十二幕・十月の十一日
一階のバーに上がると、かばねが食事をしていた。
「おや、帰っていたのですか。」
と、声をかければ
「帰ってたんですー。」
と、軽い声で返してくる。
その口に頬張るのは生のままの肉。
アジトの中で人目を気にしなくていいからか、口の周りを血でべとべとにしている。
まるで獣のように。
或いは物語に出てくるゾンビや吸血鬼のように。
……プラチナが見たら行儀が悪いと怒りそうですねぇ。
私はポケットからティッシュを取り出し、かばねの口周りを拭く。
かばねもむぅむぅ言いながらも、抵抗せず拭かれている。
本当に子供のようですねぇ、かばねは。
……正直、昔から成長しているように思えません。
見た目も中身も。
成長期、とは何だったんでしょうねぇ。
一つ年下のジャックの方は背も伸び、声変わりもし、欧風の顔立ちなので年より上に見られることも多いのですが。
「そういえばジャックはどこに?」
姿が見えないですが、と尋ねると
「まだやりたいことあるから先帰ってろ、ってー。」
かばねはそう答えてあむっと肉を頬張る。
私は内心少し首をかしげる。
…珍しいですねぇ。
ジャックが用事、ですか。
「何の用だったかは、聞いていないのですか?」
「うん。聞いてない。」
「何故です?」
私がそう追及すると、かばねは食事の手を止め
「だって、聞かれたくなさそうだったから。」
そう言ってへらっと笑う。
…全く、かばねは本当に優しいですね。
おそらく、ジャックを何かしら庇っているわけではなく、なんとなく聞かなかっただけなのでしょうが、かばねの勘は大体の場合信用に値します。
かばねがそう言うならいいでしょう。
ジャックにちょっかいをかけるのはやめておきましょうか。
私はそう結論を出して、また汚れているかばねの口元を拭い、
「そろそろプラチナが起きてきているようですから、食べ方に気を付けた方が良いですよ。」
そう忠告してアジトを出た。




