十六幕・十月の十六日 そのよん
仕事を終え帰ってきたアジト。
今、俺の目の前では、ほぼ無表情なかばねとプラチナが向かい合い、重苦しい沈黙が流れている。
やがて、かばねの唇がゆっくりとその静寂を破った。
「…いやー、プラたんにあーゆー趣味があるとは知らなかったなぁ…。」
一瞬の間。
丁度通りかかったレオが、かばねのその言葉に動きを止め、目を見開いてプラチナを見る。
元々、このダイニングに居て、ばたばたと部屋に走り込み、机を挟んで睨み合ってた二人を興味津々に見ていたラグも、目を丸くした。
時が止まったのではないかと思うようなその一瞬の後、
「ちょっと!?その誤解を招く言い方やめてくれるっ!?」
プラチナの必死な叫びが響き渡った。
そして、再びの沈黙。
先ほどまで固まっていたレオとラグも、黙ったまま、しかし好奇心に満ちた目で二人の次の言葉を待っている。
「……。」
「……。」
「……恋愛小説、読むんだね。」
「ああああぁぁぁぁぁっ!!」
かばねが言った途端、プラチナは血相変えてかばねに跳びかかり口をふさごうとして、避けられる。
さらに、プラチナから逃げたかばねは続ける。
「しかも少女漫画みたいな王道清純……。」
「ぎゃあぁぁぁっ!ほんとやめてぇぇぇっ!!」
プラチナは顔を真っ赤にして叫びながらかばねを追いかけるが、やはりというか、逃げられる。
……いつも動かない情報担当のお前に、かばねが捕まえられるわけないだろ…。
完全に冷静さを失っている。
何だこれ、面白い。
事の始まりは先ほど依頼から帰ってきてすぐ。
プラチナが部屋に帰ると、かばねがプラチナのパソコンを弄っていて、パスワードの付いたファイルを開けてしまっていたらしい。
そこにあったのが、さっき言っていた恋愛小説のファイルだったんだろう。
そのことを何とか隠したかったプラチナが、かばねを口止めするためここまで追いかけ、今に至る。
まぁ、もう手遅れだけど。
ラグはどう弄ってやろうか、とでも言わんばかりの笑みを見せているし、レオに関しては隠そうともせず爆笑している。
いい気味だ。
先ほどのアイツを追うのを止められて、荒れていた気分が少し晴れる。
視線の先で、かばねとプラチナは延々と追いかけっこを続けている。
「別にそんな隠さなくて良いと思うよ?えーっと…タイトルなんだっけ?確か、き……」
「~~だあぁぁぁぁぁっ!」
「じれったい二人が……。」
「ぎゃああぁぁぁぁっ!!いやほんとに許してっ!?」
ここまで取り乱すプラチナは久しぶりだ。
俺もあとでからかってやろう。




