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食屍鬼と愉快な殺人日記  作者: 莉子
二話・十月のジャックの章
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二幕・十月の二日

うららかな午後の時間帯。


…って言っても地下だし、外の様子なんて感じ取れないけど。



ジャックが僕の部屋に来る。



いつものように仏頂面。


そっけない態度で



「……仕事。」



なんて言ってくる。


相変わらずマイペースだなぁ…。


この平和な場所で、普通はそう都合よく人殺しの依頼が転がってるわけない。


まぁ、あるんだけどね。


そこは《大罪》の名のなせる業。


こんなに大量の依頼から選り好みなんて、他のところじゃそうそうできないよ?



「国内が良い?」



僕が尋ねると、ジャックは



「何でもいい。」



と答える。



このあたりはお決まりの返事だ。


ジャックは依頼を選ばない。


どんな依頼でも出来るって思ってるし、実際ほとんど失敗しない。


それでも僕にこうして仕事を要求するのは、大体アレだ。






「…ペース、早くない?前から一週間経ってないんじゃないの?」



僕は画面に目を向けたまま言う。


どうせ聞きやしないことは分かっているから、まじめに言うつもりはない。


けど、こう早いと若干の不安を感じるのも仕方ないことだと思う。


僕はキングやかばね、ジャックとは違って全く一般の家庭で育ったから。





かばねは生きていくために人を殺す。


ラグやレオは仕事だから殺す。



そして、ジャックは殺したいから殺す。


殺さないと辛いから殺す。


ジャックは重度の殺人中毒だ。


そして歴代の切り裂きジャックジャック・ザ・リッパーも。


定期的に殺さないと禁断症状が出る。


そう育てられるらしい。



そろそろ、それが限界なのだろう。


そういう時、ジャックは時間のかかるかもしれない個人の依頼じゃなく、僕が厳選しお膳立てする大罪としての仕事を求めてくる。


余計なことを考えずに、ただ人を殺して症状を和らげるために。




ジャックは答えない。


これもいつものこと。



だから僕もいつものようにため息だけついて、ジャックに合っていて近場の依頼を見繕う。



「……はい、これ。気をつけて行きなよ、ジャック。」



そう言って体をずらし、パソコンに表示した依頼をジャックに見せる。


ジャックは



「…分かった。」



と、一言だけ言って部屋を出ていく。



全く…。


本当に手のかかるというか、癖の強いメンバーだことで。


出ていくジャックの背中を見送って、僕は苦笑した。







人を殺さないとまともに生きていけないという点は、ジャックとかばねはよく似ている。



それでもかばねとジャックは纏う雰囲気が違う。


ジャックのそれは完全に裏の人間のものだ。



僕は直接人を殺したことは無い。


間接的になら数え切れないほどあるけれど。


そんな僕でも、一応僕のせいで死んだであろう人の命を重く感じることはある。


殺した人達の悪夢を見ることもある。


間接的にでも、人を殺すということを躊躇いなくできるようになるには、それなりの覚悟が必要だった。



きっと僕も、見る人が見れば裏の人間だと分かる雰囲気を纏っているんだろう。


ジャックやレオ、ラグやキングみたいに、直接殺しているメンバーよりその気配が薄いだけで。




多分、かばねは人を食べ物として見ているからそういうのが無い。


ジャックも勿論、殺しのことを自分の中毒症状から逃れる手段としか見ていないかもしれない。


それでも、言葉や意思を交わせる自分と同じ種類の生き物を殺すことに思うところが無い人間はほとんどいないだろう。



人には物事を複雑に考えられる頭があるからだ。




その点かばねはほんと獣みたいだ。




これでもジャックはまだ僕らの中じゃ普通(・・)


かばねより人間らしいし、ラグより素直。


キングより勤勉だし、レオより賢しい。



…なんて、こんなこと言ったら、プライドの高いジャックは怒るだろうか。



そこまで考えて、僕はもう一度くすくすと笑う。





そして画面に向き直り、今日も今日とて情報収集や馬鹿どもの後始末に精を出すのだ。







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