六幕・十月の七日 そのご
かばねの指定した一番最近の殺人現場に着いた。
ちらほらと野次馬と警察の姿。
遠巻きに観察する。
勝手に忍び込んで調べるにはまだ日も高いし。
成程、確かにやりやすそうな場所。
薄いながら香る血の匂い。
ずっと嗅いできたからこそ分かる、殺しの現場の匂い。
思わず笑ってしまいそうになって、流石に目をつけられそうだと自制。
犯人は現場に戻る、なんて言うが、実際戻るなんて馬鹿のすること。
ここじゃ犯人は見つけられないだろう。
俺がするのは実際見てきた現場の情報をかばねに伝える、それだけ。
かばねが犯人を見つけるのを待つだけ。
じれったい。
人殺しの気配、なんてのが分かれば犯人探しが楽だけど俺は無理。
かばねも無理、らしい。
他の奴ら曰く、幼いころから慣れ過ぎたせいだろうという。
血の匂いがすればさすがに分かるけど。
まぁ、かばねは普段馬鹿だけど、仕事に関しては天才的だ。
待っているだけなのはイライラするけど。
なんて考え事をしながら観察を続けていると、警官の一人と目が合った。
そろそろ目を付けられそうだ。
暗くなってからまた出直すか。
そう思ってその場から踵を返すと、少し離れた通りから見覚えのある顔がこっちを睨んでいる。
へぇ…こんなとこまで追いかけて来たの。
なら折角だし少し遊んでやろうか?
気付いていないふりをして、わざと人気のない場所に足を向ける。
後ろから付いてくる気配を感じながら、少し行くと行き止まりのはずの細い路地に足を踏み入れ…。
「こっち!」
押し殺された声。
いきなり横から手が引かれる。
暗がりに隠れるような小さな扉に引っぱり込まれる。
警戒して身構えたが、俺の手を掴む相手から敵意を感じない。
その人物は俺を扉の中に引き入れると素早くドアを閉めて、俺の腕を引いて奥へと進んでいく。
何、この状況。
おせっかいなやつ。
文句でも言ってやろうと口を開く。
けど言葉を発する前に、そいつがこっちを振り返って自分の口に人差し指を当てる。
静かにしろって?
ふざけるな。
お前の言うことに俺が従うとでも?
そう言いたかったのに。
別に気まぐれだ。
そいつに従ってやったのも。
かばねにそいつのことをわざわざ報告しなかったのも。




