前くらい確認しとくか……。
[マッチングに成功しました。ステージに入場します]
つーか、この画面が一瞬なのが悪いんだよな。
なになに、アサギ……?
アサギか!?
暗い画面が速度のある演出でザアッと開けると、目の前には雪原が広がっていた。




