九幕・九月の二十四日 そのさん
足音を殺して歩く。
ここはどこかの倉庫みたいだ。
通路の先に男の人が一人、扉の前に立っている。
見張りでもするように。
あそこかな…?
んー…どーしよっかなぁ…。
銃は発砲音で人集めそうだから心配だし、スタンガンは威力に欠ける。
首元に流さないと確実に気絶まで持ってけないからね。
その間に、万一仲間を呼ばれても困る。
少し考えて、僕は見張りの人の方に銃を低めにぶん投げる。
銃は見張りの少し手前で床に落ちて転がった。
「…ん?」
見張りの人はこっちの方を向く。
もちろん僕は隠れてるから見つからない。
見張りの人は首を傾げ、銃を拾おうと少しかがんで…。
僕は走る。
見張りがこちらに気付いて、ギョッと目を見開いて…。
かがんで狙いやすくなった首に思いっきり蹴りを入れる。
息を詰まらせたところに足を引っかけ転ばせて首元にスタンガンを当てる。
バチィッ!
と、音がして見張りの人はびくびくと痙攣しながら気絶した。
懐を探ると小さなナイフと銃、そして鍵が出てきた。
この扉の鍵かなー?
鍵穴に差し込んで回すとかちりと鍵が開く。
扉を開けると両手両足を縛られて猿轡をされた子供たちがいた。
入ってきた僕を見て体をこわばらせている。
……あれぇ?
僕、猿轡なんかされなかったけど…?
僕は首をかしげる。
後でするつもりだったのか、子供同士で話し合いをされないためか…。
まぁいいや。
どうせ猿轡されてても何とかできたし。
今は取り合えず…
「このなかで『黒橘の白龍』って聞き覚えある子はいるかなぁ?」
僕はそう言ってあたりを見回す。
ちなみにこれは黒田組の組長の通り名だ。
家紋が橘で、白スーツだか白髪交じりだか…ともかく白っぽいみたい。
黒と白で真逆だよねー。
だから一部では黒白で通ってるとかなんとか。
すると、僕の言葉に一人の男の子がむーむー呻いて暴れだした。
あぁ、猿轡してるから声出せないよねぇ。
僕はその子に歩み寄って、
「君が白龍さんの子供かな?」
と一応確認した。
子供はすごい勢いで頷く。
間違いないみたいだね。
男の子の縄をナイフで切って立ち上がらせる。
そして、男の子を連れて部屋を出ようとすると、周りの子供たちが一斉に騒いで暴れ出す。
もー…なんなのさぁ…。
一人の男の子が僕の足元ににじり寄って、僕を縋るみたいな目で見てくる。
僕はため息を一つ吐いて足元の子供に尋ねる。
「僕らも助けてって言いたいの?」
子供はブンブンと縦に首を振る。
「そんなこと言われてもなぁ…。僕が助けようと思ってたのはこの子だけだし、正直足手まといはこれ以上増えてほしくないんだ。」
僕がそう言うと子供は涙目になって、周りの子供たちも泣き出しそうだ。
えー…ここで騒がれても困るなぁ…。
仕方ないなぁもう…。
僕は携帯を取り出して、データカードを抜いて指紋を拭きとる。
その携帯を
「はい、これで警察にでも連絡したら?GPSは入ってるはずだし、運が良ければ売られる前に警察が来てくれるよ。」
そう言って子供の前に置く。
これで良いでしょ、と立ち去ろうとすると、また子供が呻く。
必死になって床に猿轡を…あ…。
「そっか、これだと喋れないよねぇー。」
僕は子供の猿轡を外してあげる。
もう大丈夫だよね、といい加減部屋を出ようとする。
「ま…待ってよ!」
と、声がする。
だーかーらー何なんだよぅもうっ!!
「手…解いてもらわないと電話できない…。」
後ろにしばられてるから、って?
そんなんどうにでもなるじゃんっ!
全く軟弱だなぁっ!
僕は子供の手も解いて、男の子を連れて部屋を出…
「まってっ!他の子のは解いてくれないのっ!?」
懲りずに呼び止めてくる子供に、僕は少しだけ振り返り
「君がやってあげれば?手、解いてあげたでしょ。まぁ、そんな事より先に連絡した方が良いとは思うけどね。」
そう言い放って、今度こそ部屋を後にした。




