六幕・九月の二十日 そのよん
「あれ?」
「あれ。」
僕が双眼鏡をのぞきながら指さして言うと、プラたんは頷いて答える。
ここは今僕が覗いているビルから少し離れたビルの屋上。
覗いているのはもちろん『ガルム』のアジト。
裏通りにあるとはいっても結構街の中だ。
銃声とかしたらすぐに通報されそうだね。
にしても、チョイスが暴力団とか寄りな気がするなぁ。
もともとはその辺からなのかな?
特に興味もないけど。
結構普通のビルで、レンズの向こうには窓際の椅子に座る人影が見える。
「……馬鹿?」
これじゃライフルがあれば狙える。
裏の組織にしては馬鹿としか言いようがない。
僕の呟きに、プラたんは頭を抱えて
「……かばね…やっぱり聞いてなかったね…。『ガルム』は新興の組織って言ったでしょ?対策なんて甘くて当たり前。
僕らのアジトが見つかったのは本当にただの偶然…ビギナーズラックってやつだよ。
そもそも僕らのアジトだってことすら分からず侵入したみたいだしね。
あと、ついでに言うと、この国じゃ普通狙撃の心配なんてほとんどしなくていいものだからね?」
…と、呆れたように説明する。
そうだっけ?
それにしても運が悪いねぇ…『ガルム』って組織の人達も。
ビギナーズラックって…全然幸運じゃないじゃん。
僕らのアジトだって分かってなくとも侵入された以上情報が漏れるかもしれないし、侵入者のお兄さんも殺しちゃったから、怪しまれる前に潰しちゃわないといけない。
……あ、そういう話だったわけか。
侵入者の話は大体ラグが聞いてたから、僕は全然覚えてないし、プラたんの話とかも無駄に長くて聞いてなかったなぁ。
んー…まあいいや。
どうせ僕がすることは変わらないしね。
「新興だろうが何だろーが、僕達のアジトに入ってきちゃったのが運の尽きってことで。ご愁傷さまだね。」
「はいはい、そうだね。かばね、インカムつけて。」
プラたんは僕の言葉を軽く流してインカムを渡してきた。
僕はインカムを装着して、調子を確認する。
このインカムはプラたんの特製だ。
小型のワイヤレスだから動きを阻害しないし、傍受されない対策もばっちり。
プラたんはパソコンを出してカタカタやっている。
お仕事体勢だ。
「『かばね、調子は?』」
目の前と、右耳のインカムからプラたんの声が聞こえる。
「おっけーだよ。」
僕は答えて指で丸を作る。
空をオレンジに染める夕日がどんどん沈んでいくのを見ながら僕は軽く体をほぐしたり、武器の確認をする。
そして、最後の確認としてプラたんに尋ねる。
「殺り方は?」
「『……素早く静かに全員逃さないように。』」
プラたんがそう答えるのと同じくらいに、夕日の最後の残光がビルの谷間に消えていった。




