四幕・五年前 ●▽月の◆日
アイツを見つけた。
血にまみれて息絶えたアイツを。
『あれぇ?』
その傍に佇むのは、血に濡れたナイフを持った俺とそう歳も変わらなさそうな子供。
そして赤と黒と橙の男達。
目の前が真っ赤になった。
俺は駆け出す。
愛用のナイフを取り出して。
黒の男が動き、俺に何かを投げつける。
咄嗟に顔を庇う。
パリン、と何かが割れ、どこか甘いような香りが鼻をつく。
身体に力が入りにくくなり、足が重くなる。
が、構わない。
速度を緩めず走る。
『…おや。』
黒の男が驚いたように目を見開いたのを視界の端にとらえつつ、こっちに向かってきた赤の男の拳を左腕で受ける。
バキッと鈍い音。
…馬鹿力。
受け方は悪くなかったはずなんだけど。
カウンターにナイフで首を狙ったけど避けられた。
まぁ、いい。
こいつは後回し。
まずアイツを殺した子供を殺す。
ナイフを避けて崩れた体制の脇をすり抜ける。
『あぁ!?』
驚きに声を上げる赤。
動かない橙。
そして慌てたように奥の方から走り出てきた白。
どれも間に合うわけがない。
俺より小柄な子供の体に、跳びかかるようにナイフを振りぬく。
その一瞬、そいつがにぃっと心底楽しそうに笑った。
視界が回転する。
直後走る激痛と思うように動かない体。
押さえられた?
俺が?
有り得ない。
いや、あってはいけない。
俺を押さえる子供を振り払おうと全身に力を入れる。
折れた腕に激痛が走り、体もギシギシと悲鳴を上げるが構わない。
この子供を、殺す。
『わ…わっ!暴れないでよー!!薬も効いてて腕も折れてるのにこれ以上無茶は危ないよ!?』
言葉では的外れにも俺の心配なんてしているが、拘束は緩まない。
『かばね!』
駆け寄ってきていた白が子供に向かって叫ぶ。
聞き覚えのある響き。
そう、だ。
この子供は昨日…。
なんて一瞬思考に入った俺に気付いたのか、かばねと名乗る子供が笑う気配がする。
『うん!昨日会ったよね?ごめんね?謝るよ。この人が君のエモノだったんだねぇ。』
ほとんど動かせない体を捻って視線を向けると、困ったようにへらっと顔を崩す。
そして、その濃赤の瞳で俺の碧眼を捉え、言う。
『ねぇ、仲直りをしよう?僕と友達になってよ。エモノ盗っちゃったお詫びに、もうエモノに困らないようにしてあげる!一緒に行こう?』
これが大罪に入った経緯だった。




