十五幕・十月の十四日
「……。」
ここはキングの居室。
さっきから居座っている俺に、キングは耐えかねたのか挑発するように声をかけてくる。
「……何か用か、ジャック。」
『誰がクソガキだ。』
『…キレるなよ…。だからガキなんだ。』
即座に英語で言い返すと、面倒そうに、しかし流暢な英国式英語で返される。
こいつといい、かばねといい、どうして大罪内で流暢に喋れる奴はこう…。
プラチナは大体の言語は読めるが、話す方は駄目だ。
発音やアクセントが全然なっていない。
ラグも英語をまぁまぁしか話せていない。
レオンハルトは論外だ。
ドイツ語と米国式英語。
俺は米国式英語なんて言語とは認めない。
英語は英国式だけで十分だ。
日本語は……仕方がないから話せるように努力した。
まだ、読む方は上手くはない。
そして先にも言ったようにキングとかばね。
こいつらは少しおかしい。
キングはどの言語も割と流暢に話すし、書く。
そして、そのキングが育てたかばねも…また然り。
……あの普段の天然さからは想像できない。
だが、アイツも…そしてこのキングも、決して頭は悪くないのだ。
そして、血の繋がりなんて無いくせに、どこか妙に似ている。
だから…。
『…で、何?用が無いなら出て行け…鬱陶しい…。』
こちらに向けられる眠たげな金の瞳を正面から見返す。
引くわけにはいかない。
やがて、
『……勝手にしろ。俺はどうでもいい。わざわざ言うのも動くのも面倒だ。』
キングはそう言って欠伸を一つ。
眼を完全に閉じて、もうこちらを見向きもしない。
…相変わらずだ。
だが、その言葉が聞ければ十分。
ただ、この男から、『勝手にしろ』…お前の判断に任せる。
『俺はどうでもいい』…俺は関与しない。
…そして、『言うのも動くのも面倒』……何かを知っても誰にも言わない、何も手を出さない。
その三言さえ聞ければ。
この面倒くさいキングの捻くれた、そして言葉の足りない言い回しは大罪内の常識で。
そして、知られたくないことができた時、絶対に得ておくべき言葉だ。
それだけ大罪内で、最も読めなくて、最も警戒すべきなのは目の前にだらりと寝そべるこの男だ。
何を知っていて何を知らないのかもわからない。
何をきっかけとして動くのかもわからない。
だから、コイツには気付かれたくない。
もしかしたら気付かれているのかもしれないが、それももう大丈夫だ。
手を出さない、という言質はとった。
キングはもう、さっき言ったままに、このことに対して関与しないだろう。
だが、ここにはキング以外にも、言動の全く読めないかばね、情報担当であるプラチナ、人の嫌がることには鼻の利くラグ…。
あぁ、全く隠し事は楽じゃない。
だからこそ…
『…気付かせない。』
俺は、足早にキングの部屋を後にした。
※隠し事に対する鋭さ?勿論レオンハルトは論外に決まってるでしょう?




