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食屍鬼と愉快な殺人日記  作者: 莉子
二話・十月のジャックの章
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十六幕・十月の十六日 そのに

小綺麗なビルの中。


足音を殺して廊下を進みながら、ふと気になること浮かんだ。


ちょっとした嫌がらせも兼ねて、通信機の向こうで必死になってパソコンを弄っているであろう相手に小声で尋ねる。



「…死因は何になる?」


『……はぁ?』



案の定、地を這うような低音が返ってくる。


集中しているところを乱されて不機嫌もいいところだろう。


いつもより荒い口調で



『今仕事中なんだけど。暗殺なんだけど。わかってる?』



なんて呆れたように、馬鹿にするように言ってくる。



「別に、これくらいでヘマしない。」



と、返してやると、ため息が聞こえる。



ピピッと電子音。


目の前の扉のロックが解除された。


扉を開け、体を滑り込ませる。



そこから歩き始めてすぐに、向こうから声がかけられる。



『…で、死因って何が?』



なんだ、一応ちゃんと聞いてたのか。


俺は周りに気を配りながら答える。



「今から殺すここの社長の表向きの死因。一応表の会社だろ。」



そう聞くと、おそらく次のロックを解除すべく操作しているのであろうキーボードの音を背景(BGM)にして、



『そっちがどういう殺し方をするにせよ、死体は処理して、表向きには行方不明、という事になる。』



そう淡々と告げられる。


ふーん、ご愁傷さまだな。


死んだことすら世間に知られないなんてさ。



まぁ、自業自得ってやつか。


大人しくしとけば、こんなことにはならなかっただろうに。


馬鹿な奴。


俺はくつくつと声を抑えて笑った。




そして辿り着いた最後の扉の前で、俺は立ち止る。



「…おい。」



思わず、声がこぼれ落ちた。


通信機の向こうから



『…は?今度は一体何?』



と、呑気な疑問の声。


俺はイラつきを隠さずに告げる。












「……先客だ。」



そして、扉を勢いよく蹴り開ける。


瞬間、鈍い刃物の輝き。


迷いなく喉元めがけて振られるそれを、手に持った武器ではじいた。


よし、と思ったが……手ごたえが軽すぎる。


まさか、と武器をはじいたその手元を見ると、その袖から別の刃物が瞬時に取り出される。



…しまったっ!


振らされたっ!!



最小限の動きで第二撃が来る。


上半身を反らして避け、すぐに後ろに飛び退く。


追撃は来なかった。


次の動きに移ろうとしたそいつの動きがピタリと止まり、瞬時に後ろに下がったからだ。


状況が膠着し、俺はようやく先客の姿を落ち着いて見ることができた。


金の髪、冷たい蒼の瞳。


俺と同じくらいの年のそいつ。


金属の擦れる音。


いつの間にかもう片方の手にもナイフを取り出し、そいつはこちらを見据えている。


奥には、声さえ上げられず殺されたのだろう、俺のターゲットでもあるここの社長の死体。



「…チッ…もう殺られてるのか。」



期待はしていなかったが。


この俺がターゲットを盗られるなんて。



この容姿、殺し方…そして得物。






コイツは…。









「……切り裂きジャックジャック・ザ・リッパー。」







呟いた俺を、目の前の切り裂きジャックジャック・ザ・リッパーはその海色の瞳で鋭く睨んだ。





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